なぜFedWatchで「長期目線」がはっきりするのか
トレードの環境認識でいちばん大事なのは「この先1年くらい、金利は上がり続けそうなのか、下がり続けそうなのか」という大きな流れです。
CMEのFedWatchツールは、Fedファンド先物の価格から「市場がFOMCでどれくらい利上げ・利下げを織り込んでいるか」を確率で見せてくれる無料ツールです。
これを「次回会合だけを見る道具」で終わらせず、「今後1〜2年の利上げ・利下げ回数をざっくり数える道具」にすると、ドル、株、ゴールド、円などの長期目線がかなりクリアになります。
以下では
1. FedWatchとは何か
2. 画面のどこを見ればいいか
3. 長期目線を作るための具体的ステップ
4. 実際の読み解きイメージ
5. 使う時の注意点
の流れで整理します。
1. FedWatchとは何かをざっくり理解する
ポイントだけ押さえます。
・FedWatchは「FOMCでどの金利水準になるかの確率」を表示するツール
・データの元は「30日物Fedファンド先物」の価格
・先物価格から「この月の平均FF金利は何%になりそうか」を逆算し、それを各ターゲットレンジに割り振って確率にしている
CME公式のユーザーガイドでも「開催予定のFOMCでの政策金利変更の確率を分析するツール」と説明されています。
イメージとしては
・アナリストの予想 → 一部のプロの見立て
・FedWatch → 先物市場に参加している大勢のプロのコンセンサス
という違いです。
2. FedWatch基本画面の見方
CME FedWatchにアクセスすると、主に次の情報が並んでいます。
1. 会合日リスト
・直近から先のFOMC日程が並ぶ
・クリックすると、その会合の「金利レンジごとの確率表」が下に出る
2.「Current」タブ
・選んだ会合について
→想定される金利レンジ
→現在の確率
1日前、1週間前、1か月前の確率比較を一覧で表示してくれる
3.「Compare」タブ
・同じ会合について
・金利レンジ別の確率の変化をグラフで表示
・「どの金利水準に、どのくらいの割合でベットされているか」が感覚的に分かる
4.「Historical」ボックス
・過去1年分の「その会合に対する市場の期待の推移」
・生データをエクセルでダウンロードも可能
5. ドット・プロット
・FOMCメンバーそれぞれの将来の金利見通しを点で表示
・青い点がメンバー予想の中央値
・赤い点が先物市場(FedWatch)が示す年末の金利水準
この「FOMCメンバーの見通し」と「市場のコンセンサス」のズレを見ることで、長期目線のヒントが得られます。
3. FedWatchで長期目線を作る具体ステップ
ここからが本題です。
「次回会合だけ」ではなく「次の1〜2年」を見るための手順をトレーダー目線でまとめます。
ステップ1 直近1年分の会合をざっと眺める
1. FedWatch上部の会合日リストを、これから1年〜1年半先まで順番にクリックしていく。
2. 各会合の「Current」タブを見て
→どの金利レンジに一番高い確率が乗っているか
→現在の金利から見て「利上げ方向か、据え置きか、利下げ方向か」をメモしていく。
メモはシンプルで十分です。
例
・三月会合 据え置き濃厚
・六月会合 利下げ一回分織り込み
・九月会合 利下げ二回分織り込み
この「ざっくりメモ」だけで、すでに「市場は今年中に合計何回分の利下げを見ているのか」が見えてきます。
ステップ2 年末時点の金利レンジに注目する
長期目線を作るうえで、特に使いやすいのが「その年の最後のFOMC会合の金利レンジ」です。
1. 今年の最終会合の日付をクリック
2. Currentタブで「どのレンジの確率が一番高いか」を見る
3. 現在のターゲットレンジとの差を計算し
→何回分の25bp利上げ相当か
→何回分の25bp利下げ相当か
をざっくり数える
これによって
・「大きく引き締め方向」なのか
・「横ばい気味」なのか
・「はっきり緩和方向」なのか
という、年単位の方向性が明確になります。
ステップ3 ドット・プロットで「Fed本体の見通し」を確認
FedWatchのドット・プロット機能では
・各年末の水準について
・FOMCメンバーの予想分布(青い点、その他の点)
・市場が織り込む水準(赤い点)
を比較できます。
ここで見るべきポイントは
1. 市場(赤い点)がFedの中央値(青い点)より低いか高いか
・市場金利<Fed中央値 → 市場は「Fedは将来の利下げを余計にせざるを得ない」と見ている
・市場金利>Fed中央値 → 市場は「Fedは実際にはもっと引き締めざるを得ない」と見ている
2. そのギャップがどの年で一番大きいか
→ギャップが大きい年ほど「サプライズ要因になりやすい年」
これを知っておくと、「どの年のどのタイミングで、金利テーマのボラが大きくなりそうか」の当たりが付けられます。
ステップ4 自分のトレードに落とし込む
FedWatchから分かるのは「金利の方向」です。
これを各マーケットに変換すると
・ドル高・ドル安の地合い
・米株のリスクオン・リスクオフ傾向
・ゴールドの中長期トレンド
・円やスイスフランなど安全通貨への資金流入リスク
といったイメージが作れます。
具体的には
・利上げ・高金利維持が長く続きそう
・基本はドル高バイアス
・金は上値が重くなりやすい
・グロース株は逆風になりやすい
・利下げサイクル入りが明確に織り込まれている
・ドル安バイアス
・金・株・暗号資産などリスク資産は追い風になりやすい
という「ざっくり方向感」を先に決めておいて、あとはテクニカルで日々のエントリータイミングを探す、という使い方です。
4. 実際の読み解きイメージ
ここではイメージをつかむための例として「ある時点でFedWatchが、年末時点の金利を現在より0.50%低いレンジにいちばん高い確率で織り込んでいる状況」を考えます。
この場合、市場は
・今年中に25bp利下げが2回分
・もしくは50bp一気の利下げが1回
といった「合計0.50%の緩和」を高い確率で見ていることになります。
ここから導ける長期イメージは
・景気減速やインフレ鈍化が続くシナリオを市場がメインで見ている
・ドルインデックスは上昇一方ではなく、どこかで頭打ちから下方向を意識したい
・ゴールドや株式、特にグロース寄りの銘柄には中長期で資金が入りやすい
といった方向性です。
もちろん、これだけで「断定」するのではなく
・直近のインフレ指標
・雇用統計
・Fed要人発言
などと組み合わせて修正していきますが、
「基準となる長期ストーリー」を1本持てることが重要です。
5. FedWatchを使うときの注意点
最後に、誤解しがちなポイントを整理します。
1. FedWatchは「市場の期待」であって「Fedの約束」ではない
・経済指標や地政学リスクで、期待は何度でもひっくり返る
2. 利上げ回数・利下げ回数はあくまで「ざっくり数える」くらいで良い
・0.25%ずつきっちり動くとは限らない
・タイミングも前後する
3. ドット・プロットは「現時点のFedメンバーの自己申告」に過ぎない
・景気が変われば、ドットの位置も変わる
4. 他の指標と組み合わせて初めて威力を発揮する
・インフレ指標
・雇用
・景況感指数
などと一緒に見ることで、より精度の高い環境認識になる
まとめ
FedWatchは
・「次のFOMCで何bp動くか」を当てるツールではなく
・「今後1〜2年で利上げと利下げがどのくらい織り込まれているか」をざっくり数えるためのツール
として使うと、一気に価値が上がります。
手順はシンプルです。
1. 1年分の会合を眺めて、利上げ方向か利下げ方向かをメモする
2. その年の最終会合の金利レンジから「回数ベース」でざっくり数える
3. ドット・プロットで「Fedの見通し」と「市場の期待」のズレを見る
4. その長期ストーリーをベースに、ドルや株、ゴールドなどの方向感を決める
この流れを週末の環境認識ルーティンに組み込んでおけば、日々のニュースに振り回されず、「自分の中の長期軸」を持ったトレードがしやすくなります。
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