AIは一つに絞った方が、仕事の文脈は深くなる。
私も三か月前までは、Claudeだけでやっていくつもりだった。
それでも今日、私はCodexへ浮気した。
もちろん、Claudeに大きな不満があったわけではない。
この三か月、私はClaudeと一緒に、営業、制作、記録、改善の仕組みを作ってきた。過去の失敗からルールを作り、次のAIが同じミスを繰り返さないように改善履歴も残した。
仕事の背景を理解しているAIを、わざわざ替える必要はない。
そう思っていた。
ところがChatGPT WorkとCodexの機能や能力を見ているうちに、少しずつ考えが変わってきた。
「ClaudeかChatGPTか」という二者択一ではなく、仕事ごとにAIを使い分けた方が合理的なのではないか。
その可能性を試したくなった。
私が浮気を考えた三つの理由
1.Claudeは、私の感覚では使用量の減りが早い
最初に断っておくと、これは正式な比較データではない。
あくまで、私が毎日の仕事でClaudeとChatGPTを使ってきた中での肌感覚だ。
Claudeで長い会話を続けたり、大量のファイルを読み込ませたり、Claude Codeで複雑な仕事を進めたりすると、利用可能な量が思っていたより早く減ることがあった。
Anthropicの公式説明でも、Claudeの使用量は、会話の長さ、添付ファイル、利用するモデル、作業の複雑さなどで変わるとされている。また、Claudeの通常利用とClaude Codeは、同じ利用枠を共有する。
ただし、ClaudeとChatGPTでは利用量の計算方法が違う。
そのため、「Claudeの方が何倍も消費する」と単純に比較することはできない。
ここで言えるのは、私の仕事の進め方では、Claudeの使用量を強く意識する場面が多かったということだけだ。
2.ChatGPTの思考の癖が、私に合っていた
これも、ベンチマークで測った性能差ではない。
私が対話の中で感じてきた、思考の相性の話だ。
ChatGPTの判断は、Claudeと比べるとやや保守的に感じることがある。勝手に大きく話を広げず、確認できている範囲から結論を積み上げようとする。
一見すると、慎重すぎるようにも見える。
しかし私にとっては、その慎重さ以上に、次の二つが重要だった。
論理的な飛躍が比較的少ない
論点の階層を柔軟に移動できる
「論点の階層を移動する」というと、少し難しく聞こえるかもしれない。
たとえば、目の前の質問に答えるだけでなく、
その質問は、どんな前提から生まれているのか
そもそも何を達成したくて聞いているのか
一段上の事業判断では、何を決める必要があるのか
一段下の実行では、具体的に何をすればよいのか
を行き来することだ。
私は、表面的な質問に正しく答えてほしいわけではない。
質問の前提がおかしければ、前提まで戻ってほしい。抽象的な話が続いたら、具体的な行動まで降りてほしい。
ChatGPTの、やや保守的だが論理の飛躍が少なく、論点の階層を柔軟に移動する思考が、私の仕事の進め方と噛み合っていた。
3.ChatGPTには、すでに私のメモリが蓄積されていた
ChatGPTには、「保存されたメモリ」と「過去の会話を参照する機能」がある。
私がどのような文章を好むのか。何を大事にしているのか。どのような判断を嫌うのか。過去の対話を通して、そうした情報が少しずつ蓄積されていた。
新しいAIを使うというより、すでに私をある程度知っている相手へ、仕事の範囲を広げる感覚に近かった。
ただし、ここには注意点がある。
ChatGPTのメモリは、仕事の進捗表や正確な手順書を保存するためのものではない。また、ChatGPTの会話履歴とCodexの作業履歴は別に管理されている。
つまり、ChatGPTが私の考え方を知っていても、それだけでCodexが仕事の続きを正確に理解できるわけではない。
そこで私は、記憶を二つに分けることにした。
私の好みや考え方は、ChatGPTのメモリに蓄積する
仕事の方針、手順、進捗、禁止事項は、AIの外に記録する
人間についての記憶と、仕事についての記録を分けた。
これが、今回の移行で最も重要な設計だった。
Codexに「いつもの仕事」を頼んでみた
私はCodexに、いつもの仕事を始めると伝えた。
するとCodexは、共通の仕事用フォルダを確認し、そこに置かれている事業の前提、判断基準、過去の改善履歴を読み始めた。
さらにNotionやタスク管理サービスから、
・現在進んでいる仕事
・前回からの引き継ぎ
・今日のゴール
・追跡中の数値
・未完了の作業
を確認した。
別のAIなのに、仕事の説明を一からやり直す必要はなかった。
もちろん、最初から完璧だったわけではない。
実際のやり取りでは、CodexがGitとの差分を「未保存変更」と表現したため、私はその意味を確認した。するとCodexは、「正確には、現在の作業フォルダとGitが最後に記録した状態との差分です」と言い直した。
こうした小さな修正も含めて、いつもの仕事が始まった。
ここで分かったのは、AIを移行するときに必要なのは、過去の会話を丸ごとコピーすることではないということだった。
必要なのは、そのAIが仕事へ参加するための入口を作ることだった。
AIを使い分けるために設定した仕組み
私が作ったのは、特別に高度なシステムではない。
考え方は、「複数の担当者が同じ会社で働くなら、何を共通にして、何を分けるか」という組織設計に近い。
1.事業知識の正本を一つにする
Claude用、ChatGPT用、Codex用に、同じ説明資料を何度も作らない。
次のような情報は、全AIが確認できる共通の場所に一つだけ置く。
・自分は何をしている人なのか
・誰に、どんな価値を提供するのか
・現在の事業方針
・すでに決定したこと
・守るべき禁止事項
・過去の失敗から作った改善ルール
AIごとにコピーを作ると、どれか一つを更新した瞬間に、別のAIが古い情報を見ることになる。
だから、共通知識は一か所に集める。
2.AI固有の操作方法だけを分ける
共通知識は一つにするが、操作ルールは分ける。
ClaudeとCodexでは、使える機能も得意な作業も違う。
そこで、それぞれについて、
・作業開始時に何を読むか
・どのファイルを編集してよいか
・何を確認してから実行するか
・どの操作で人間の承認を取るか
・作業後に何を記録するか
を個別に設定した。
会社の理念や顧客情報は全員で共有する。一方、営業担当と開発担当では業務マニュアルを分ける。
それと同じ考え方だ。
3.現在地をチャットの外へ置く
進捗をチャットの中だけで管理すると、そのAIを使えなくなった時点で仕事の現在地が分からなくなる。
そこで、
・進行中の仕事
・今日のゴール
・次にやること
・完了したこと
・数値やKPI
・前回からの引き継ぎ
をNotionやタスク管理サービスに置いた。
どのAIを使っても、同じ現在地を確認できる。
4.毎回、同じ起動手順を通す
AIへ仕事を頼む前に、同じ順番で現在地を確認させる。
・共通の仕事場
・事業の前提
・判断基準
・改善履歴
・現在の進捗
・今日のゴール
・既存ファイルの変更状況
この手順があることで、AIは新しい会話を「何も知らない状態」から始めずに済む。
5.勝手に外へ動かないルールを共有する
複数AI体制で最も怖いのは、誰かが勝手に外部へ送信したり、公開したり、重要な設定を変えたりすることだ。
そこで、どのAIにも共通して、
・外部への送信
・記事やSNSの公開
・契約や支払い
・重要な方針変更
・後戻りが難しい操作
は、人間の承認を得てから実行するように設定した。
AIを増やすほど、能力だけでなく停止条件が重要になる。
Claude、ChatGPT Work、Codexをどう使い分けるか
私は、どれか一つを「最強のAI」と決めることをやめた。
代わりに、仕事ごとの担当を決めた。
Claude
Claudeと一緒に作ってきた既存の営業運用や、すでに仕組みが完成している仕事を担当させる。
三か月分の運用を無理に捨てる必要はない。
ChatGPT Work
ChatGPT Workは、調査、分析、文書作成、資料作成など、複数の工程をまたいで完成物を作る仕事に使う。
OpenAIの公式説明でも、Workは長い複数工程の仕事と完成物を扱うための機能として位置づけられている。
Codex
Codexには、アプリ開発、動画生成、ローカルファイルの編集、テスト、差分確認など、実際の作業環境を使う技術的な仕事を担当させる。
Codexは、相談に答えるだけではなく、ファイルを読み、変更し、検証するところまで進められる。
ChatGPTの通常対話
思想整理、判断、壁打ちには、ChatGPTの通常対話を使う。
論理的な飛躍を抑えながら、前提、目的、事業判断、具体的な実行を行き来したい場面で使いやすい。
ただし、これは普遍的な性能順位ではない。
私の仕事と、それぞれのAIの思考や機能が噛み合う場所へ配置しただけだ。
なぜ、この体制が合理的なのか
使用制限で仕事全体が止まりにくい
一つのAIだけにすべてを任せると、そのAIの利用上限へ達した時点で、営業も制作も開発も止まる。
担当を分ければ、一方の利用量が厳しくなっても、別の仕事を進められる。
すでに作った仕組みを捨てなくてよい
Claudeで三か月かけて作った仕組みを、ChatGPTへ移すために壊す必要はない。
使える部分はそのまま残し、新しいAIが適している仕事だけを移せばよい。
思考の違いを、欠点ではなく役割に変えられる
Claudeの思考とChatGPTの思考が違うなら、どちらかを否定する必要はない。
深く展開してほしい仕事。論理の飛躍を抑えたい判断。実際のファイルを動かしたい作業。
それぞれに適したAIを配置すれば、違いそのものが強みになる。
一つのAIへの依存を減らせる
料金、使用制限、モデル、機能は今後も変わる。
仕事の知識をAIのチャット内だけに閉じ込めなければ、環境が変わっても仕事を続けられる。
次のAIにも移りやすくなる
今後、ClaudeやChatGPTより自分に合うAIが登場するかもしれない。
そのときも、事業知識、判断基準、改善履歴、現在地が共通の仕事場に残っていれば、一から説明し直す必要はない。
これはClaudeとの別れではない
私はClaudeを捨てたわけではない。
Claudeと三か月かけて積み上げた仕事も、関係も、仕組みも残っている。
ただ、一人のAIにすべてを任せることをやめた。
Claudeが合う仕事はClaudeへ。ChatGPT Workが合う仕事はWorkへ。技術的な実行はCodexへ。そして、最後の判断は私が行う。
浮気というより、チームを作ったという方が正しいのかもしれない。
一つのAIに忠誠を誓うより、仕事に対して誠実でありたい。
そのために、私はClaudeからChatGPT WorkとCodexへ、仕事の一部を移すことにした。
AIを替えるより先に、仕事が残る仕組みを作る
AIのメモリは便利だ。
長く使うほど、自分の好みや考え方を理解してくれる。
しかし、仕事の方針、正確な進捗、判断基準、停止条件まで、すべてをAIの記憶だけに預けるのは危険だ。
AIが替わっても残る場所に、仕事の現在地を置く。
共通知識は一つにまとめ、AIごとの操作方法だけを分ける。
そうすれば、AI選びは結婚ではなく配置になる。
あなたの仕事は、今使っているAIが突然使えなくなっても続けられるだろうか。
判断基準や改善履歴が、チャットの中だけに埋まっていないだろうか。
最強のAIを探す前に、どのAIでも仕事へ参加できる場所を作る。
私にとって今回の移行は、そのための最初の一歩だった。
参考にした公式情報
OpenAI「ChatGPT Work and Codex」
OpenAI「Memory FAQ」
Anthropic「Using Claude Code with your Pro or Max plan」
Anthropic「How do usage and length limits work?」