Part 2. 「現場はこう変わる」― 業務負担を劇的に改善する介護ICT導入成功事例
2.1. はじめに:テクノロジーがもたらす具体的な変化
Part 1で示したマクロな課題に対し、ICTやロボットは現場レベルでどのように貢献するのでしょうか。
ここでは、「介護記録・業務負担の削減」「夜勤負担の軽減と見守り強化」「職員間の連携強化」という3つの代表的な課題別に、テクノロジー導入によって具体的な成果を上げた事業所の成功事例を紹介します。
Part 1で示した絶対的な労働力不足に対し、これらの事例は具体的な回答を示しています。
2.2. 【課題①】終わらない記録・転記業務の負担を削減する
介護職員の貴重な時間を圧迫する最大の原因の一つが、日々の記録・転記業務です。この非効率な作業をなくすことが、本来のケアに集中できる環境づくりの第一歩となります。
• 介護ソフト導入による転記作業の撤廃
富山県の「ケアスタジオ・ウェルフェアサービス」では、複数事業所間の情報共有が紙とExcelに依存し、転記作業とリアルタイムな状況把握の欠如が常態化していました。
これに対し、介護ソフトを導入し業務を電子化。紙からの転記作業を完全になくし、記録時間を大幅に短縮しました。本社から全事業所の状況をリアルタイムに把握できるようになり、職員のストレス軽減と離職防止にもつながっています。
• 医療機器連携と記録自動化による時間創出
同じく富山県の「リハ・ハウス来夢」では、紙によるバイタル測定の記録に時間がかかり、職員の負担となっていました。
Bluetooth対応の医療機器と介護ソフトを連携させ、バイタル測定から記録までを自動化することで、看護職・機能訓練指導員の業務時間を1日あたり約60分も削減。「書く手間」を最小限にすることで、職員が専門的なケアに集中できる環境を実現しています。
• タブレット記録による残業時間の大幅削減
ある特別養護老人ホームでは、記録業務を紙からタブレット端末へ移行した結果、記録にかかる時間を76.1%、申し送りに費やす時間を74.1%も削減しました。創出された時間でレクリエーションなどを充実させ、ケアの質の向上にもつなげています。
2.3. 【課題②】夜勤の負担軽減と安全な見守りを両立する
少人数で多くの利用者の安全を守る夜勤は、職員にとって心身ともに大きな負担となります。ICTは、この負担を軽減しつつ、より安全な見守り体制を構築するための強力な武器となります。
• 見守りセンサーとインカムによる離職防止と事故削減
特別養護老人ホーム「砧ホーム」では、センサー付き見守りシステムとインカムを導入し、労働環境を抜本的に改善。その結果、6年間で離職者ゼロ、さらに介護事故を6割も減少させるという驚くべき成果を上げています。
• センサーとカメラ連携による不要な訪室の半減
「特別養護老人ホーム南幌みどり苑」では、夜間の定期巡回による不要な訪室が課題でした。見守りセンサーとカメラを併用し、アラート時にまず映像で状況を確認する運用に変更。
これにより、利用者の睡眠を妨げる不要な訪室を半減させることに成功しました。
• 排泄介助タイミングの最適化
「特別養護老人ホーム六甲の館」では、夜間排泄のタイミングがつかめず介助負担が大きいことが課題でした。
状況把握型センサーやカメラタイプの見守り機器を活用し、利用者の覚醒状態に応じて排泄介助を行うことで、夜間の訪室回数を平均6.3回から3.8回に削減し、職員の9割以上が「安心して見守りに取り組めるようになった」と回答しています。
2.4. 【課題③】職員間の連携を強化し、人材定着を支援する
人手不足が深刻化する中、多様な人材が活躍できる環境づくりは急務です。ICTは、職員間のコミュニケーションを円滑にし、チームケアの質を高める上で重要な役割を果たします。
• 外国人介護職員の言葉の壁を解消
ある介護事業所では、外国人職員との記録・申し送りにおける言葉の壁が定着の課題となっていました。
翻訳機能付きのタブレット端末を導入したことで、外国人職員が母国語で記録を作成し、他の職員は日本語で内容を把握できるようになりました。
記録業務の負担を軽減すると同時に、日本語学習も支援することで、外国人職員が安心して長く働ける環境を整備し、定着率向上に成功しています。
• インカムとタブレットによるチームケア強化
特別養護老人ホーム「敬愛荘」では、職員不足による一人ひとりの業務負担増が課題でした。インカム導入で月105時間、タブレット等の活用で1日約9時間の省力化を達成。
職員間の情報共有がスムーズになったことで、ヒヤリハット報告が増加(リスクの可視化)し、事故件数は減少。職員満足度とケアの質の両方を向上させています。
上記のソースは以下の通り
• ケアスタジオ・ウェルフェアサービス
◦ ファーストケア お役立ちコラム「ケアスタジオ様・ウェルフェアサービス様(富山県)」
• リハ・ハウス来夢
◦ ファーストケア お役立ちコラム「リハ・ハウス来夢様(富山県)」
• ある特別養護老人ホーム (タブレット記録による残業削減の事例)
◦ WAM NET「第4回:タブレット型介護記録システム導入効果・注意点」
• 地域密着型特別養護老人ホーム ささづ苑かすが
◦ 公益社団法人 全国老人施設協議会「介護ICT導入モデル事業 報告書」
• 特別養護老人ホーム 砧ホーム
◦ 公益社団法人 全国老人施設協議会「介護ICT導入モデル事業 報告書」
• 特別養護老人ホーム南幌みどり苑
◦ 公益社団法人 全国老人施設協議会「介護ICT導入モデル事業 報告書」
• 特別養護老人ホーム六甲の館
◦ 公益社団法人 全国老人施設協議会「介護ICT導入モデル事業 報告書」
• 特別養護老人ホーム春圃苑
◦ 公益社団法人 全国老人施設協議会「介護ICT導入モデル事業 報告書」
• ある介護事業所 (外国人介護職員の言葉の壁解消の事例)
◦ NTTデータ経営研究所「外国人介護職員の受入れ・定着のためのICT機器等の活用事例集」
• 特別養護老人ホーム 敬愛荘
◦ 公益社団法人 全国老人施設協議会「【活用事例集】6介護業務支援・介護ICT全般」
(その3に続く)