最近、XなどのSNSで「AIだけでこんなにすごいWebサイトが作れた」という投稿を目にする機会が増えました。
実際、現在のAIを使えば、専門的なコードを書かなくても、短時間でかなり見栄えの良いホームページを作ることができます。
私自身もWeb制作の現場でAIを日常的に活用しており、「ここまで簡単に作れるのか」と驚くことも少なくありません。
一方で、実際にAIを使いながらWebサイトを制作していると、見た目だけでは分かりにくい課題も感じます。
例えば、デザインの統一感、ユーザーの動線、テキストの読みやすさなどです。
そして何より難しいのが、AIが作ったデザインを「本当に良いものなのか」と正しく判断すること。
今回は、実際のWeb制作でAIを使用して感じたメリットと限界を、具体例も交えながら紹介します。
「AIを使えばホームページを自作できるのか?」
「制作会社に依頼する必要はもうないのか?」
と考えている方の参考になれば幸いです。
AIでも「それっぽいデザイン」は普通に作れる
先にお伝えしておくと、現在のAIでも、パッと見て「良い感じ」と思えるWebデザインは普通に作れます。
下の画像は、実際のWeb制作案件でファーストビューの方向性を検討する際に、AIを使って生成した4つのデザイン案です。
このときAIに伝えたのは、
「アーティスティックな鍼灸院のWebサイトのファーストビューを4パターン作成してほしい」
という、かなりざっくりとした内容でした。
それでも、配色や写真の見せ方、文字の配置まで含めて、それぞれ雰囲気の異なる、見栄えの良いデザインを短時間で提案してくれます。
こうした部分は、現在のAIが非常に得意としているところだと感じています。
また、AIの活用はWeb制作者側にとっても大きなメリットがあります。
デザインのアイデア出しや構成案の作成、テキストの整理など、これまで時間がかかっていた作業の一部を効率化できるため、その分、制作にかかる時間やコストを抑えることができます。
そのため、AIをうまく活用しているWeb制作者であれば、以前より比較的リーズナブルな価格でも、一定以上のクオリティのWebサイトを提供しやすくなっていると思います。
さらに、AIはクライアントと制作者の認識を合わせるためのツールとしても非常に有用です。
例えば、
「高級感のあるサイトにしたい」
「もう少し柔らかい雰囲気にしたい」
「アーティスティックだけど、落ち着いた印象にしたい」
といった言葉だけでは、人によってイメージするデザインが大きく異なります。
そこで、クライアント側がAIを使って「こんな雰囲気が好き」という参考イメージを生成し、それを制作者に共有する。
そうすることで、言葉だけで希望を伝えるよりも、完成イメージの認識を合わせやすくなり、「思っていたデザインと違った」というズレを減らすことができます。
このように、AIはWeb制作そのものを効率化するだけでなく、制作者とクライアントのコミュニケーションを円滑にするという意味でも、非常に有意義なツールだと感じています。
「それっぽいデザイン」と「良いWebサイト」は別物
ここまでお伝えしたように、AIでも「それっぽいWebデザイン」は十分に制作できます。
そこで今回は、実在しない架空の鍼灸院「大鳳堂」を設定し、以下のような条件をAIに伝えて、5ページ分のWebサイトをデザインしてもらいました。
【ページ構成】
・トップ
・料金
・大鳳堂について
・アクセス
・お問い合わせ
【指示した条件】
・使用するカラーパレットを指定
・参考サイトを提示
・各ページでデザイン、余白、タイポグラフィなどのトーンを統一
・ヘッダー、フッターを全ページ共通にする
さらに、各ページに必要なコンテンツや、ボタン・見出し・余白などのデザインルールを統一するよう、比較的細かく指示しています。
実際にAIが生成したのが、以下のデザインです。
パッと見た印象では、指定したベージュとグリーンを中心に配色がまとめられており、写真の雰囲気も近く、5ページを並べてもそれなりに統一感のあるWebサイトに見えるのではないでしょうか。
私自身、短時間でここまで生成できること自体はかなりすごいと思います。
しかし、各ページをもう少し細かく見ていくと、デザイン上の不統一がいくつも見つかります。
例えば、
・指定した各ページのコンテンツが十分に反映されていない
・「大鳳堂について」のファーストビューだけ、画像下部に波形の装飾が使われている
・トップページと料金ページではお問い合わせCTAに背景色を付けて強調しているのに、アクセスページでは背景色がなく、「大鳳堂について」にはCTAセクション自体がない
・トップページの「大鳳堂の特徴」にあるカードは写真部分まで角丸になっている一方、他の写真では同じ処理が使われていない
・料金ページのファーストビューだけ、他の下層ページと異なりページタイトルの配置ルールが揃っていない
・H2見出しの下にラインがあるページと、ないページが存在する
・「大鳳堂について」のページだけ、複数の画像を組み合わせた独自の装飾が使われている
などがあります。
これらは、どれも一つひとつを見ると非常に小さな違いです。
そのため、一つのページだけを見ていると、それほど気にならないかもしれません。
しかし、Webサイト全体を通して見ると、
「なぜこのページだけこの装飾なのか」
「なぜ同じ役割のセクションなのに見せ方が違うのか」
というデザインルールの揺れが見えてきます。
今回生成したサイトは、1ページあたりのコンテンツ量もそれほど多くありません。
それでも、ざっと確認しただけでこれだけの不統一が見つかりました。
実際の企業サイトやサービスサイトでは、これよりも文章量が多くなり、料金表、実績、FAQ、スタッフ紹介、ブログ、フォームなど、さまざまなコンテンツが追加されることも珍しくありません。
扱う要素が増えれば、それだけAIが管理しなければならないデザインルールも増えます。
その結果、ページ数やコンテンツ量が増えるほど、サイト全体としての統一感を維持する難易度も高くなると感じています。
つまり、AIが「一つのきれいなページを作れる」ことと、「複数ページにわたって一貫したWebサイトを設計できる」ことは、少し別の話です。
AIで一番難しいのは「作ること」ではなく「評価すること」
先ほどの例で見たように、現在のAIは、短時間でもそれなりに見栄えの良いWebデザインを作ることができます。
しかし、実際にWebサイトとして公開することを考えると、デザインの不統一や細かな違和感など、まだ改善が必要な部分も少なくありません。
こうした部分をそのままにして公開すると、サイトを訪れた人が明確に原因を説明できなくても、
「なんとなく作りが粗い」
「なんとなく信頼しにくい」
と感じる可能性があります。
そのため、AIを使ってWebサイトを制作するときには、AIが生成したデザインを見て、
「何が良くて、何を直すべきなのか」
を正しく評価する力が必要になります。
そして、ここがAIを使ったWeb制作で意外と時間のかかる部分です。
例えば、
「この見出しだけデザインが違う」
「このカードだけ角丸のルールが違う」
「このページだけCTAの見せ方が違う」
といった不統一に気付いたとしても、それを一つひとつAIに伝えて修正していけば、それなりの時間がかかります。
私自身、実際のWeb制作でAIを活用していますが、一つの案件の中でAIとのやり取りが数百回規模になることもあります。
しかも、修正を繰り返せば必ず完成に近づいていくとは限りません。
ある箇所を直したことで別の部分のデザインが変わったり、修正を重ねるうちに、最初に良いと感じていたデザインの方向性から少しずつ外れてしまったりすることもあります。
そのたびに、
「この修正は採用するのか」
「前のデザインに戻すのか」
「別の方法で直すのか」
を人間側で判断する必要があります。
さらに難しいのは、問題がデザインだけとは限らないことです。
例えば、
問い合わせボタンが目立たない
ユーザーが次に何を見ればいいのか分からない
サービスの魅力より先に細かな説明が続いてしまう
料金を確認したユーザーがそのまま問い合わせへ進めない
スマートフォンでは重要な情報までスクロールしなければならない
といった、ユーザー導線や情報設計の問題が残っている可能性もあります。
この場合、見た目だけを見て、
「きれいなサイトができた」
と判断してしまうと、そもそも改善すべき問題に気付くことができません。
パッと見では悪くないWebサイトでも、ユーザーが知りたい情報にたどり着けなかったり、問い合わせまでの導線が分かりにくかったりすれば、事業の成果にはつながりにくくなります。
つまり、AIでWebサイトを作るうえで本当に難しいのは、デザインを生成することそのものではありません。
AIが作ったものを正しく評価し、問題を見つけ、修正し、サイト全体を目的に合わせて整えていくことです。
AIが進化するほど、「作る技術」よりも「良し悪しを判断する力」の重要性は、むしろ高くなっていると感じています。
AIで自作すれば、本当に安くホームページを作れる?
AIを使えば、Web制作者に依頼せずにホームページを自作できるため、
「制作費を節約できる」
と考える方もいるかもしれません。
もちろん、自分で制作すれば、外部に支払う制作費そのものは抑えられます。
しかし、ここまで見てきたように、AIでパッと見のきれいなデザインを作るだけで、Webサイトが完成するわけではありません。
生成されたデザインを確認し、
・デザインに不統一がないか
・テキストは読みやすいか
・必要な情報が不足していないか
・ユーザーが迷わず情報を探せるか
・問い合わせまでの導線が適切か
・スマートフォンでも問題なく閲覧できるか
といった部分を確認しながら、何度も修正する必要があります。
当然、その作業には時間がかかります。
例えば、本来10万円で依頼できるホームページを、AIを使って自分で制作したとします。
制作費10万円を節約できたとしても、構成を考え、AIとやり取りし、デザインを修正し、文章を整え、公開まで行うのに60時間かかったとすれば、
10万円 ÷ 60時間 = 約1,700円/時間
です。
つまり、60時間を使って10万円を節約したと考えれば、自分の時間を1時間あたり約1,700円で使ったことになります。
個人事業主や経営者であれば、その60時間を本業に使った場合はどうでしょうか。
・営業活動をする。
・既存のお客様へのサービスを充実させる。
・新しい商品やサービスを考える。
・SNSや広告など、集客に時間を使う。
こうした活動によって、10万円以上の売上につながる可能性もあります。
そう考えると、ホームページ制作で重要なのは、
「いくら支払わずに済んだか」だけではなく、「自分の時間をどこに使うのが最も効率的か」
という視点ではないでしょうか。
AIを使って自分でホームページを作ること自体が悪いわけではありません。
時間に余裕があり、Web制作そのものを学びたい方や、まずは最低限のサイトを作って試してみたい方にとっては、非常に有効な選択肢です。
一方で、本業があり、ホームページ制作に何十時間も使うより事業そのものに集中した方が売上につながるのであれば、AIを活用して効率的に制作できるWeb制作者に任せる方が、結果的にコストパフォーマンスが高くなることもあります。
AI時代だからこそ「AIを使えるWeb制作者」という選択肢
Web制作者側も、AIを活用することでこれまで時間のかかっていた作業を大きく効率化できます。
例えば、
デザインのアイデアを複数案出してもらう
ページ構成のたたき台を作る
テキストを整理する
これまで0から書いていたコードをAIに生成してもらい、人間がレビュー・修正する
エラーの原因を探したり、修正案を考えてもらう
といった使い方ができます。
私自身もWeb制作でAIを活用していますが、作業内容によっては、以前と比べて体感で6割程度の時間で終えられることもあります。
もちろん、AIを使えばすべての作業時間が単純に短くなるわけではありません。
先ほど紹介したように、AIが生成したものを確認し、問題点を見つけて修正する工程は必要です。
それでも、アイデア出しやコーディングなど、AIが得意な作業を任せることで、人間はより重要な部分に時間を使えるようになります。
例えば、
「誰に何を伝えるのか」
「どの順番ならサービスの魅力が伝わるのか」
「どうすれば問い合わせにつながりやすいのか」
「サイト全体のデザインをどう統一するのか」
といった部分です。
そして、制作時間を短縮できれば、その効率化をクライアントへ還元することもできます。
効率化して生まれた時間を使って、これまで以上に細部を作り込む。
あるいは、作業負担が減った分を制作料金に反映し、以前よりリーズナブルな価格でサービスを提供する。
今後は、こうした制作者も増えていくのではないかと思います。
そう考えると、
「AIを使って自分でホームページを作るか、従来通りWeb制作者に依頼するか」
という二択で考える必要はありません。
「AIを使いこなしながら、人間が設計・判断してくれるWeb制作者に依頼する」
という選択肢もあります。
自分でAIと何十時間もやり取りしながらホームページを完成させるより、AIを活用して効率的に制作できる制作者に任せる。
そうすることで、比較的コストを抑えながら一定以上の品質を確保し、自分自身は本業に集中することもできます。
AI時代に大切なのは、「AIを使うか、使わないか」ではなく、
AIをどこに使い、最終的に誰が判断するのか
なのかもしれません。