龍の背に葉が落ちた日

龍の背に葉が落ちた日

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午後の光が少し傾いたころ、龍は低い木々のそばに伏せて観えました。身体は白に近い青灰色で、背中の鱗には淡い金の光が細く触れています。風は強くありませんでしたが、枝先だけがゆっくり揺れていました。

そのとき、小さな葉が一枚、龍の背へ落ちました。赤でも金でもなく、まだ緑を少し残した薄い茶色の葉でした。鱗の間に引っかかるように留まりましたが、龍が気づいた様子は観えませんでした。

気づかれない変化もある

何かが触れたとき、すぐに反応が起きるとは限りません。龍は目を閉じたままで、呼吸の速さも変わりませんでした。葉が落ちたことを知っているのか、まったく気づいていないのか、その違いまでは観えませんでした。

私は「背中に小さな葉が留まっています」とだけお伝えしました。それが知らせであるとも、流れが変わる合図であるとも言い切れません。観えた場面に意味を足せば、静かな一枚の葉が、必要以上に大きな印へ変わってしまうからです。

日常にも、自分ではまだ気づいていない小さな変化があります。前ほど気にならなくなった言葉、少し短くなった迷い、自然に選ばなくなった習慣。変化はいつも、はっきりした決意の形で現れるわけではありません。

龍は振り払わなかった

しばらくして、龍が首をわずかに上げました。けれど、背の葉を振り落とすほどの動きではありませんでした。葉は鱗の上で向きを変え、先端だけが風に揺れました。

龍が受け入れているようにも見えましたが、そう断定できる感覚はありません。気にしていないだけかもしれませんし、そこに葉があること自体、龍にとっては特別ではないのかもしれません。動かさなかったという事実から、心の内側までは観えませんでした。

何かをすぐに取り除かないことと、それを望んでいることは同じではありません。決めずに置いている時間もあります。その時間を、賛成や拒否のどちらかへ急いで寄せないことが大切だと思います。

風が選んだ方向

やがて木々の間を、先ほどより少し冷たい風が通りました。葉は背中を滑り、二枚ほどの鱗を越えてから、また止まりました。落ちると思った瞬間もありましたが、龍の身体のくぼみに静かに収まりました。

風の向きが何を示すのかは観えませんでした。葉がどこへ向かうのかも、私には選べません。ただ、動いたあとに再び止まる様子を見ていると、変化には進む時間だけでなく、留まって馴染む時間もあるように感じられました。

私たちは動きが止まると、元へ戻ってしまったように思うことがあります。けれど、同じ場所に見えても、そこへ至るまでに通った時間は残っています。前とまったく同じなのかどうかは、急いで決めなくてもよいのかもしれません。

もちろん、現実の問題をただ待てばよいという意味ではありません。期限があることや、安全に関わることには、確かめて動く必要があります。その判断まで、一枚の葉が教えてくれたわけではありませんでした。

葉が離れたあとも

陽がさらに傾くと、龍がゆっくり身体を起こしました。その動きで葉は背を離れ、地面へ落ちました。龍は振り返らず、葉も追いかけるようには動きませんでした。

何かが終わったという強い感覚は観えませんでした。ただ、触れていたものが離れ、それぞれが別の場所にある。その静かな違いだけが残りました。

龍の背に葉が落ちた日は、気づかないまま始まる変化や、無理に名前を付けずに置いておく時間を考えた日でした。留まったことにも、離れたことにも、急いで理由を与えず、観えた距離のまま受け取っていたいと思います。

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