旧1円銀貨がカウンターに置かれたとき、最初にどこを見ていますか。
図案から入る方が多いと思いますが、判断が速い順番は別にあります。
今回は手元の実物を撮影した4枚の写真を使い、写真から何をどの順で読むのかをそのままお見せします。
「菊紋の面。旭日と菊枝の彫りがどこまで残っているかを見ます。」
■ 写真1枚目で見ているのは「摩耗が均一かどうか」です
結論から申し上げます。図案の細部より先に、摩耗の均一さを見ます。
理由は、不均一な摩耗が別の情報を含んでいるからです。通常の流通摩耗であれば、高い部分から順に平均して削れます。中央の旭日、外周の菊枝、周りの点列。この3か所の減り方が揃っていれば、素直に流通した個体と考えられます。
一方、一部だけ妙にきれいだったり、逆に一点だけ潰れている場合は、研磨や打痕を疑います。磨いた個体は減点対象です。見た目が良くなっても、評価は下がります。
なお、この撮影では銀貨を立てるために透明の板を使っています。板の細かな擦り傷が一緒に写り込みますが、これは銀貨側の傷ではありません。撮影時の写り込みと本体の状態を分けて見る。これが写真査定の最初の一歩です。
「竜図の面。年号と図案の整合を確認します」
■ 2枚目は年号と鱗を同時に見ます
竜図の面では、2つを同時に確認します。年号と、竜の鱗です。
年号は価格を決めるためではなく、整合を取るために見ます。旧1円銀貨は発行年によって細部の仕様が分かれます。年号と図案の組み合わせが噛み合わない個体は、その時点で慎重に扱う必要があります。
鱗は状態の指標です。この写真では、胴の鱗が一枚ずつ分離して見えています。鱗が面になって潰れている個体とは、評価が変わります。
現場でよくあるのが、年号が読めないケースです。この場合は無理に読まず、図案側から年代の幅を絞ります。写真の解像度があれば、画面上でも可能な作業です。
「縁のギザ。右側に見えているのは透明板への映り込みで、別の個体ではありません」
■ 3枚目は情報量が多い。ただし映り込みを読み違えないこと。
この写真が今回の本題です。
旧1円銀貨は打刻でギザが入ります。本物であれば、溝は一本ずつ深さが揃い、立ち上がりが鋭くなります。摩耗しても、溝の底までは削れません。
対して、鋳造で作られた複製品はここが崩れます。角が丸くなり、間隔が不揃いになります。表面がきれいでも縁で分かる、という例は現場で何度もあります。
そして、この写真にはもう一つ要点があります。右側に、もう一つギザの列が写っています。これは別の個体ではありません。銀貨を立てるために使った透明板への映り込みです。
写真査定で意外に多いのが、この読み違えです。映り込んだ像は溝が浅く、間隔も歪んで写ります。それを実物として読むと、判断を誤ります。
送る側も、受け取る側も、まず「どこまでが実物か」を確認する必要があります。光源の角度をずらせば、映り込みは弱まります。
■ 写真で読めない唯一の項目が、重さです
ここまで3枚の写真で見てきましたが、量目(重さ)だけは画面から読めません。そして、これが最後の決め手になります。
「実測値は26.8グラム。規定値との差を確認します」
旧1円銀貨の規定量目は約26.96グラムです。品位は銀900・銅100とされています。流通摩耗で多少目減りしますが、極端には減りません。
手元の個体は26.8グラムでした。規定値からマイナス0.16グラム。摩耗として説明がつく範囲です。
見ているのは、規定値からの外れ方です。
- わずかに軽い:摩耗として説明がつく範囲
- 明らかに軽い、または重い:素材そのものを疑う
- 直径が規定内なのに重さだけ外れる:最も慎重に扱うケース
3点目が重要です。銀と、銀に似せた合金では比重が違います。同じ大きさに作っても、重さが揃いません。外観を似せることはできても、体積と重さの関係までは合わせにくいのです。
秤は0.1グラム単位で足ります。写真のものはごく一般的な卓上型です。26.8と27.5では意味が違う、というレベルの判断には十分な精度です。特別な機材は要りません。
■ 写真4枚から、こちらがお返ししているもの
この工程を経て、お送りしているのは次の内容です。
- 買取推奨価格(上限・下限のレンジ)
- 外観チェックで気になった箇所の指摘
- 複製品によく見られる特徴との照合結果
必要なのは、菊紋の面・竜図の面・縁の3カットだけです。秤の数値を添えていただければ、さらに幅が縮まります。判断に迷った1枚を、その場で抱え込まずに済みます。
【まとめ】
1. 図案より先に摩耗の均一さを見ると判断が速い
2. 縁のギザは有効だが、映り込みを実物と読み違えないこと
3. 写真で読めない量目は、規定値からの外れ方で見る
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