「また失敗してしまった……」
「自分には向いていないのかもしれない」
「どうせ頑張っても、うまくいかない」
こんなふうに考えてしまうことはありませんか?
一度悪い方向に考え始めると、頭の中で同じことを何度も繰り返してしまう。
気分を切り替えようとしても、なかなかうまくいかない。
そんな経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。
これまでのシリーズでは、人が悩む仕組みや、過去の経験、考え方のクセ、自分の気持ちに気づくことについてお伝えしてきました。
今回は、その続きとして、自分を苦しめる考え方から抜け出すためのヒントを一緒に考えていきたいと思います。
1.考え方を変えようとするほど、苦しくなることがある
例えば、仕事でミスをしてしまったとします。
そのとき、「自分は本当にダメな人間だ」と考えてしまう
すると、気持ちが落ち込み、自信をなくしてしまうかもしれません。
そこで、無理に前向きになろうとして、
「失敗なんて気にしない!」
「次は絶対に成功する!」
と自分に言い聞かせたとします。
でも、本当はまだ落ち込んでいるのに、無理やり気持ちを切り替えようとすると、かえって苦しくなることもあります。
大切なのは、無理にポジティブになることではありません。
まずは、「自分は今、失敗したことで落ち込んでいるんだな」
と、自分の気持ちを認めてあげることです。
落ち込むこと自体は、悪いことではありません。
一生懸命取り組んだからこそ、悔しいのかもしれません。
失敗を繰り返したくないからこそ、不安になっているのかもしれません。
自分の気持ちを否定せずに受け止めることから、少しずつ始めてみましょう。
2.一つの考え方だけが、正解とは限らない
では、先ほどの例をもう少し考えてみます。
仕事でミスをしたとき、
「自分はダメな人間だ」
と考えたとします。
この考え方しかできないと、失敗した事実が、自分の価値そのものを否定することにつながってしまいます。
しかし、少し視点を変えてみると、別の考え方もできます。
「今回はミスをしてしまった」
「確認が足りなかった部分があるのかもしれない」
「次に同じことが起きないよう、対策を考えてみよう」
このように考えると、失敗を自分への否定ではなく、改善するための情報として捉えられるかもしれません。
ここで大切なのは、どちらが明るい考え方なのかということではありません。
一つの出来事に対して、ほかの見方や受け止め方もあると知ること。
考え方の選択肢が増えると、今までとは違う行動を選べる可能性も広がります。
3.自分を苦しめる考え方を見直す3つのステップ
ここからは、日常生活で試せる方法を紹介します。
ステップ①:自分の考えに気づく
何かに悩んだとき、まずは自分が何を考えているのかに目を向けてみます。
例えば、「上司に注意された。自分は仕事ができない人間だ」
という考えが浮かんだとします。
このとき、すぐに考えを変えようとする必要はありません。
まずは、
「自分は今、注意されたことで、自分の能力まで否定しているんだな」
と気づくことから始めます。
ステップ②:事実と解釈を分けてみる
次に、実際に起きたことと、自分がそこから考えたことを分けてみます。
事実:上司から仕事の進め方について注意された。
解釈:自分は仕事ができないと思われている。
感情:不安、悔しさ、悲しさ。
事実と解釈を分けることで、自分が何に苦しんでいるのかを整理しやすくなります。
もちろん、上司の言動に問題がある可能性もあります。自分の受け取り方だけに原因を求めず、実際の状況も確認することが大切です。
ステップ③:ほかの可能性を考えてみる
最後に、別の見方ができないか考えてみます。
「自分は仕事ができない人間だ」
という考えに対し、
「今回は改善が必要な部分があったのかもしれない」
「注意された内容を理解すれば、次に活かせるかもしれない」
と考える。
無理に前向きな答えを出す必要はなく
「まだわからない」
という答えでも大丈夫。
大切なのは、最初に浮かんだ考えだけで結論を出さず、少しだけ視野を広げてみることです。
4.すぐに変われなくても大丈夫
ここまで読んで、
「自分の考え方を変えたい」
「もっと気持ちを楽にしたい」
と思った方もいるかもしれません。
でも、長年身につけてきた考え方は、すぐに変わるものではありません。
不安になりやすい人が、明日から不安を感じなくなるわけではありません。
失敗を恐れてきた人が、すぐに何でも挑戦できるようになるわけでもありません。
それは、あなたの努力が足りないからではありません。
考え方や行動のパターンは、これまでの経験や環境など、さまざまなものと関係しているからです。
だからこそ、焦らずに少しずつ取り組むことが大切です。
昨日と同じように悩んでしまっても、
「自分はまたダメだった」
と責めるのではなく、
「自分はこういう場面で、いつも不安になりやすいんだな」
と気づけたら、それも一歩です。
自分を変えることだけを目標にするのではなく、自分を理解することも大切にしてみてください。
5.考え方の選択肢が増えると、行動も変わる
例えば、人間関係で悩んでいるとします。
相手の態度が気になって、
「嫌われているに違いない」
と思い、話しかけることを避けていたとします。
しかし、
「本当に嫌われているかどうかは、まだわからない」
と考えられるようになると、少しだけ行動の選択肢が増えるかもしれません。
挨拶をしてみる。
必要なことを話してみる。
相手の反応を見ながら、少しずつ関わってみる。
もちろん、相手との関係や状況によっては、距離を取ることが必要な場合もあります。
大切なのは、必ず行動を変えることではありません。
自分の考え方に気づき、自分で選べる可能性を増やしていくことです。
今まで無意識に選んでいた行動とは違う選択肢が見つかれば、自分に合った方法を考えやすくなります。
最後に:自分を変える前に、自分を理解する
私たちは悩んでいるとき、
「こんな自分を変えなければいけない」
と思ってしまうことがあります。
でも、本当に必要なのは、自分を否定することなのでしょうか?
不安になりやすい自分。
失敗を恐れる自分。
人の言葉を気にしてしまう自分。
そこには、これまでの経験や、自分なりに大切にしてきたものが関係しているのかもしれません。
だからこそ、まずは自分の考え方や気持ちを理解することから始めてみませんか?
考え方を無理に変える必要はありません。
最初に浮かんだ考えを否定する必要もありません。
ただ、
「ほかの見方もあるかもしれない」
と、少しだけ可能性を残してみる。
その小さな積み重ねが、自分の気持ちや行動を見つめ直すきっかけになるかもしれません。
私自身も、自分の心と向き合う経験や、心理学・カウンセリングの学びを通して、自分を理解することの大切さを感じています。
これからも、悩みを抱える方が自分の気持ちに気づき、自分なりの答えを見つけていくためのお手伝いができればと思っています。
あなたは今、一つの考え方にとらわれて、苦しくなっていませんか?
もしそう感じたら、少しだけ立ち止まって、別の見方ができないか考えてみてください。
すぐに答えが見つからなくても大丈夫です。
自分を理解することから、一緒に始めていきましょう。
次回は「自分を理解するために、誰かに話すということ」をテーマに、話すことや人に聴いてもらうことが、自己理解にどのようにつながるのかを考えていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございます。