最低賃金が上がる時期になると、
「パートの時給だけ確認しておけば大丈夫」
と思いがちです。
しかし、小規模保育園では職員数が少ないからこそ、1人の給与改定が全体の給与バランスや年間人件費に与える影響が大きくなります。
特に確認したいのが、
パート時給だけでなく、月給職員の時給換算、各種手当、職員間の給与差、年間の会社負担まで含めて見ることです。
今回は、最低賃金改定前に給与表で確認しておきたいポイントを5つに絞って整理します。
1.まず「最低賃金の対象になる賃金」を確認する
最初に確認したいのは、給与明細の総支給額ではありません。
最低賃金との比較対象になるのは、原則として毎月支払われる基本的な賃金です。
厚生労働省では、最低賃金との比較から除外するものとして、たとえば次のような賃金を挙げています。
- 賞与
- 時間外・休日・深夜の割増賃金
- 精皆勤手当
- 通勤手当
- 家族手当
- 臨時に支払われる賃金
つまり、
「総支給では最低賃金を超えているから大丈夫」とは限りません。
まず給与表上で、どの項目が最低賃金の比較に入るのかを整理する必要があります。
2.月給の正社員も時給換算する
最低賃金というと、パート・アルバイトだけを見るケースがあります。
しかし、地域別最低賃金は、原則としてその都道府県内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。
したがって、月給制の正社員も確認が必要です。
厚生労働省が示している月給制の基本的な確認方法は、最低賃金の対象となる月給 ÷ 1か月平均所定労働時間です。
これを時間額に直して、適用される最低賃金と比較します。
例えば、
月給だけを見ると十分高そうに見えても、
- 所定労働時間が長い
- 最低賃金に算入できない手当が多い
といった場合には、時給換算すると想定より最低賃金に近いことがあります。
小規模保育園では、パートだけでなく正社員まで一覧で時給換算しておくと給与改定がかなり判断しやすくなります。
3.「最低賃金との差」を全員分並べる
最低賃金を超えているかどうかだけではなく、最低賃金から何円離れているか
まで確認します。
例えば、新しい最低賃金を仮に1,200円とすると、
職員A:1,205円
職員B:1,230円
職員C:1,350円
では、全員最低賃金以上ではあります。
ただし、Aさんはわずか5円差です。
この状態で次年度も最低賃金が上がれば、再び給与改定が必要になる可能性があります。
そこで私は、現在の時給換算額 − 新最低賃金という列を給与表に1つ作ることをおすすめしています。
すると、「法令上は問題ない職員」と、「今回は問題ないが、ほとんど余裕がない職員」を分けて考えられます。
4.パートだけ上げたときの「給与差の圧縮」を見る
小規模保育園で特に気を付けたいポイントです。
例えば、
パート保育士 1,200円
正社員保育士 時給換算1,300円
だったとします。
最低賃金対応などでパートだけを100円上げると、
パート 1,300円
正社員 1,300円
となります。
もちろん、時給換算だけで職責や待遇を単純比較することはできません。
正社員には賞与、役割、勤務条件等の違いもあります。
ただ、職員から見ると、
「責任のある正社員とパートの時間単価がほとんど変わらない」
という感覚が生まれる可能性があります。
最低賃金改定時には、最低賃金を下回る職員だけを見るのではなく、給与表全体の間隔がどう変わるかを見ることが重要です。そのため、私は給与改定案を1つだけ作るより、
①最低限対応案
②給与バランス調整案
③採用・定着強化案
のように複数案を作って比較する方が判断しやすいと考えています。
5.最後に「年間いくら増えるか」まで計算する
時給を50円上げる。
月給を5,000円上げる。
この数字だけを見ると、大きな負担には感じないことがあります。
しかし、給与改定は毎月続きます。
例えば、
月120時間勤務のパート職員5人を
時給50円上げる場合、
1人あたり
120時間 × 50円=月6,000円
5人なら、
月30,000円
年間では、
360,000円
の給与増になります。
さらに、給与改定の内容や加入状況によっては、事業主負担の社会保険料等にも影響します。
正社員の基本給を上げれば、賞与の算定方法によっては賞与額も増えます。
したがって、
「1人いくら上げるか」
だけではなく、
「法人全体で年間いくら増えるか」まで計算してから決めた方が安全です。
処遇改善等加算も別に確認する
さらに小規模保育園の場合は、一般企業の給与改定とは違い、処遇改善等加算による現在の賃金改善もあります。
ここで大切なのは、
「処遇改善があるから最低賃金分をそこから出せばいい」と単純に考えないことです。まず、最低賃金上、必要な給与水準を確認する。
次に、現在、処遇改善等加算によってどのような賃金改善を行っているかを整理する。そのうえで、法人としてどこまで独自に給与を改善するかを考えます。
人勧による公定価格の人件費改定分がある場合も同様で、それぞれをいったん分けて把握しておくと、数年後に給与の中身が分からなくなるのを防ぎやすくなります。
最低賃金改定前に作っておきたい給与表
最低賃金改定前には少なくとも、
現在給与
最低賃金算入対象額
月平均所定労働時間
時給換算額
新最低賃金との差
処遇改善による現在の支給額
給与改定案
改定後給与
年間人件費増
まで一覧にできると、かなり判断しやすくなります。
小規模保育園は職員数が比較的少ないため、きちんと表を作れば、給与改定の全体像はかなり見えるようになります。
逆に、
「最低賃金が○円上がるから、とりあえずパートを○円上げる」
だけで決めてしまうと、後から正社員との給与バランスや年間負担の問題が出てきやすくなります。
最低賃金対応を、給与表全体を見直すタイミングとして使う。
これが実務上は重要だと思います。
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自園の給与データで整理したい方へ
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月給職員の時給換算
最低賃金との差
給与改定後の月額・年間負担
賞与への影響
法定福利費等を含めた概算負担
処遇改善等加算の現在の支給状況
正社員・パート間の給与バランス
を整理し、複数の給与改定案を比較します。
「結局、自園の場合はいくら上げればいいのか」を数字で考えたい場合にご利用ください。
※本サービスは経営判断を支援するための参考資料を作成するものです。最低賃金への法的適合性、処遇改善等加算の算定・配分の適否、行政提出・申請等について最終判断を行うサービスではありません。必要に応じて労働局、自治体、社会保険労務士等へご確認ください。