300号達成・振り返って 

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・2012年安倍政権誕生から住宅業界も徐々に回復へ
 この住宅情報提供を始めたのが2008年リーマンショック後の2010年から始めました。当時、金融業界ではバブル後の不良債権整理の最終局面を迎えていました。当時、銀行界では、建設、不動産、ファッション、繊維業界への貸付抑制、中でも赤字会社に対しては、貸付どころか貸しはがし、資金回収に躍起でした。
 リーマンショック後の倒産件数は、08年15,646件、翌09年15,646件の倒産件数でした。住宅業界では、2012年までに準大手のクボタハウス、殖産住宅、日本電建などが撤退、ニッセキハウス、太平住宅が倒産、上場会社のSXLはヤマダ電機に、ミサワホーム、パナホーム、トヨタホームがトヨタ傘下でホールディング化、東淀建設は積水ハウスが吸収、その他、中小工務店、不動産会社も廃業、倒産がピークに達しました。
 その後、銀行の不良債権整理は一段落、業界整理、 淘汰の峠を越えて12年2月安倍内閣誕生に引き継がれていきました。安倍政権の成長戦略としての3本の矢、「金融緩和」・「財政政策」・「成長戦略」が打ち上げられました。
中でも量的、質的金融緩和は金融引き締めから緩和へ。とはいえ、そんな影響もあり、20才台後半世代でも家が持てるようになってきていました。

・13年〜徐々に住宅価格は上昇へ
 バブルの後、2012年ころまで建設物価、工事施工費は下がり続けて限界値で落ち着いていましたが、13年ころより長期優良住宅、省エネ、ソーラ 等性能に関係する促進策から住宅価格は上昇し始めました。 ただ、大手は売り上げが伸びないなか、こうした補助金の付く省エネ、性能等に関係する設備機器、ソーラの上乗せで売り上げ、利益を稼ぐしかありませんでした。

 16年以降、東京オリンピックの準備、工事が始まり、人件費、工事施工単価も徐々に上昇していきました。コロナ前では、大手は坪70万以上、中小の住宅工務店でも、さすがに坪40万円台〜というフレーズは見かけなくなり、坪50万円後半〜。契約時の現実は60万円を超えていました。

 コロナ後は、更 に木材の値上がり、原油価格の高騰、資源高の影響で建設資材価格の上昇、建設技能者不足による人件費は上昇の傾向にあり、住宅会社の利益を圧迫し始めていました。
 24年現在、大手ハウスメーカーの住宅坪単価は100万円を超えています。平均住宅価格は5000万円時代へ。住宅工務店でも坪単価60~70万円が当たり前となっています。当所では、数年前から予想していましたように、住宅購入者は低所得層から高所得者へ、ローコスト住宅から高額住宅へ変化しています。

 新築住宅着工数は、コロナ後の22年に850,104戸と少しは増加したものの23年822,838戸、24年見込みは77万8千戸(前年比5%強減少)、持ち家は20カ月連続で減少しています。
9月中間決算では、大手ハウスメーカーの売り上げ、営業利益は少しだけ伸びているように見えますが、値上げによる売り上げ増、利益を確保しているだけで着工数を見てみると5%近く減少しています。積水、大和、住林は国内の落ち込みを海外でカバーしている状態です。

・コロナショック、大きな社会の変化や経済ショックの後、住まいの形やライフスタイルが変化
 過去の経験則から、大きな社会の変化や経済ショックの後、住まいの形やライフスタイルが変化しています。 1945年、第二次世界大戦終結。1973年、第四次中東戦争(石油ショッ ク)。1989年、日本でバブル崩壊。2001年、米国発ITショック。2008年、米国発住宅ローン不良債権問題でリーマンショック。2020年2月、世界コロナショック。このように概ね10〜20年サイクルで株式、景気調整 が起こっています。そのたびに住まい方、住まいの形も変化しています。

 終戦前の住まいは兎も角として、戦後の住まいは漆喰塗り壁から、板張りへ 断熱材もなくお粗末なものでした。70年東京オリンピック、76年大阪万博を控え、公団住宅やニュータウンの建設が始まり、建築基準法も強化され、住まいは、少しずつ近代化が図られて、住まいの間取りも○ LDKと定義づけられ、LDK中心の洋風生活スタイルへと変化していきました。

 73年、石油ショックの後は、省エネの観点から断熱が重視されて、ビルは大きな開口部から小さな窓に。住宅は、断熱材として壁の中にグラスウールを入れ始めました。このころから、住宅を大量供給するためにプレハブ住宅が主流となり、やがて、高度経済成長期となり、大量消費が謳歌され、今度は消費が美徳。89年のバブルに向けて、ビルは総ガラス張り、住宅の窓も大きくなり、大型、高級住宅化していきました。

 バブル崩壊後、景気は低迷、中流と言われた人たちが大きなダメージを受けていて、新築住宅が大幅に落ち込んでいきました。そのころ、95年1 月、阪神淡路大震災があり、被災された方々には言い方が悪いかもしれませんが、住宅業界にとっては「濡れ手に粟」でした。
 ところが、受注はしたものの、人件費、建設コストが大幅に上昇して、上昇分を被災された施主に負担してもらうわけにもいかず、多くの住宅会社は持ち出しの赤字となり、前文のように体力のない中堅の住宅会社の多くが撤退、倒産、大手ハウスメーカーも 再編、統合が始まりました。住宅着工数も87年の187万戸から半減し90 万戸以下へ。

 阪神淡路大震災の再建も落ち着いてきたころ、08年リーマンショック。その後、低金利政策や住宅減税策などで住宅の購入が容易となり、購入世代も、若い一次取得者の時代となり、住宅は小型化、キュービックな箱スタイルで、庇、バルコニーもないローコスト住宅が流行し始めました。
 ただ、中小工務店の住宅性能、構造的な手抜き工事が社会問題化していて、政府は、長期優良住宅政策や、性能強化を打ち出し、中小工務店では、その手続き、対応がむつかしく大手FC系に加入、参入という形になり、様々なノウハウを吸収、住宅の品質も改善されていきました。 今では、大手、中小が作る住宅の構造、性能の差は、ほとんどありません。むしろ、「耐震性や、性能重視を売り」の住宅工務店は、大手ハウスメーカーよりも品質の高いものを作っている住宅工務店も多くなってきています。

 安倍内閣成立の2012年ころより、景気も少しずつ回復傾向にあり、金利も低金利で安定していて、住宅も少しずつ高級化の傾向にありました。
 そして、今回のコロナショックです。社会は、「ニューノーマル」な時代 へ。住宅にも大きな変化が出始めています。 社会は、ESG、SDGs、脱炭素、感染対策、働き方改革/在宅勤務、少 子化など、大きく変わる時代にあります。
 住宅においては、省エネ住宅、感染対策、在宅勤務、女性活躍、共働き世代の増加、小家族化を踏まえ、○ LDKという部屋数重視から、豊かな空間、生活のしやすい、使い勝手の良い住まいが求め始められています。
 住まいの「生命をまもる/耐震性」、「健康を守る/快適性」、「財産を守 る/住まいの価値向上」を基本条件として、アフターコロナ後の感染対策、在宅勤務、自宅にいる時間が長くなり、ゆとり空間やアウ トリヴィングなどでリラックスのできるスペース。また、女性の社会進出に伴って、家庭内作業の負担軽減、子育ての住まいとして、住宅環境が大きく変わろうとしています。

・コロナ感染回復後は住宅購入世代に変化
  30才代の年収400〜600万円から40才代の年収700万円以上へ。 Wインカム世代の世帯年収は1000万円以上となっています。消費形態は「欲求消費者」「理性消費者」 「感性消費者」「感動消費者」の4段階からなっています。
1.とにかく家が欲しい「欲求消費者」…中小住宅工務店のお客様。
2.会社の信用、構造、性能・健康・省エネ・安心を求める「理性消費者」 …大手住宅メーカ、性能重視の住宅工務店のお客様。
3.信用、安心、性能よりも自分の感性とあう会社を選ぶ傾向がある「感 性消費者」。拘りがあり手間が掛かるお客様。また、ご要望が多い割には予算が少ない。自己中心的でできれば避けたいお客様。…ゆっくり 対応のできる個人設計事務所のお客様。
4.「感動消費者」まずコストよりも信用が前提で下記のタイプがいます。
① 自分では創造できない感動できる住宅を求めるお客様は…デザイン系 住宅工務店、デザイン系の設計事務所や若手建築家を求めます。
② お金はあるがデザインは解らない、安心感、信用、ブランドや豪華さ を求めるお客様は…三井ホーム、積水ハウス、住友林業等をもとめます。
③ 見栄で決めるタイプ/性能、省エネなどよりも外壁(タイルや石)の材料、輸入物や、広い玄関、吹き抜け、天井が高く大きなLDK、豪華 な内装、設備、家具を好む。快適性よりも自慢のできる家を求めるお客様は…○○先生、有名人、だれだれの紹介でという設計事務所、先 生と言われる建築家を好む。
④ 一方、本物がわかるお客様は…自らの感性に合う設計事務所、著名建築家を選ぶ。

・コロナ後の住宅工務店の住宅購入者は、「欲求消費者」から「理性消費者」「感性消費者」が中心となってきます
 これまでは「良いか悪いか、安いか高いか、構造、性能、AM保証はどうか」が欲求消費者、理性消費者の判断基準の多くを占めていましたが、これからは感性が合うか、合わないかが、より大きな比重を占めるようになります。
 被対面販売が定着するとお客様は、住宅会社のWEBを見て、自分の感性に合う会社を選んでくる時代になってきます。 価格か、構造か、性能か、デザインか、住まいを通じて生涯お付き合いのできる会社か、会社の特徴をはっきりと打ち出す必要があります。何でもやっていますでは、お客様は来ていただけなくなります。

 こうした、大きな変化を踏まえて、住宅の間取りも変わりつつあります。
私は、70年、ミサワホームに入社、94年〜09年、自ら住宅会社オーシ ャンホームを経営、2001年、ミサワインターナショナル(HABITA設計顧問)。現在、住宅工務店のコンサルティングをしています。 住宅業界半世紀を超えました。主に住宅設計、住宅の商品開発、この経験を生かして、アフターコロナ後の社会の変化を考慮して、次の時代 にふさわしい住宅の間取りの作り方、住まい方を提案。
22年11月「これで解決、家を建てる前にお読みください」を出版。Amazonで購入できます。

2024・12・1(大安)
下記、HPもご覧ください。
ハウスビルダー販売支援研究所 代表 大出正廣





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