夢を持ちづらい時代に、夢を持つということ——効率では測れない人生の積み重ね

夢を持ちづらい時代に、夢を持つということ——効率では測れない人生の積み重ね

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コラム
私たちは今、夢を持つことさえ難しくなっている時代に生きているのかもしれません。
かつては、何かを目指そうと思ったとき、その先にある世界は自分で想像するものでした。知らないことも多く、憧れの仕事や生活に対して、漠然とした希望を抱くことができたのではないでしょうか。
しかし、現代社会では少し事情が違います。
スマートフォンを開けば、すでに夢を実現した人たちの姿が次々と目に入ってきます。若くして成功した人、経済的な自由を手に入れた人、好きなことを仕事にしている人。華やかな生活や充実した日常が、当たり前のように画面の中に広がっています。
本来であれば、そうした姿は夢や希望を与えてくれるものなのかもしれません。
けれど、不思議なことに、他人の成功を知ることで、かえって自分の夢を持つことが難しくなってしまう場合があります。
自分より若い人が、すでに大きな成果を出している。自分がこれから始めようとしていることを、誰かが何年も前から実現している。そうした情報を見ていると、挑戦する前から自分の可能性を否定してしまうこともあるでしょう。
今さら始めても遅いのではないか。自分には特別な才能がないのではないか。これから努力しても、あの人のようにはなれないのではないか。
そんな思いが積み重なると、本当はやってみたいことがあっても、最初の一歩を踏み出せなくなってしまいます。
しかし、ここで一度考えてみたいことがあります。
私たちは、いったい誰のために夢を持つのでしょうか。
誰かより成功するためでしょうか。周囲から認められるためでしょうか。それとも、自分自身が本当にやってみたいと思うことを実現するためなのでしょうか。
夢というものは、本来、他人との競争だけで生まれるものではないはずです。
どのような仕事をしてみたいのか。どんな場所で暮らしてみたいのか。何を学び、どんな経験をしてみたいのか。そうした気持ちは、自分自身の内側から生まれてくるものです。
そして、その夢が誰かのものより小さかったとしても、価値がないわけではありません。
世界中を旅したいという夢もあれば、いつか自分の店を持ちたいという夢もあるでしょう。新しい仕事に挑戦すること、好きな趣味を深めること、家族と穏やかに暮らすことを目指す人もいると思います。
夢に決められた大きさはありません。
大切なのは、それが自分自身の意思によって選ばれたものなのかということではないでしょうか。
そして、現代社会にはもう一つ、夢を持つことを難しくしている考え方があるように感じます。
それが、効率を重視する価値観です。
近年、タイパという言葉が当たり前のように使われるようになりました。限られた時間の中で、どれだけ多くの成果を得られるのか。できるだけ無駄を省き、最短距離で目的を達成することが、優れた時間の使い方として評価されることもあります。
もちろん、効率を考えること自体は悪いことではありません。
無駄な作業を減らすことで、自分の時間を増やすこともできます。技術の進歩によって、以前なら何時間もかかっていたことが、短い時間でできるようになったことにも大きな意味があります。
しかし、夢を実現するということまで、同じように効率だけで考えられるのでしょうか。
私は、そこに少し疑問を感じています。
例えば、新しい仕事を覚えることを考えてみます。
最初は何も分からず、失敗することもあるでしょう。何度も同じことを確認し、少しずつ経験を重ねながら、ようやく自分のものになっていく。
その過程には、どうしても時間が必要です。
初めから何でもできる人は、それほど多くありません。昨日できなかったことが今日できるようになり、今日理解できなかったことが、何か月か後になって分かるようになる。
そうした小さな積み重ねによって、初めて見えてくる世界があります。
ところが、結果だけを急いでしまうと、その過程にある時間を無駄だと感じてしまうことがあります。
こんなに頑張っているのに成果が出ない。何か月も続けているのに変化がない。もっと効率の良い方法があるのではないか。
そう考えること自体は自然なことです。
しかし、すぐに成果が出ないからといって、その時間に意味がなかったとは限りません。
目に見える結果が出るまでには、時間がかかることもあります。努力の方向を見直す必要がある場合もありますが、単純に早く結果が出ないという理由だけで諦めてしまうのは、少しもったいないように思います。
夢というものは、必ずしも最短距離でたどり着ける場所ではないのです。
むしろ、遠回りをする中で、本当に自分が求めているものに気づくこともあります。
最初に思い描いていた夢と、実際に経験を重ねた後の目標が変わっていることもあるでしょう。それは決して、夢を諦めたということではありません。
自分自身が成長し、物事への理解が深まったからこそ、新しい目標が見えてきたのかもしれません。
そして、夢を持つうえで忘れてはならないことがあります。
それは、他人の成功には、私たちが見ていない時間が存在しているということです。
SNSで目にする華やかな結果の裏には、長い時間をかけた努力や、思い通りにいかなかった経験があるかもしれません。
もちろん、すべての成功が努力だけによって生まれるわけではありません。環境や運、人との出会いなど、さまざまな要素が関わっているでしょう。
それでも、今見えている結果が、その人の人生のすべてではないことは確かです。
私たちは、誰かの完成した姿と、まだ途中にいる自分を比べてしまうことがあります。
しかし、それでは自分自身の可能性を正しく見つめることが難しくなってしまいます。
誰かの十年後と、自分の一年目を比較しても、そこには大きな違いがあって当然なのです。
大切なのは、他人がどこまで進んでいるのかではなく、自分がこれからどの方向へ進みたいのかということではないでしょうか。
そして、そのために今できることを考えてみる。
一日に少しだけ勉強してみる。興味のある世界について調べてみる。新しい人と話してみる。小さくても、何か一つ行動してみる。
それだけでも、何もしなかった昨日とは違う経験が生まれます。
もちろん、毎日必ず前進しなければならないわけではありません。疲れているときには休むことも必要ですし、環境によっては思うように時間を使えないこともあるでしょう。
大切なのは、無理をして続けることではなく、自分に合った形で積み重ねていくことなのだと思います。
今の時代は、結果を知ることがあまりにも簡単になりました。
誰かの成功も、誰かの失敗も、ほんの数秒で知ることができます。しかし、その結果にたどり着くまでの時間を、同じように数秒で経験することはできません。
知ることと、経験することは違うのです。
そして、夢を実現するということには、知識だけでは埋められない時間が存在しているのではないでしょうか。
何度も失敗し、考え直し、時には立ち止まりながら、少しずつ自分の望む方向へ近づいていく。
それは、タイパという価値観とは、ある意味で正反対の行動なのかもしれません。
けれど、人間の人生というものは、すべてを効率だけで測れるほど単純ではありません。
何年もかけて身につけた技術。長い時間をかけて築いた信頼関係。失敗を繰り返しながら得た経験。
そうしたものの価値は、費やした時間の短さだけでは判断できないはずです。
そして、私は夢というものにも、同じことが言えると思っています。
夢は、思い描いた瞬間に完成するものではありません。
そこに向かって行動し、経験を重ね、時には考え方を変えながら、少しずつ形になっていくものなのではないでしょうか。
もちろん、努力を続ければ必ず夢が叶うというわけではありません。
どれほど頑張っても、望んだ結果に届かないことはあります。途中で環境が変わり、目標そのものを見直さなければならないこともあるでしょう。
しかし、だからといって、その過程がすべて無意味になるわけではありません。
夢を追いかける中で身につけた知識や経験、人との出会いが、思いがけない別の可能性につながることもあります。
最初に目指していた場所とは違っていても、振り返ったときに、あの時間があったから今の自分がいると感じられることもあるでしょう。
人生には、そうした予想できない面白さもあるのだと思います。
現代社会は、これからも便利になり、さまざまなことが効率化されていくでしょう。
それ自体は決して悪いことではありません。
ただ、その便利さの中で、自分自身が時間をかけて何かを育てる喜びまで忘れてしまわないようにしたいものです。
誰かが成功しているから、自分にはもう遅いということではありません。
周囲が華やかに見えるから、自分の夢が小さいということでもありません。
今は何も形になっていなくても、これから何かを始めることはできます。
最初の一歩は、誰にでも小さなものです。
そして、その一歩を何度も重ねていくことで、以前は遠くに見えていたものが、少しずつ身近に感じられることもあるでしょう。
夢を持つということは、必ずしも大きな成功を約束することではありません。
自分が進みたい方向を、自分自身の意思で決めてみること。
そして、その方向へ向かって、今できることを少しずつ積み重ねていくこと。
それだけでも、人生の過ごし方は変わってくるのではないでしょうか。
誰かの人生を追いかける必要はありません。
誰かと同じ速度で進む必要もありません。
効率よく進めることが必要なときもあれば、時間をかけて向き合うことに意味があるときもあります。
大切なのは、自分自身が何を目指しているのかを見失わないことです。
夢を持ちづらい時代だからこそ、他人の情報に流されすぎず、自分の内側にある小さな願いを大切にしてみる。
その願いが、今はまだ遠い場所にあったとしても、焦る必要はありません。
一歩ずつ積み重ねていくことで、いつか振り返ったときに、思っていたよりも遠くまで歩いてきた自分に気づくことがあるかもしれません。
夢とは、誰かに見せるための完成された結果ではなく、自分自身が時間をかけて育てていくものなのだと思います。
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