– 思いを伝え合うことで形になるもの –
仕事帰り、ふと見上げた空がいつの間にか茜色に変わっていて、「あ、さっきまでと全然違う」と思うことがあります。
光の加減が少し変わるだけで、見慣れた景色が新しく見える。
デザインの修正も、どこかそれに似ています。ほんの少し色を整えたり、余白を広げたりするだけで、伝わり方が大きく変わるのです。
“直す”ではなく、“整える”
「修正」と聞くと、マイナスの印象を持つ方も多いかもしれません。
でも実際には、修正とは「やり直し」ではなく「整える」ための時間。
より伝わりやすく、より“その人らしく”なるための、大切なプロセスです。
たとえば、初めてご依頼いただいたお客様の中には、最初は「すみません、何度もお願いしてしまって」と遠慮される方もいます。
でも、私は修正のやり取りこそが、その方の想いや好みを知るチャンスだと思っています。
一度で完璧に伝わることの方が、むしろ稀なのです。
“思いを言葉にする”ということ
デザインのやり取りは、気持ちを言葉にする作業でもあります。
たとえば「もう少しやわらかい雰囲気に」や「温かみがほしい」といった言葉は、人によって感じ方が少しずつ違います。
でも、その“少しの違い”を確かめながら寄り添っていくことで、デザインはどんどんその人の形になっていきます。
先日、同僚と話していて「人の伝えたいことって、言葉の外にもあるよね」と言われたことがありました。
その言葉がずっと心に残っています。
修正のやり取りでも、実際に受け取っているのは“言葉の外にあるニュアンス”なのかもしれません。
「こう言いたかったのかな」と想像しながら、そこにもう一度光を当てていく。
それが、修正の本当の意味だと思うのです。
伝え合うことで、形になる
何度かやり取りを重ねていくうちに、「そうそう、これです!」という言葉をいただく瞬間があります。
そのとき感じるのは、達成感というよりも、静かな共有感のようなもの。
“ふたりで見つけた形”という実感があるのです。
デザインはひとりでは完成しません。
依頼する側の素直な想いと、デザイナーの客観的な目線が交わって初めて、“その人らしい形”にたどり着きます。
だからこそ、修正の時間はただの確認作業ではなく、
お互いの思いをすり合わせるための、静かな対話の時間だと思っています。
小さなやり取りが、納得の形を生む
修正を重ねるうちに、ふとした瞬間に“ぴたっ”とおさまる感覚があります。
その瞬間の心地よさは、どちらか一方の意見ではなく、
「伝えたい」と「受け取りたい」が重なった場所にだけ生まれるもの。
修正のやり取りは、時間をかけて関係を育てていくようなものです。
だからこそ、焦らず、素直に、安心してやり取りを重ねてほしい。
思いを交わしながら少しずつ形になっていくプロセスこそ、
デザインの一番美しい部分なのかもしれません。