【最終回】 1000万人に1人の孤独と、2人の理解者

【最終回】 1000万人に1人の孤独と、2人の理解者

記事
コラム
コンビニまで車で10分以上かかる、北国の田舎町。 それが私の住んでいる場所です。

冬になれば雪に閉ざされるこの場所で、私は時々、自分が「異星人」になったような気分になります。 職場の人や地元の友人とは、当たり障りのない会話をします。 「最近のガチャガチャ、何が出た?」「あのゲームのイベント進んだ?」 それはそれで楽しいし、平和な日常です。

でも、私が本当に話したいこと――これまでこの連載で書いてきたような「はしごを降りる話」や「感情を手放す話」――を口にすると、場の空気が一瞬で凍りつきます。 「何言ってるの?」「頭の中がお花畑なんじゃない?」

呆れられるか、変人扱いされて観察対象にされるか。 ここには、私の言葉がそのままの温度で通じる相手はいません。 物理的な距離以上に、心の距離が遠い。 周りはみんな地球人なのに、私だけ言葉の通じない星から来たみたいだ、と思う夜が何度もありました。

「ポテトの揚げたて」を当てる予知能力
言葉が通じない世界で、私が密かに楽しんでいる遊びがあります。 それは「自分の直感」を信じる実験です。

私は別に霊能者ではないけれど、時々「あ、なんか気になる」という不思議な感覚が降りてくることがあります。 例えば、マクドナルドの前を通った時にふと、「今行けば、ポテトが揚げたてな気がする」とピンとくる。 理由なんてありません。ただの勘です。 でも、その「勘」に従って店に入ると、本当に揚げたてが出てきたりする。

あるいは、友人が好きなアイドルの写真集を買おうか迷っていた時のこと。 特典のブロマイドがランダムで入っているのですが、「この本だ!」と目が離せなくなる一冊がありました。 「これにしなよ」と私が選んだその一冊から、何十人もいるメンバーの中でドンピシャの「推し」が出てきたりする。

ローレンスさんはこれを「シンクロニシティ(意味のある偶然)」だと言いました。 「科学的じゃないかもしれないけど、自分を信じる力が現実を引き寄せているんだよ」と。

世の中は「エビデンスを出せ」「ロボットじゃない証明をしろ」と迫ってきます。 でも、この言葉にできない「なんか気になる」という感覚こそが、私が私であるための羅針盤なのかもしれません。

ネットの海の向こうにいる「理解者」
ローレンスさんは、私の話を聞いてこう言いました。 「まるさんみたいな境地にいる人は、確率論で言えば1000万人に1人くらいかもしれないね。だから、人口の少ない田舎で出会うのは難しいよ」

1000万人に1人。 それは途方もない孤独な数字に聞こえます。 でも、彼はこう続けました。 「だからこそ、ネットがあるんじゃない? 物理的な距離なんて関係なく、魂のレベルで会話ができる人が、世界に1人か2人いれば、それはもう孤独じゃないんだよ」

その言葉に、私は救われました。 確かにそうです。 私は今、こうして電話越しに、何百キロも離れた場所にいるローレンスさんと、深い部分で通じ合っている。 別の時には、ネットで知り合った人と6時間も話し込んで、「そうだよね、分かるよ」と笑い合えたこともある。

私の周り半径数キロメートルに理解者がいなくても、電波の向こう側には、私と同じ周波数で生きている人が確かに存在する。 世界中にたった2人でも「仲間」がいれば、私はこの地球で生きていける気がしました。

「あえて」執着して、狼煙(のろし)を上げる
私は一度、生きる執着を手放しすぎて、手術中に「もう死んでもいいや」と思ってしまった人間です。 そんな私に、ローレンスさんは言いました。

「悟りきってしまうのはもったいないよ。人間なんだから、『あえて』執着してみたら? 『あえて』やってみるんだよ」

全てが「どうでもいい(いい意味で)」と分かってしまった上で、それでも「あえて」何かをやってみる。 私にとって、この文章を書くことは、その「あえての執着」なのかもしれません。

私は、表現者になりたいわけでも、有名になりたいわけでもありません。 ただ、この広い世界に散らばっているかもしれない、私と同じような「異星人」に向けて、狼煙(のろし)を上げてみたいのです。

「私はここにいます」 「あなたと同じように、はしごを降りて、平らな地面で空を見上げている人間が、ここにもいます」

そう伝えるために、私は書くことを選びました。

1000万人に理解されなくてもいい。 クラス全員に「変な人」と言われても構わない。 この長い独り言のような文章を読んで、「あ、分かる」と思ってくれるたった一人のあなた。 画面の向こうにいる、まだ見ぬあなたに向けて。

私は今日も、雪深いこの場所から、静かに言葉を紡いで生きていきます。

(おわり)
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