お単衣の季節がやってまいりました。
すでに4月も25度を超える気温の日もありました。温暖化が顕著です。
衣替えは、10月1日を目安に夏服から冬服へ、6月1日を目安に冬服から夏服へと替えますが、元々、中国から伝来の風習で宮中行事でもありました。
宮中行事としての衣替えは、部屋のしつらえから御簾、几帳、箪笥などの調度品まで全部を替えたので、そりゃあ、一大行事だったようです。
さて。とある掲示板で、「お単衣の夏紬を着ても良いか」という質問がありました。
色々と、誤解があるなぁ、と思うのです。
お単衣とは。
一枚の生地で仕立てられた着物のことです。余談ですが、洋服はほとんどの場合、お単衣仕立てです。袷はジャケットとか、割と値の張るワンピースなんかに見られる程度でしょうか。
今でこそ、市井の民草である私たちでさえ、袷の着物もお単衣の着物もあり、衣替えなどという風流に与れるほど裕福になりましたが、昔は、袷の着物はお姫様か豪商か御女郎さんのものでした。
有史以来、一般庶民は盛夏でも厳冬でもお単衣の着物を着ていたのです。そりゃ、そうだ2枚の生地を使って一枚の着物を作るなんてことが出来るのなら、その2枚を一枚ずつの着物にした方が、はるかにワードローブが充実するってものです。
年がら年中、麻のお単衣着て、冬は厚めの生地の紬――結城紬のような真綿紬が主流です。それでも寒いなら、何枚も重ね着するのです。
つまり、お単衣仕立ては、年中着ていいのです。昭和の時代なら、お正月にウールのアンサンブルを着ました。ウールは、お単衣仕立てです。
結城紬のような厚めの紬は、そもそもがお単衣用の反物です。今でこそ、当たり前に袷に仕立ててますが、きっと、結城紬は思ってますよ。
「余計なお世話だ」って。「おらぁ、一枚で十分温かいんだぜ」ってな。
ただ、結城紬のような厚めの紬は、袷にした方が滑りが良く、着やすい、っていうのはあるのかもしれません。
今の時期、単衣の夏紬って、ぴったりです。透け感のないものがいいです。一応、歳時記に則って、衣替え前ですので、透けるものは遠慮しておきましょう。ただ、あんまり蒸し暑いとか、気温が高いとかなら、平織の透け感のあるもので対応できるといいかなと思います。
お単衣の着物で例外は、無双の着物です。
無双とは、いわゆる、俺tueeeeeeee!のほうではなく、表も裏も同じ生地――この場合の同じ生地とは同じ役割を担う生地、つまり、表生地となる生地のことで、二枚を一枚として単衣仕立てにするのです。
絽、羅、紗、等の透ける生地のほかに、平織のスケスケ素材、最近は夏大島に穴穴の蘇州刺繍が全体にされているものに紗をかけた無双の着物を見ました。
なんと、まあ。洒落てはいるけれど、暑いな。うん。
(令和7年 5月)