定期的に入る売上って心理的にも大きいですよね。
治療院経営をしていると、
「来月は新規が何人来るだろう」
「今月と同じ売上を維持できるだろうか」
という不安はどうしても付きまといます。
特にひとり治療院や小規模院では、新患数や離脱者数が少し変わるだけでも売上への影響は小さくありません。
そんな中で魅力的に感じるのが「サブスク」です。
極端な例ですが、
月額10,000円の会員が100人いれば、毎月100万円の売上が見込める。
もちろん実際には退会もありますし経費もかかるので、単純に100万円が利益になるわけではありません。
それでも、
「毎月ゼロから売上を積み上げなくてもいい」
という状態は経営者にとって心理的にもかなり大きいですよね。
では実際に、治療院ではどんなサブスクが導入されているのでしょうか。
今回は国内の治療院の事例を中心に、
・どんなサービスが提供されているのか
・価格はいくらくらいなのか
・どんな決済方法が使われているのか
・どんなトラブルが起こりやすいのか
を調査しましたので解説していきます。
回数券とサブスクの違い
回数券は先にまとめ買い、サブスクは契約で定期収入、といった性質の違いもありますが、
現場視点言えば、
回数券=治療を完了させるための仕組み
サブスク=関係を継続するための仕組み
こういう風にも捉えられます。(コンセプトによりますが…)
回数券は終わるタイミングで一旦卒業するかの選択肢が生まれます。サブスクの方がより院のファン化の側面が強いと言えそうです。
最近はどんなサブスクがある?
今回調査した事例を整理すると、治療院のサブスクはざっくり大きく3つに分けられます。(例外もあります)
①月2〜4回などの回数型
②通い放題型
③会員価格で受ける型
です。
調べた中でも多かったのは、
「月○回まで施術を受けられる」回数制のサブスクでした。
自費の整体が基本で、鍼灸(美容鍼)付きのプランやメンテナンスプランなども用意されているところも。
さらに、使い切れなかった回数は1か月繰り越し可能で、長期間の契約縛りも設けていない、といったサービスもありました。
一方で、通い放題型を採用している院もあります。
全部は追えていませんが、通い放題型は施術時間は短い傾向にあるように感じました。
15分施術+物療機器
揉みほぐしやストレッチ10分
ヘッドスパや美容鍼15分
など
60分の長時間で通い放題というのはほとんど見受けられませんでした。
料金も数千円から10数万円まで、契約期間やメニューによって変わる様々でした。
通い放題プランでは事前に保有できる予約は2枠までなどの制限を設けているところが多いようです。
動画配信サービスでは一人が何回観ても問題ありませんが、治療院では患者さんが1回来院すれば、施術者の時間と予約枠が必ず消費されます。
そのため「月額○円で何回来てもOK」とすると、一部の利用頻度が高い患者さんによって予約枠が埋まり、利益が出なくなる可能性があります。
その意味でも治療院では単純な通い放題より、月2〜4回程度の回数制の方が管理しやすいと考えられます。
月額以外の「会員制」という方法もある
他にも興味深いのが、
「年会費+施術ごとの会員価格」
という形です。
とあるグループでは、年間30,000円の会費を払って会員になると、
・60分施術
8,800円 → 6,600円
・90分施術
13,200円 → 11,000円
といった会員価格で施術を受けられます。
これは一般的なサブスクとは少し違いますが、治療院とはかなり相性が良い仕組みだと思います。
月額制の場合、
「今月2回分あるから行かないともったいない」
という心理が患者さん側に生まれます。
それが来院動機になる一方で、体調が良い月や忙しい月には「払い損」と感じることもあります。
年会費+会員価格なら、患者さんは1年という長いスパンで必要な時に通院ができ、院側も会費という固定収入を確保できます。
そのため、
定期的に月2〜4回来院する患者さんが多い院
→ 回数制サブスク
患者さんによって来院頻度が大きく違う院
→ 会員費+都度払い
という使い分けも考えられます。
その他の事例をざっと紹介
・EMSや物理療法のみの定額メニュー併設
・系列のジムやサービスが使い放題になる特典
・施術+オンラインでの健康指導(次の施術までのケア)
・会員のみ特別価格で物販の購入可
・セルフケア商品の定期配送
などなど、他業界から持ってきたものを治療院に落とし込む工夫が見られますね。
個人的に思うことですが、会員にだけ教えるケア方法など、根幹となるサービスに差をつけるのはやめましょう。
自分が通う立場になった時、そんなところに行きたくないですよね。
価格の傾向|サブスクだからといって、大幅に安くする必要はない
サブスクというと、「安くしないと入ってもらえないのでは?」と思うかもしれません。
しかし今回の事例を見る限り、極端な安売りをしているわけではありません。
サブスク料金は通常料金より約10〜20%ほど安くなる設計がよく見られました。
つまり、
「通常から半額になるので入ってください」
ではなく、
継続して利用する患者さんに少しメリットがある
くらいの価格設計です。
あまりに安く提供するとモヤモヤしますよね。安くしすぎなくていいというのは、提供する側の心理としても大切だと思います。
たとえば通常料金が7,000円だったとして、
月2回
14,000円 → 12,600円
とすれば1回あたり6,300円。
約10%の優遇です。
ここに他の価値を組み合わせれば、価格だけに頼らない会員サービスにできます。(例は後述します)
逆に通常7,000円の施術を、
「サブスクなら1回3,000円!」
のようにしてしまえば、会員数は増えても利益が残らない可能性があります。
サブスクの目的は「安くしてたくさん来てもらうこと」ではありません。
忘れないで欲しいのが、
患者さんは通うために来ているのではなく、「健康になるため」「将来の不安をなくすため」の手段として治療院を使っているのです。
なので特典やサービスはその目的を叶えるためのもの、という認識を持っておきましょう。
売上を安定させながら、患者さんの目的を叶えつつ、院も継続しやすい状態をつくることを意識することが大切です。
決済方法|基本はクレジットカードの自動決済
今回調査した範囲ではクレジットカードによる自動決済を採用している院が多かったです。
来院時にわざわざ支払っていただくのではなく、「毎月◯日に自動決済」といった具合です。
サブスクを導入するのであれば、
「毎月患者さんに支払ってもらう」のではなく自動決済までセットで考えましょう。
毎月一定日に自動決済されるからこそ、
・入金管理がしやすい
・未収金を減らせる
・患者さんの支払い手間が減る
・来院日によって入金日が変わらない
というサブスクのメリットが出てきます。
本質|成功しやすいサブスクとは?
ここまでを見ると、
「サブスクを導入すればリピート率も上がりそう」
と思うかもしれません。
ただ、ここは少し注意が必要です。
現時点では「治療院サブスクの平均継続率は○%」と断定できるほどの統計的な公開データは確認できませんでした。
整骨院利用者調査では、継続の決め手として施術効果を挙げた人が60%を超えており、価格だけが継続理由ではないことも示されています。
つまり、
サブスクを導入し費用の負担を減らすから患者さんが継続するわけではありません。ここはかなり重要です。
順番としては、
「サブスクがあるから通い続ける」
ではなく、
「この院に継続して通いたい」
↓
「だったらサブスクの方が便利でお得」
この順番があるからこその成功です。現時点でのリピート率が低ければそこの改善が先なので、サブスクはその先の課題ということになります。
リピート率がある程度安定しているという前提で、成功しやすい形を考えてみましょう。
① 最初は「月2〜4回」程度にする
まずは管理しやすく双方のメリットが分かりやすい回数制が良さそうです。
たとえば、
通常料金:7,000円
月2回:12,600円(1,400円引き、10%OFF)
月4回:23,800円(4,200円引き、15%OFF)
追加施術:通常より10%OFFで受けられる
といった設計です。
これなら、
「会員が何人いれば、月に何枠必要になるのか」
をある程度予測できます。
一方で通い放題では、一人の患者さんが月2回来るのか、8回来るのか分からないので読みにくさが出てきます。
加えてひとり院では予約枠が埋まると当然体への負担も増えていきます。
② 少しだけ繰越できるようにする
月2回の契約でも、旅行や仕事、体調などで1回しか来られない月はあります。
そのたびに「今月1回分損した」と感じさせると、不満要因となり解約・離脱理由になります。
そこで、余った分は翌月まで繰越可能くらいの仕組みがあると使いやすくなります。
無期限にすると管理が複雑になりますし、繰越先の月の予約枠も圧迫するため現実的には1か月までくらいが運用しやすそうです。
③ 回数を超えたら「会員価格」で受けられる
月2回プランだからといって、
「今月はもう2回来たので次は来月です」では機会損失になります。
症状が悪化したり、イベントの前にもう一度身体を見てほしい、ということもよくありますよね。
そこで、
契約回数を超えた場合も会員価格で追加施術可能
にしておくと、患者さんにとっても使いやすく、院側としても追加売上につながります。
④ 値引き以外の価値をつける
個人的にはここが一番大切だと思います。
サブスクのメリットを、
「通常より安く施術を受けられます」
だけにしてしまうと価格競争になりますし、ブランディング的にもイマイチです。
それよりも、
・優先予約
・定期的な身体評価
・LINEで簡単な相談
・会員限定メニューやコミュニティの案内
・会員限定価格での商品購入
・家族利用
・新メニューの優先案内
・紹介特典の強化
など、
「会員だから受けられるサービス」を作った方が良いと思います。
あくまで目指したいのは「安いから会員になる」ではなく、「この院を継続して利用したいから会員になる」という状態です。
サブスクでよくあるトラブル
サブスクのトラブルで最も気をつけたいのが解約と決済です。
当然ながらサブスクは利用していなくても、解約しない限り支払いは続きます。
治療院での事例ではありませんが、解約したつもりでも月額課金が続いていたという消費者相談事例も公表されています。
ただし、
「患者さんは解約したと思っているのに、院側では決済が止まっていない」
という人的ミスによる問題は治療院でも十分起こり得ます。
特に危ないのが、
受付では「解約を承りました」と言ったのに、決済サービス側の停止処理を忘れているケースです。
これを防ぐには、
①解約受付
↓
②会員情報を変更
↓
③決済停止
↓
④残っている回数を確認
↓
⑤患者さんへ解約完了を通知
までを予め想定し、業務の流れとして決めておく必要があります。
「最低3か月」などの契約条件にも注意
もう一つ注意したいのが最低利用期間です。
実際に今回調査した中にも最低3か月の契約期間を設けている院がありました。
最低期間を設けること自体が問題なのではありません。
問題になるのは、患者さんがそれを十分理解していないことです。
たとえば、
「月額11,000円」
とだけ大きく表示し、
小さな文字で、
「最低3か月契約です」
と書くより、
月額11,000円 × 最低3か月
最低支払総額33,000円
と明示した方が分かりやすいですよね。
ほかにも、
・解約はいつまでに申し出るのか
・解約方法はLINEや電話なのか店頭なのか
・余った回数はどうなるのか
・休会できるのか
・途中解約でも返金できるのか
・自動更新なのか(更新前のお知らせはあるか)
などを最初から明確にしておく必要があります。
サブスクは、
「通いやすくする仕組み」
であって、
「解約しにくくして継続させる仕組み」
ではありません。
(最近某有料スポーツチャンネルが解約のしにくさで炎上していましたよね)
ここを間違えると一時的に売上は増えても、一番大切な患者さんからの信頼を失います。
通い放題は特にキャパシティに注意
通い放題を考えている場合はさらに慎重な設計が必要です。
たとえば月額10,000円で施術が何回でも受けられるとします。
月2回来る患者さんなら1回あたり5,000円。
月5回来れば1回2,000円。
10回来れば1回1,000円。
患者さんがたくさん来てくれるほど、売上が増えるのではなく予約枠だけがなくなっていく可能性があります。
そのため通い放題にするなら、
・1回あたりを短時間メニューにする
・週○回まで
・予約保有は2枠まで
・対象メニューを限定する
などの制限が必要です。
一方でよくある不満トラブルとして、サブスクの案内は院長がしたのに、契約後の施術はすべて新人や若手スタッフが行うというケース。
治療院側の若手に経験を積ませたい意図は否定しませんが、患者さんが誰を信頼して契約したかの寄り添いは必要だと思います。
導入後は「会員数」だけを見ない
もしサブスクを始めるなら、「会員が100人になった!」だけでは成功を判断できません。
最低限、
・月次解約率
・利用率
・満足度調査
・会員粗利
(月額売上 − 施術原価・決済手数料・会員特典など)
は見ておきたいところです。
特に最低契約期間を設定している場合、最低契約期間が終わったあとも患者さんが残っているかです。
サブスクは売上を安定させるための施策ですが、
利益が残らなかったり、患者さんが嫌々契約を継続していたりすれば意味がありません。
まとめ|サブスクは「施術の安売り」ではなく、継続患者さんの会員化
実際にサブスクを導入している治療院を調査した結果、「通い放題ばかりではない」ということです。
・月2〜4回の回数制
・余った分を少し繰越
・追加分は会員価格で受けられる
・クレジットカード自動決済
・会員限定の特典やメリット
といった、サブスクシステムをうまく治療院の現場に落とし込んでいる院が多く見られました。
患者さんが利用すればするほど施術者の時間を使います。
だからこそ、「月額にすれば売上が安定する」というところだけを見て導入すると危険です。
そしてもう一つ。
サブスクはリピート率を上げる魔法の施策ではありません。
患者さんが、
「ここに身体を任せたい」
「これからも定期的に見てもらいたい」
と思ってもらえるサービスが先にある。
その継続をもっと便利に、利用しやすくする仕組みとしてサブスクがある。
この順番が大切だと思います。
サブスクを、
「施術を安く定額で売る仕組み」
ではなく、
「継続患者さんを会員化し、院と患者さん双方が継続しやすくなる仕組み」
として考えると治療院でも導入しやすいのではないでしょうか。
サブスクはちょっとなぁという場合は、王道の回数券でも問題はないかと思います。