私たちは、つい「過去」と「未来」に心を奪われがちです。
「あのとき、こうしていればよかった」
「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」
そんなふうに、過去の後悔を何度も繰り返して思い出しては、自分を責めたり、落ち込んだりしてしまう。
あるいは、
「これからどうなるんだろう」
「うまくいかなかったらどうしよう」
と、まだ来ぬ未来に不安を重ねて、動けなくなってしまう。
けれど、「生きる」というのは、過去に戻ることでもなければ、未来を先取りすることでもありません。
ただ「今」を生きるということ。
それだけなのだと、最近思うようになりました。
もちろん、過去があったからこそ今があり、未来があるから希望を持てる。
それは否定できません。
でも、「今」をちゃんと見つめることなくして、どこに私たちの「人生」はあるのでしょう。
たとえば、空を見上げたとき。
風が通り過ぎる音を聞いたとき。
湯気の立つコーヒーの香りに、ふっと心がほどけるとき。
そんな一瞬の中に、「生きている」実感があります。
誰かと交わす笑顔。
あたたかな手のぬくもり。
さりげない「ありがとう」のひと言。
それらはすべて、過去にも未来にもない「今」だけの出来事です。
私たちの心は、思っている以上に忙しく、さまざまな時間軸を飛び回っています。
けれど、立ち止まって「今ここ」に意識を戻すと、少しだけ呼吸が深くなる。
肩の力が抜けて、心が穏やかになる。
そういう瞬間が、実は一番、私たちを癒してくれるのかもしれません。
「今を生きる」というのは、
何か特別なことをするという意味ではありません。
むしろ、その逆です。
ごくささやかなことに、きちんと気づくこと。
自分の気持ちに耳を澄ませること。
誰かの言葉を真正面から受け止めること。
それが、「今を見つめる」ということなのだと思います。
私たちは、過去の痛みにも、未来の不安にも、つい心を奪われてしまう。
でも、それらに振り回されすぎてしまうと、足元にある「今」の確かさを見失ってしまう。
「生きる」というのは、
「今」という時間のなかに、自分をそっと立たせること。
今日の空の色に、耳を澄ませてみませんか。
今日の自分の心に、静かに話しかけてみませんか。
人生は、いまここにしか、ありません。