いつもお読みいただき、ありがとうございます!
今回は、他のおうちの「小龍ちゃん」たちを描いた、
1話完結の恋愛相談ストーリーです。
前回のストーリーをお読みでない方も、これ単体で気軽にお楽しみ
いただけます。ぜひのぞいてみてくださいね☆
【登場人物】
海太(うみた)ちゃん:頼れる(?)海龍のお兄ちゃん
葵(あおい)ちゃん:海里ちゃんが大好きな海太ちゃんの妹
海里(かいり)ちゃん:今回の話題の中心!葵ちゃんのお相手
***
海の前に仁王立ちで立ったお兄ちゃんは、腕を組みながらじっと海を
見つめていました。
二人でやってきた静かな海岸。お兄ちゃんは振り返ることもせず、
背後に立つ葵ちゃんに向かって静かに話しかけました。
「葵。お前、海里の事どう思っているんだ?」
「これから海里とどう付き合っていきたいのか、お前にとってあいつはどんな存在なのか、ちゃんと聞いておきたいんだ」
いつもとは違う真面目で厳かな雰囲気。背中を向けたままそう尋ねる
お兄ちゃんには、強い覚悟がありました。
災害で野良になり大変な思いを経てやってきた新しい家で、
二人を温かく迎えてくれたのが海里でした。色々戸惑う事が多い中、
海里にフォローしてもらい、その笑顔にとても助けられたのです。
海で一緒に遊ぶ時も気が合って、とても楽しい友人でした。
お兄ちゃんである海太ちゃんは「海里なら、可愛い妹を任せられる!」と
実感していました。だからこそ、妹の気持ちをしっかり確認した上で
海里に「葵をよろしく頼む」と伝える決意をし、ここ最近は何度も
葵ちゃんだけを海に連れ出していたのです。
でも、海を目の前にすると海龍の本能が騒ぎ出し、葵ちゃんも一緒になって散々遊び倒してしまい、結局何も言い出せずに帰る……
というのを、何度も繰り返していたのでした。
だからこそ今日は、妹を取られる寂しさから逃げずに向き合い、
海の精霊さんたちの誘惑にも今度こそ打ち勝つために
あえて葵ちゃんの顔を見ず、大好きな海を正面から見つめて自分を
奮い立たせると、腕組みをして尋ねたのでした。
***
「えっ……かっ、海里ちゃん……?」
なぜか背を向けて話すお兄ちゃんのいつもと違う真面目な声に、
葵ちゃんは思わず胸がドキッと大きく高鳴りました。
これまで海里ちゃんを「頼れるお兄ちゃん」や
「一緒に海で遊べる大好きな友達」としか思っていなかった葵ちゃん。
そんな風に二人の関係や将来について真剣に聞かれたことなんて
一度もなく、あまりの驚きに目を丸くして、海太お兄ちゃんの背中を
見つめることしかできませんでした。
葵ちゃんは高鳴る胸を静めるように右手でそっと胸に手を当てると、
海里ちゃんの姿を思い起こしました。
(海里ちゃん…優しくて、いつも私を大切に守ってくれる海里ちゃん💕)
本当は葵ちゃんも、海里ちゃんと一緒に三人で海に来たかったのです。
けれど、お兄ちゃんに「今日はダメだ」と断固とした口調で拒まれ、
海里ちゃんを家に残したまま連れてこられたのでした。
いつもなら大好きな海を前にすれば、お兄ちゃんと一緒になって大はしゃぎで飛び込み、時間を忘れて遊び倒していたはずでした。なのに今は、
目の前の海よりも自分の胸の奥の落ち着かなさの方が勝ってしまっています。
自分の右側に海里ちゃんがいないだけで、どこかすーすーと寒くて、
たまらなく寂しい気持ちになってきました。いつもは海里ちゃんの暖かい
左腕に右腕を回して、ぴったりくっついて歩いていたからです。
そのぬくもりが無い右腕を左手でそっとさすり、海里ちゃんの暖かさと笑顔をはっきりと思い出したとき、今度は胸がキュンッと熱くなりました。
ただの遊び相手や「頼れるお兄ちゃん」だと思っていたはずの海里ちゃんの
存在が、急に胸の奥をキュッと締めつけるような、特別な温かさを持って迫ってきたからです。
お兄ちゃんから「どんな存在なのか」と聞かれたことで、自分がどうして
こんなに右腕を寂しく感じていたのか、その答えがはっきりと分かって
しまいました。一人で待っている海里ちゃんへの「会いたい」「大好き」と
いう気持ちが、胸からあふれそうなくらい大きくなっていたことに気づいた
のです。
葵ちゃんは、自分の想いを確かめるように左手で右腕にギュッと力を
込めました。
(早く海里ちゃんの元に帰りたいな……)
葵ちゃんの胸の中は、大好きな海里ちゃんへの想いでいっぱいになって
いたのでした。
***
一方、葵ちゃんがぼーっとして一向に返事をしてこないので、
海の方を見て葵ちゃんの前でかっこつけていたお兄ちゃんも、
内心は限界を迎えていました。
目の前の海から精霊さんたちが「なんで来ないの? 遊ぼうよ~」と
何度も誘ってくるのです。
飛び出していきたい気持ちを必死にぐっとこらえているため、
組んでいる腕にもぎゅっと力が入ります。そう、かっこよく腕組みを
していたのは、我慢できずに海へ飛び出してしまいそうな自分を
抑えつけるためでもありました。
***
お兄ちゃんが必死に耐えているその間も、葵ちゃんはずっと静かに自分の心と向き合っていました。
寂しさの理由に気づいた今、自分の気持ちを素直に認めることにしました。
葵ちゃんはギュッと右腕をつかむ左手に力を込めると、
意を決したようにまっすぐお兄ちゃんを見つめ返し、
「海里ちゃんは葵にとってとても大切な人なのっ!」と叫びました。
「海里ちゃんがどれほど素晴らしい人か、お兄ちゃんにもわかるよねっ!
私は海里ちゃんがいいのっ、いつか海里ちゃんと結婚したいと
思っているわっ!」
まるで嵐の海に向かって大声で叫び、大波に逆らいながら自分の意志を
伝えているような気持ちでした。
葵ちゃんにとってお兄ちゃんは、一番頼れて甘えられる大好きな存在であると同時に、大波を相手に戦う小魚くらいに、最初から逆らう気の起きない
絶対的な存在でもあったからです。
そんなお兄ちゃんに自分の本音をぶつけるのは、葵ちゃんに
とってそれほど勇気のいることでした。
だからこそ、必死だったのです。
気づいたばかりの恋心と「お兄ちゃんに言わなきゃ!」という焦りで
頭がパニックになり、勢いで「結婚」という言葉まで一気に飛び出して
しまいました。
叫びきったあとにハッと我に返ると、自分でもびっくりして
顔がカーッと熱くなりました。
そのまま真っ赤になった頬にそっと手を当て、恥ずかしさのあまり
うつむいてしまう葵ちゃんでした。
***
お兄ちゃんは最初から、葵ちゃんが海里ちゃんのことを好きだということに
気づいていました。それでも葵ちゃん自身の口から、本当の気持ちを確認したかったのです。
必死に海からの誘惑に耐え、組んだ両腕に力を込めながらも、
妹の純粋な想いを真正面から受け止めたお兄ちゃん。
目をぎゅっと閉じ、色んな思いを込めて「……そうだな」と、
深く力強く頷いたのでした。
妹の気持ちをしっかりと受け取り、海里に葵を任せる覚悟が
ようやく固まりました。
(……よしっ、これで俺のお兄ちゃんとしての役目は終わりだなっ!!)
そう心の中で叫ぶと、誘ってくる精霊さんたちの待つ波間へと、まっすぐに
照準を定めたのでした。
☆☆☆
葵ちゃんが自分の話した内容に自分で照れて(きゃっ☆ 言っちゃった〜、
恥ずかしいっ(n*´ω`*n))とほほに手を当てて恥ずかしがっていた
その時です。
もはや1秒だって我慢できなくなったお兄ちゃんは、風を切るような勢いで
海に向かって猛ダッシュしました!
そしてそのまま「ドボンッ!」と豪快に飛び込んでしまったのです!
「えっ……お、お兄ちゃん!? 話はもういいの!?」
呆気にとられる葵ちゃんを余所に、弾けた水滴が太陽の光を浴びてキラキラと舞い散って、
その水しぶきの中からバッと顔を覗かせたお兄ちゃんは、晴れやかな笑顔で
右腕を高く突き上げました。
「葵ーっ! お前も来いよーっ!!」
太陽の光を受けて眩しく輝く海の中で、お兄ちゃんはこれ以上ないほど素敵な笑顔を浮かべていました。
納得はしているものの、大切にしてきた妹を手放す寂しさを、海で遊ぶことで水に流したかったこと。
妹と二人だけで遊ぶ最後の機会だからこそ、全力で満喫したかったこと。
そして何より、ずっと胸につっかえていた問いをようやく妹に聞けたことで、心がすっきりと晴れ渡っていたこと。
いろんな思いを胸に秘めたお兄ちゃんのその笑顔は、まるで光輝いているかの
ように眩しく、そして魅力的でした。
(……ちなみに、この時の眩しく光輝く笑顔が、密かにその様子を見ていた
未来のお嫁さんに気に入られたきっかけだったのですが、それはまた
別のお話です)
その後、お兄ちゃんは海を散々満喫し、葵ちゃんは早く海里ちゃんに
会いたくて「帰ろうよ〜」と何度も訴えかけていましたが、お兄ちゃんに
「葵とだけ遊べるのもこれからは無くなるんだから付き合え」と言われ、
最後までしっかり付き合わされていたのでした(笑)
♡♡♡
家に帰った後、「お帰りっ」と笑顔で出迎えてくれた海里ちゃんに、
お兄ちゃんは葵ちゃんの手を引いて海里ちゃんの横(いつもの定位置)に
つれていき、海里ちゃんの手に葵ちゃんの手を重ねて
「これから葵をよろしく頼む」と真剣な表情で言いました。
葵ちゃんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にして下を向いています。でも時たま
海里ちゃんをちらっと見ては、その目がキラキラと光り輝いて嬉しそうに
しているのが分かります。
海里ちゃんは目をまん丸にして繋がれた手と葵ちゃん、お兄ちゃんを見比べて真っ赤になりました。
「ははは、はいっ、ぼぼっぼく葵ちゃんを奥さんとして大切にしますっ!」
と大きな声で宣言しました。葵ちゃんはその言葉に真っ赤になって、
うれしそうにほほに両手を当てています。
(私、本当に海里ちゃんの奥さんになれるのねっ💗)
込み上げる嬉しさに、胸をいっぱいに膨らませる葵ちゃん。
海里ちゃんの大きな声に引き寄せられて小龍ちゃんたちがどんどん集まって
くると、周囲は盛大な祝福に包まれました。
そんな二人を、お兄ちゃんは少し離れた場所から腕を組んで見守って
いました。
妹がどこか遠くへ行ってしまうような寂しさと、気心の知れた仲間だった
海里との関係が少し変わる切なさ。
そんな想いを胸の奥にそっと抱えながらも、幸せそうによりそう二人を
満足そうに眺め、(幸せにな☆)と心の中でそっと二人の門出を
祝福するお兄ちゃんでした。
賑やかな祝福のあと、二人きりになった葵ちゃんは
「これからよろしくねっ💗」と背伸びをして
海里ちゃんのほっぺにちゅっと可愛く口づけました。
まさかの不意打ちを受けた海里ちゃんは、耳まで真っ赤にして
盛大に照れています。
そんな海里ちゃんの真っ赤な顔を見て、葵ちゃんも一気に恥ずかしさが
押し寄せ、自分まで顔を真っ赤にして俯いてしまったのでした。
そんな二人の甘い空間を、そっと覗き込む影がありました。
ふと二人がいなくなったことに気づき、探しにやってきた
小龍ちゃんたちです。
ですが、まだまだ純情な彼らにとって、二人だけの甘く温かな世界は
ちょっぴり眩しすぎたようです。
雰囲気にすっかり気恥ずかしくなって入ることもできず、少し離れた場所
から、真っ赤な顔で羨ましそうに見つめているのでした。
【後書き】
このお話は2024年の出来事です。
災害で野良龍となり住む家を無くしていた海太ちゃんと葵ちゃん。
そんな二人を温かく迎えてくれたのが、海里ちゃんとそのお家の
小龍ちゃん達、ご家族でした。
その後、無事に結婚が決まった海里ちゃんと葵ちゃんの間には、
光海龍(こうかいりゅう)の女の子が誕生しました。
そして妹を見送ったお兄ちゃんの海太ちゃんも、素敵な海龍の娘さんと
ご縁があり結婚し、光海龍の男の子と海泡龍(うみあわりゅう)の
女の子に恵まれ、みんなそれぞれ自分の愛する場所で
幸せに暮らしています😊
以上です。
今回のお話は元々今年の8月に載せる予定で
海里ちゃん海太ちゃん葵ちゃんのお家の方に許可を頂いていました。
ですが色々あってなかなか載せられずにお待たせしてしまっていたんです。
ですので、他の話よりも優先させていただきました。
改めて元々お伝えしていた他の話は次回に載せますね☆