私がお客様にこの言葉をお伝えするとき、たいていの方は少し困ったような顔をされます。
占い師というのは、背中を押してくれる存在だと思っていたと。
「やればできます」「道は開けます」「あなたならきっと乗り越えられます」
そういう言葉を期待して、足を運んでくださった方も多いことでしょう。
ですから私のこの言葉は、ときに拍子抜けに聞こえるかもしれません。
でも私にはどうしても言えないのです。
根拠のない励ましを。
私が占いを始めて最初の数年間は、私もそうでした。
お客様が望んでいる言葉を察して、それに近い言葉を見つけようとしていました。
「吉」と出たときは大げさに喜び、「凶」と出たときは「でも、あなたの努力次第で変わります」と付け加えていました。
それがサービスだと思っていたのです。
転機は一人の女性との出会いでした。
彼女は当時勤めていた会社での人間関係に深く疲れており、転職すべきかどうかを占いに来られました。
カードを引くと、疲弊と停滞を示す配列でした。
でも彼女の目には、今の会社に残れという答えを求めているようでした。
私はその光に引っ張られるように、「もう少し頑張ってみましょう。春には変化の兆しがあります」と言ってしまいました。
彼女は半年後、また来られました。
今度は顔色が土気色で、声に張りがありませんでした。
「先生のおっしゃる通り、春まで頑張ったんです。でも、もうちょっとだけ、夏まで待てば変わりますか」と。
私はそのとき、自分が何をしてしまったのかを悟りました。
彼女は私の言葉を、限界を超えて踏みとどまる理由にしてしまっていたのです。
占いとは何でしょうか。
それは、目に見えない流れをほんの少し感じ取ることのできる窓のようなものだと、私は思っています。
川の流れがある方向へ向かっているとき、それに逆らって泳ぐことは可能かもしれませんが、消耗します。
流れに乗れるならば乗るに越したことはない。
占いが示すのはその流れの方向であることが多いのです。
でも世の中には、流れに逆らってでも進まなければならないときがあるという考えを強く持っている方がいます。
もちろん、それは間違いではありません。
意志の力で状況を変えた人は確かに存在します。
しかしその語りの陰に、ひっそりと消えていった無数の人たちのことを、私たちは見落としがちです。
がんばった末に心を壊した人。
続けた末に体を壊した人。
限界まで踏ん張った末に大切なものを失った人。
占い師のところへ来る方の多くは、すでにかなり疲れています。
やめてもいいのに、やめる勇気が出ない。
逃げてもいいのに、逃げることへの罪悪感がある。
そういう状態のときに、もう少し頑張れという言葉は、背中を押すのではなく、崖の縁に立つ人を一歩前へ踏み出させてしまうことがあるのです。
無理はしないでください
この言葉を言うとき私はいつも少し緊張します。
なぜなら、これは占いの結果としての言葉ではなく、一人の人として、目の前にいる方に対して感じた言葉だからです。
占いは未来を確定するものではありません。
ましてや、頑張る根拠を与えるためのものでもない。
もし私のカードが障害あり、前進困難と示しているとき、それをそのままお伝えすることが、私の誠実さだと今は思っています。
流れは今、あなたに向いていません。
少し立ち止まることを、星も勧めていますと。
それは諦めを勧めているのではありません。
立ち止まることを許す言葉です。
人は不思議なもので、頑張れと言われると、まだ頑張れていない自分を責めてしまいます。
でも無理しなくていいと言われると、はじめて、
ああ、私は無理をしていたのかと気づくことができる。
言葉を聞いた途端に、肩がすとんと落ちる瞬間。
ずっと止めていた息を、やっと吐き出すような瞬間。
涙が出る方もいます。
怒る方もいます。
でも、やめたら周りに迷惑がかかると言う方も多い。
そのたびに私は思います。
あなたが壊れたら、周りへの迷惑はもっと大きくなるかもしれないと。
占い師という仕事は、よく希望を与える仕事と言われます。
私もそう思います。
でも希望というのは、いつも前へ進めの形をしているわけではないのです。
立ち止まってもいいという言葉の中にも、希望はあります。
逃げていいという言葉の中にも、希望はあります。
今の道を手放してもいいという言葉の中にも、確かに、未来への扉は存在します。
むしろ私が経験上感じるのは、本当に大きな転換や回復は、無理をやめた後から始まることが多いということです。
力を抜いた途端に、思わぬところから風が吹いてくる。
しがみついていた手を離した瞬間に、別の手が伸びてくる。
そういうことがこの仕事を続けていると、驚くほどよく起きるのです。
もちろん、すべての状況で休めと言うわけではありません。
ここが踏ん張りどころだという局面も確かにあります。
少しの努力で流れが変わる時期もあります。
そういうときには、私も今が動くときですとお伝えします。
でも、そういうときとそうでないときの区別を、私は大切にしたいんです。とにかく頑張れで塗りつぶしてしまうのではなく、今は休めと言うべきときには、はっきりそう言える占い師でいたい。
先ほどの女性のその後を、少しだけ書かせてください。
二度目の来訪のとき、私は正直に言いました。
今のあなたには、続けるエネルギーが残っていません。体が先に限界を言い始めています。仕事を続けることよりも、今のあなたを守ることの方が、星はずっと大切だと言っていますと。
それから一ヶ月後、彼女は仕事を辞めました。
三ヶ月後にまた来てくれたとき、顔色がまるで違っていました。
やっと眠れるようになりましたと、彼女は言いました。
先生に無理しないでって言ってもらえてよかったです。
自分では、もう自分を止められなくなっていたから。
その言葉が、私は忘れられません。
占いは答えを与えるものではないと私は思っています。
あなたがすでに心のどこかで感じていることに、言葉を与えるものです。
疲れたと思っているあなたに、その疲れは本物だよと伝えるものです。
もう限界かもしれないと感じているあなたに、そう感じているあなたは、正しいよと伝えるものです。
だから私は今日も、カードを並べながら、そっと目の前の方を見ます。
そしてもし、その方が崖の縁に立っているように見えたなら、私はためらわずにこう言います。
「無理はしないでください」
その言葉が、呪縛を解く鍵になることを、私は信じているから。
最後までに読んでいただいてありがとうございます。
よろしければ、皆さんの悩みに私も寄り添わせてください。
お悩みの際は、サービスのページからお進みください。