朝、出勤前に鞄を持ったまま動けなくなる日があります。
仕事が嫌なわけではない。むしろ好きなほうかもしれない。ただ、あの人がいる。
会議で自分の発言だけ流される。頼んだことが返ってこない。廊下ですれ違ったときの、あの一瞬の間。ひとつずつは小さくて、人に話すと「気にしすぎだよ」で終わる。けれど毎日積み重なって、いつのまにか休みの日まで、その人のことを考えている。
そして、いちばん苦しいのはここです。
自分が悪いのではないか、と思ってしまう。
もっと上手にやれる人もいるはずだ。うまくかわせない自分の問題ではないか。そう考え始めると、逃げ道がなくなります。
この記事では、そこに別の説明を置きます。
「相性が悪い」は、気分の話ではありません
相性という言葉は、日常ではとても曖昧に使われます。なんとなく合う、なんとなく苦手。感覚の話に聞こえます。
けれど東洋の命術では、相性は構造として扱われます。人にはそれぞれ、生まれつき強く働いている「本能」があって、その組み合わせによって、噛み合う場所と噛み合わない場所が決まっている、という考え方です。
これは善悪の話ではありません。あの人が悪いのでも、あなたがおかしいのでもない。噛み合わせの問題です。
歯車が回らないとき、私たちは歯車を責めません。歯の形が合っていないのだと考えます。人の関係も、そこまで冷静に見られるはずなのに、なぜか自分を責めるほうへ行ってしまう。
算命学では、人の働きを5つに分けます
算命学には十大主星という考え方があり、それは5つの本能に整理されます。
守備本能 自分の芯を守る力。決めたことを曲げない。一人で完結できる。
伝達本能 感じたことを外に出す力。表現する、話す、作る。伝わらないと苦しい。
引力本能 人を引き寄せ、面倒を見る力。頼られると応えてしまう。世話を焼く。
攻撃本能 前に出て動かす力。行動が先。ぐずぐずしているのが耐えられない。
習得本能 知りたい、学びたい、筋を通したい力。納得できないと動けない。
どれが良い悪いではありません。誰でも全部を持っていて、その中でどれが強く出ているかが人によって違う。それだけのことです。
噛み合わないときに、実際に起きていること
たとえば、こういう組み合わせがあります。
攻撃本能が強い上司と、習得本能が強い部下。
上司は「いいからまず動け」と言います。部下は「なぜそうするのかが分かってから動きたい」。上司には、部下が言い訳をしているように見える。部下には、上司が乱暴に見える。
どちらも間違っていません。動いてから考える人と、考えてから動く人が、同じ案件を前にしているだけです。けれど毎日これが続くと、上司は「あいつはやる気がない」と言い、部下は「私は評価されない」と思う。性質の違いが、人格の評価にすり替わっていく。これが職場で起きていることの、かなりの部分です。
もうひとつ。
引力本能が強い人と、守備本能が強い人。
引力の人は、よかれと思って世話を焼きます。守備の人は、自分の領域に入ってこられるのがつらい。引力の人は「こんなにしてあげているのに」と思い、守備の人は「放っておいてほしい」と思う。
これも、どちらも悪意がありません。善意が、そのまま摩擦になっている。義実家との関係で起きやすいのは、この型です。
「じゃあ、どうすればいいのか」の話
ここまで読んで、こう思われたかもしれません。
構造だと分かったところで、明日もあの人はいる。
その通りです。だから私は、鑑定で必ず三つに分けてお伝えしています。
離れる。距離を変える。このまま続ける。
多くの相談は、二択で止まっています。辞めるか、我慢するか。けれど現実には、離れられない相手が大半です。上司も、義母も、子ども経由の付き合いも、簡単には切れません。二択にすると、選べないところで動けなくなります。
三つ目があると、今日から動けます。関わる回数を減らす。返信の速度を変える。話す話題を限定する。関係を切らずに形を変えることは、実際にはいくらでもできます。
そしてもうひとつ、私が必ずお渡ししているものがあります。
期限です。
いつまでこの形で様子を見て、いつ決めるのか。ここが決まっていないと、人は同じところで一年でも二年でも止まります。「もう少し様子を見よう」は、何も決めていないのと同じです。
命術が扱えるのは、この「時期」です。誰かの気持ちを当てることはできませんが、動きやすい時期と、動かないほうがいい時期は読めます。
私について
保健師として7年、その後、大学で看護師を育てる仕事を10年してきました。
その頃、陰口を言われ、上司に怒られ、仕事を回してもらえなくなる経験をしました。その結果、うつ病で休職し、家から出られなくなりました。相談を受けるのが仕事だったのに、自分のことは誰にも話せませんでした。
休職しているあいだに、算命学を学びました。慰めが欲しかったわけではありません。なぜこうなったのかが知りたかった。
分かったのは、私は人の下で働くより、自分で考えて動くほうが向いている、という単純なことでした。相性の問題であって、私の努力が足りなかったわけでも、あの人たちが特別ひどかったわけでもない。そう腑に落ちたとき、初めて呼吸ができました。
あのとき私が欲しかったのは、慰めではなく説明でした。
最後に
もし今、誰かとの関係で止まっているなら、ひとつだけ試してみてください。
その人を評価するのをやめて、観察してみる。
あの人は、動いてから考える人か、考えてから動く人か。人と一緒にいたい人か、一人でいたい人か。それだけでも、見え方が変わることがあります。
あなたは悪くない、と私は思っています。それを気休めではなく、理屈で受け取ってほしいと思って書きました。
鑑定について
ご自身と相手の生年月日から、噛み合わない理由と、離れる・距離を変える・続けるの三つの見通し、そして判断の期日をお渡ししています。相手の生年月日が分からなくても鑑定できます。
算命学と数秘で人間関係、関わり方を鑑定します