鳥の勝井

鳥の勝井

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コラム
私のキャリアスタートはアニメーターですが、11ヶ月しか稼働しなかったので、現職の方が30年と、はるかに長いキャリアとなっています。練習嫌いな私は「絵」を物量的に大量に描くにはアニメーターかな?という理由だけで選んだ職業でしたので、事情があったとはいえ、当たり前ですがもうアニメーターに戻ることはないです。
アニメーターからキャリアチェンジしている方といえば漫画家では秋本治さん、塀内夏子さんなど、イラストレーターへはいのまたむつみさん、高田明美さん、天野喜孝さんなどがいらっしゃいます。「デザイナー」から漫画家も結構います。吉田秋生さん、鳥山明さんなど。企業勤めから漫画家は小川彌生さん(読売新聞社)、弘兼憲史さん(松下電器産業)など。
ですがこれらポジションから「デザイナー系」に転身した方は知っている限りは皆無で、作家と「商業デザイン」の相性の悪さをこういうところで感じたりします。オリジナルで勝負できる方はオリジナルを作るようになるよなと。何を以て「オリジナル」か、全てのものは地続きなので 何ともいえませんが。
なのでアニメーターからキャリアチェンジでデザイナーという職業を30年、今はそこそこ大手の職場に在籍して続けている私は相当な変わり種かなと思うのですが、知っている限りでは一人だけ、同じキャリアに進もうとされた方がいらっしゃいます。
勝井千賀雄さん、テレビアニメーションの黎明期に活躍された方で東映動画→虫プロに在籍、テレビ「ジャングル大帝」のオープニングアニメーションを担当されてフラミンゴが飛び立つシーンの作画が素晴らしく「鳥の勝井」という異名をお持ちでした。そのあたりの話については「虫プロ興亡記: 安仁明太の青春」(山本 暎一著)に詳しく書かれておりますが、今も当時もブラック業界と呼ばれる「アニメーター」、だんだん食べてゆくのが難しくなり、作画監督クラスであった勝井さんも一時思い悩み、40代くらいで一度チラシを作る制作会社に転職しています。その後は再びアニメーターに戻り50代くらいで亡くなっていると記憶しています。私自身のキャリアスタート時にはもうこの世にいなかった方なので、お会いする機会はありませんでしたが、自分の中では常に勝井さんのことが頭にあります。
作画監督までになった圧倒的画力を持ちながら途中のキャリアに悩み商業系制作会社に転職してもやはり「種目が違う」ことで元のキャリアに戻ってしまった。その心情はものすごく理解できます。アニメーターは圧倒的実力世界ですが、商業デザインは営業力のファクターが大きいので。
ホワイトカラーとオペレーターを減らす動きがある昨今、どんな形であれ、「その分野で秀でている」ことは選択される土俵に乗ります。そういう点では勝井さんの選択は回り道だったかもですが良い選択だったのではと思いますし、羨ましい人生であったとも思います。
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