AIを使えば仕事が取れる時代だ、という正論がある。
私もそう思って、AIと一緒にcoconalaで制作代行を始めた。
でも6件、全部消えた。AIの問題じゃなかった。
AIで仕事を作ろうとした
「AIを使えば、個人でも仕事が取れる時代になった」
そう聞いて、私はcoconala(スキルを売買できるサービス)で制作代行を始めることにした。得意なのはAIを使ったWebアプリやLINEボットの開発。これを武器に、案件を取りに行こうと決めた。
返信の文面はClaudeと一緒に考えた。見積もりの言葉選びも、提案の構成も、全部AIと磨いた。
正直、悪くない仕上がりだと思っていた。
6件、全部消えた
それが6件、全部消えた。
失敗1|LINE友達紹介システム(見積もり8万円)
詳細な仕様書を送ってきた相手に、80,000円で見積もりを出した。相手が「仕様をもう一度整理してから」と一度止まった瞬間、私は自分から「50,000円で対応できます」と値を下げた。フォローの文面は「その後、いかがでしょうか」。そのまま消えた。
失敗2|Meta広告(Facebook・Instagram広告)の運用代理
「広告アカウントが全部止められている」という状態の相手に、丁寧なヒアリングを重ね、詳細な提案書を送った。フォローは「その後いかがでしょうか」。返事はなかった。
失敗3|ホームページのリニューアル
「多くの方からご提案をいただいています」と最初から書かれていた。比較選考だと分かっていた。それでも私は丁寧に質問へ答えた。それだけで終わった。選ばれなかった。
失敗4|AIを使ったHP量産サービス
相手から5つの確認質問が来た。全部に丁寧に答えた。「テスト制作も5,000円でやります」とまで書いた。後日「多数のご応募があり、今回は申し訳ありません」と返ってきた。
失敗5|LINE計測タグの埋め込み
「1,000円でお願いできますか?」と聞かれた。「承ります」とすぐ答えた。相場よりはるかに低い金額だった。でも断る理由を考えるより先に、受け入れていた。
失敗6|プラットフォーム開発
「Yahoo!知恵袋と有料noteを掛け合わせたようなサービスを作りたい」という案件。全体のロードマップと〇万円の見積もりを丁寧に組み上げて送った。相手が「複数の方に相談しています」と言ってきた。私は「金額は交渉できます。フェーズを絞る方法もあります」と返した。そのまま返事が来なくなった。
共通してやっていたこと
6件を並べてみて、気づいたことがある。
全部、AIで文面を磨いていた。丁寧だった。誠実だった。でも、それだけだった。
相手の質問に答えることに集中して、商談を動かすことを考えていなかった。
気づいた3つの構造
失敗を分類すると、3つのパターンが浮かんできた。
① 沈黙に、値下げで返した
相手が止まったとき、「値段が理由かもしれない」と思い込んで自分から下げた。でも値下げは、価値を自分で壊す行為だ。相手がまだ迷っているのに、こちらが先に「安売りします」と宣言することになる。
② 比較選考で、丁寧な回答だけをした
「多くの方に相談しています」と言われたとき、丁寧に答えることしかしなかった。でも丁寧さは、全員が持っている。差にならない。比較の土俵に乗るだけでは、埋もれるだけだった。
③ 相手の質問に答えることが、商談だと思っていた
全件を通じて、私は「受け身」だった。相手が動くのを待ち、動いたら答えて、また待つ。商談とは「相手の意思決定を助けること」だが、私はただ「対応」していただけだった。
変えた4つのこと
失敗を分析してから、対応の方針を変えた。
① 沈黙には「範囲縮め」で返す
値段を下げるのではなく、「まずここまでを初回フェーズにするのはどうですか」と範囲を絞って提案する。値下げは価値を壊すが、範囲縮めは相手の意思決定を助ける動きに見える。
② 比較案件には「小さな具体物」を一つ置く
丁寧な回答だけで終わらず、「この案件でいうと、最初の判断どころはここだと思います」と画面構成や工程の一部を具体的に示す。小さな具体物が一つあるだけで、「この人は他の人と違う」という印象になる。
③ 複雑案件は「できる」と「この条件で受ける」を分ける
大きな案件で「全部対応できます」と答えると、条件や責任の範囲が曖昧なまま話が進む。「技術的には実現可能です。ただし最初のフェーズはここまでに絞るのが安全です」という形で、できることと受け方を分けて示す。これにより「事故を避けて設計できる人」という印象になる。
④ フォローに「新論点一つ」を添える
「その後いかがでしょうか」は、相手に何も渡していない。代わりに「考えていたら気になる点が一つ出てきました」と、先回りした視点を一つ加える。「まだ考え続けてくれている人」という印象になる。
AIで磨いても、商談の構造は変わらない
6件の失敗を通じて分かったのは、AIで文面を磨くことと、商談を設計することは別の話だということだ。
AIは文面をきれいにしてくれる。でも「相手の沈黙にどう返すか」「比較選考の中でどう差をつけるか」という商談の構造は、自分が考えるしかない。
丁寧さは土台だ。でも武器ではない。
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