先日、職場の後輩とふたりで話す時間がありました。
テーマは「働く姿勢」や「チームのあり方」。深い話になるとは分かっていた。それでも、話しながら何度も言葉に詰まりました。伝えたいことはある。でも、どう言えば届くのか。その場で必死に頭を回しながら、改めて気づかされたのです。人と向き合うことは、本当に難しい、と。
職場でチームを引っ張る立場にいたり、後輩の育成に携わっていたりすると、誰もが一度は高い壁にぶつかる瞬間があります。それは、「人と向き合うことに、明確な正解なんてない」という現実です。
ビジネス書を開けば、綺麗なノウハウがいくらでも流れてきます。しかし、実際の現場はそんなにシンプルではありません。自分の熱量だって変わるし、向き合う相手の熱量だって十人十色です。正解がないからこそ、私たちは日々グラグラと揺れながら、手探りで進んでいくしかありません。
自分の軸を保ちながら、相手のレイヤーに翻訳する大変さ
後輩と深い部分で向き合おうとするとき、一番エネルギーを使うのが「言葉選び」です。
大切なことほど抽象的な話になりがちで、それを相手に伝わるように凝縮しようとすると、本当に難しい。綺麗な言葉を借りてくれば場を取り繕うのは簡単かもしれません。でも、それでは自分の本当の熱量は届かない気がするのです。
対話のなかで、私はいつも必死に頭をフル回転させています。自分の「軸」をブレさせずに守りつつ、同時に「相手が今、物事をどの範囲で捉えているか(相手のレイヤー)」を気にする。自分の言葉をただ押し付けるのではなく、相手のレイヤーで伝わる言葉にその場で変換していく。けれど、綺麗に変換しすぎて自分の本質が薄まってしまっては意味がない。
「自分の軸を崩さず、相手のレイヤーに合わせて翻訳する」
この毎瞬のコントロールは、本当にものすごいエネルギーを消費する大変な作業です。
ぶっつけ本番の対話には限界がある
なぜ、そこまで言葉の変換が大変なのか。それは、人によって「言葉の受け取り方」が全く違うからです。
「もっと視野を広く持ってほしい」という意図で伝えた言葉が、相手には「今のやり方を否定された」と受け取られてしまうかもしれない。正解がない現場だからこそ、すれ違いはいつでも起こり得ます。
だからこそ、ぶっつけ本番の対話だけでレイヤーを合わせようとすることには限界があります。大切なのは、大事な話を始める「前」の段階。普段の何気ないコミュニケーションの積み重ねこそが、いざという時の対話を支える土台になるのです。
スモールトークを積み重ね、それぞれの相手と「世界」を作る
人と人が本当に響き合うために必要なこと。それは、普段からの雑談を通じて、少しずつ「お互いの共通言語」を増やしておく過程です。
他愛のない会話のなかで、「この人はこういう言葉をこういうニュアンスで使うんだな」という感覚を小まめにチューニングしておく。この事前の擦り合わせがあるからこそ、いざ深い話をするときに、相手のレイヤーにピタッとハマる言葉が選べるようになります。
そして、この共通言語を増やすアプローチは、全員に対して一律に同じやり方ではできません。「AさんにはAさんの共通言語」「BさんにはBさんの共通言語」——それぞれの相手ごとに、その人だけの世界をオーダーメイドで作っていくしかないのです。
相手ごとに世界を作る。気が遠くなるほど大変で、泥臭い作業かもしれません。でも、正解のない職場で誰かと一緒に進んでいこうとするとき、これほど誠実で確実な方法はないのではないか。後輩の真っ直ぐな視線と向き合いながら、そんな風に自分の「軸」を改めて感じ直した一日でした。
私がコンテンツの中で考え続けている「思考OS・行動OS・豊かさOS」も、突き詰めればこの「どう軸を持ち、相手に届けるか」という問いと繋がっています。気になる方はページをのぞいてみてください。
あなたの周りには、今、どんなレイヤーを持った人がいますか?その人と新しく、どんな「世界」を作っていきたいですか?