40代~50代に訪れること ~中年期の危機って?~

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私は昨年50歳になりました。日々、中年ど真ん中を生きていますが、キャリア界隈では「中年期の危機」というものがよく語られます。「危機」という言葉がめちゃくちゃネガティブに聞こえるので身構えてしまうかもしれませんが、ご自身の対処のしかた次第で「危機」の意味合いは変わってくるものです。

人間、20歳を過ぎれば緩やかに体力の衰えが始まるといいます。20代~30代のあたりはある程度体力を維持しているのですが、40代を過ぎると筋肉量の変化などで衰えを感じやすくなるのではないでしょうか。また、脳の活動においても、40代を過ぎて記憶力の低下を実感する方が多くなると思います。私自身も心当たりが山ほどあります。駅の階段を上るときですとか、人の名前が思い出せないとか・・・。中年期になるとこういった身体的・生理的な変化が起きてきます。

環境面ではどうでしょうか。ご自身を取り巻く職場や家庭での変化はどのようなことが起こっているでしょうか。職場では、もうベテラン社員として扱われ、後進の育成を期待されるようになっているのではないでしょうか。一方でご自身の昇進・昇格の先もある程度見えつつあるかもしれません。50歳を過ぎれば「あと何年・・・」といった気持ちもわいてくるでしょう。家庭では、子育て期の方でしたらお子さんが親離れするタイミングですとか、ご両親が年老いて介護が視野に入ってくるですとか、生活変化の兆しが見えてくる時期でしょう。

このような変化は、ご自身の心理面に知らず知らず影響を及ぼします。多くの方にとって、若かった時よりも「お悩み」が増えてくるでしょう。すぐには解決策や結論が出しづらい問題が増え、さりとてじっくり相談に乗ってくれる相手がいるわけでもなく・・・一人で抱えがちになっていませんか?変化を柔軟に受け止められない場合、心理的危機に直面する可能性があります。こういった中年期におこる一連の変化に対する葛藤を「中年期の危機」と呼びます。なかなか悩ましいものですよね。

ライフサイクル理論において人間の成長を8つの発達段階であらわした発達心理学者のエリクソンによると、中年期(成人期)の発達課題を「世代継承性」としています。次の世代を育てることに積極的に関与し関心を高めることで、周囲からも求められるといった良い循環が生まれるといいます。「世代継承性」がうまくいかないと、「停滞」に陥り良い循環に入っていけません。これを成就するには、中年期の前段階の成人前期の発達課題である、人との関係を築ける「親密性」を確立している必要があります。もし「世代継承性」の発達課題にうまく対処出来ていない場合は、ご自身の、人との関係を構築する力に課題があると考え、取り組むことが肝要です。中年期のキャリアにおいて、「人を育てる」という経験は自分を形づくるという経験でもあります。それは、その先の老年期(65歳以降~)の発達課題である「統合性」への対処において非常に大きな意味を持っています。

このように、各発達段階での発達課題は連続していますので、前後の課題の関係性に目を向け、中長期的な視野で「中年期の危機」に対処することが大事であると言えるでしょう。こう考えますと、「危機」は恐れるものではなく、人生の旅路における「岐路」「分かれ目」という意味を持つものではないでしょうか。中年期においては自分自身の成長・発達が停滞し、キャリアの踊り場(キャリアプラトー)に入るということが言われていますが、一旦立ち止まり、さらに成熟に向かうか、退行してしまうか、選ぶのは本人しかできないことです。私自身、「中年期の危機」においてこそ、ぜひ前に進む意欲を取り戻し、限界と思っていることを突破したいものです。

前に進むには、ご自身の「転機」について意識することも有用なことです。「転機」は予期していることも予期していないこともあります。期待していることが何も起こらない、ということも「転機」の一つです。例えば「部長になれると思っていたのに、一向になれない。」といった具合ですね。「転機」が訪れているのに、新たな自分に脱皮することを避けて、現状にしがみついてしまう、ということはよくあること。しかし、中年期は40代~50代と長い期間であるように見えて、意外とあっという間に過ぎてしまうものです。気づいたら40半ば、気づいたら50半ば、です。だからこそ、「転機」をいち早く認識し、「乗り越える」一手が必要です。

心理学者のブリッジスによれば、「転機」は何かが終わることで始まると言います。何かが終わることで、中立期(ニュートラルゾーン)に入り、新しい自分に「変わる(変わりたい)・変わらない(変わりたくない)」という混乱や葛藤が起こります。これはつまり、終わりゆく何かを自分自身で「成仏」させることができるかどうか、ではないでしょうか。現状をありのままに受け止め、変化すべきものは何かを見極め、捨てる必要があるものは思い切って捨てる、ということです。心理的にはつらい経験をするかもしれません。しかし、「中年期の危機」に良い選択をするために必要な経験と言えるでしょう。

キャリアカウンセリングをおこなう立場の私からは、中年期のクライアントの方はすでに人生経験が豊富にあり、その経験の積み重ねからご自身に必ず「自負心」があると信じています。その「自負心」を最大限尊重し、事象の面でも感情の面でもしっかりと寄り添い、理論を助けにしつつ今起きていることを丁寧に意味づけしてゆくことが、「中年期の危機」に向き合うクライアントの方への大きな支援になるはずであると考えています。中年期を生きるみなさまの「自負心」はどのようなものでしょうか?少し立ち止まって見つめてみませんか?

今回は、中年期の危機についてお話しました。私は会社勤めとの複業でライフキャリアデザインカウンセラーとして個人や世帯の職業生活設計や資産設計のお手伝いを志しております。保持資格としては国家資格キャリアコンサルタントとAFP(日本FP協会会員)をコアスキルとして、これまでの会社生活や人生経験で学んできたことを活かして会社内や地域社会に向けた価値創造につなげてまいります。ご関心を持っていただいた方、ご相談事がある方は、どうぞお声がけください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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