仕事で辛い経験をした人にこそ、キャリアコンサルタントを学んでほしい
うまくいかなかった仕事、職場の人間関係、この先のキャリアへの迷い。程度の差はあっても、誰もが何かしらのモヤモヤを抱えながら働いてきたのではないでしょうか。
私は、そうした経験をしてきた人にこそ、キャリアコンサルタントの学びに触れてほしいと強く思っています。この資格は、相談業務に就くためだけのものではありません。理論を学び、ロールプレイを経験し、仲間と対話する。その過程で、自分自身の人生の見え方も変わっていくからです。
私は人事として、採用やキャリア支援、人材育成に携わってきました。そして、キャリアコンサルタントの資格取得に向けて、学習や実技演習にも取り組みました。その経験から、資格を取ることだけでなく、学んでいる時間そのものに価値があり、人生の財産になると感じています。
「資格を取ることに、どんな意味があるのだろう」。そう迷っている方に向けて、この記事で私なりの考えをお伝えできればと思います。
第1章 なぜ、キャリアコンサルティングの理論を学ぶと過去の自分の捉え方が変わるのか
キャリア理論は、試験に出る知識を覚えるためだけのものではない
キャリアコンサルタントの学習では、さまざまな理論家の考え方を学びます。
シュロスバーグ、ギンズバーグ、エリクソン、ホランド、スーパー、シャイン……カタカナの名前ばかりで非常に覚えにくい。
試験のために覚える知識であることは確かです。ただ同時に、理論を過去の経験とつなげて理解していくことで、自分の人生や経験を考えるための「新しい視点」にもなります。
過去の仕事の失敗や人間関係の悩みも、理論という別の角度から見つめ直すことができるかもしれません。大切なのは、理論を正解として自分に当てはめることではありません。自分の経験を考えるための、新しい物差しを手に入れることです。
サニー・ハンセンの「統合的生涯設計(ILP)」に惹かれた理由
私が関心を持った理論の一つが、サニー・ハンセンの統合的生涯設計(ILP)です。仕事だけを切り離してキャリアを考えるのではなく、家庭や人間関係、社会とのつながりなど、人生のさまざまな役割を統合的に捉えようとする考え方です。
日本では、人生を構成する要素として「労働・学習・余暇・愛」の4つが紹介されることがよくあります。その全体像をキルト(パッチワーク)にたとえる説明もあります。仕事の布だけでは、人生のキルトは完成しない。そう考えると、仕事での辛い経験が、人生全体の中でどんな位置にあったのかを見直すきっかけになります。
この理論に触れると、次のような問いが自然と浮かんできます。
• あのとき、仕事以外の大切なもの(家族、学び、休息など)はどうなっていただろう
• 自分の仕事を、人生全体の中で見たときに、他の大切なものとどう組み合わせていくことが自分自身にとっての幸せなのだろうか
さらに、書籍『キャリア開発と統合的ライフプランニング』などを読み進めると、理論の背景や広がりが見えてきます。一つの理論を深く読み込んでいくのは、知的な楽しさがあります。
辛かった経験にも、新しい意味を見いだせるようになる
過去の出来事そのものは変えられません。辛かったことは、辛かったままです。ただ、その経験をどう意味づけるかは、学びや対話を通じて変わる可能性があります。
当時は失敗としか思えなかった経験の中に、自分が大切にしていた価値観が見えてくることもあります。こうして自分の経験の語り(ナラティブ)を捉え直せることが、この学びの大きな価値の一つです。ただし、辛い経験を無理に肯定する必要はありません。少し違う角度から眺めてみる。それで十分だと思います。
資格取得後も続く、理論を自分の思考の武器にしていく楽しさ
資格取得は、学びの終わりではありません。興味を持った理論をさらに深掘りし、書籍を読み、日々の経験と照らし合わせながら、自分なりの理解を育てていく。理論が、自分の思考の道具になっていく感覚があります。資格はゴールというより、学び続けるきっかけです。
第2章 ロールプレイ演習で知った「沈黙の本当の意味」と「語ることで見える本音」
キャリアコンサルタント役で気づいた、沈黙を待つことの大切さ
実技演習では、キャリアコンサルタント役と相談者役の両方を経験します。キャリアコンサルタント役をしていると、「次に何を聞けばいいのか」と考え続けてしまいます。そんなときに沈黙が生まれると、焦りや不安を感じやすくなります。
しかし、その沈黙は、相談者にとって気持ちを整理し、言葉を探すための大切な時間であることが多いです。沈黙を埋めようとせずに待つことで、それまで表に出ていなかった思いが語られることが本当によくあります。聴くとは、質問を重ねたり、解決策を示したりすることだけではない。ロールプレイを通じて、そのことを実感しました。
沈黙の先に、相談者の本音が見えてくる
相談者が最初に話す悩みと、その奥にある本当の気持ちは、必ずしも同じではありません。表面的な問題をすぐに解決しようとするより、相手が自分の言葉で語る時間を大切にする。キャリアコンサルタントの役割は、答えを急いで与えることではなく、相手が自分の気持ちや考えに気づくプロセスを支えることでもあるのだと思います。
相談者役を経験して気づいた、自分でも知らなかった本当の気持ち
一方、相談者役として話す経験からも、大きな学びがありました。
たとえば、育休復帰をしてしんどかったころの話を相談者役として話したとき。最初は「時間がない」「仕事と子育ての両立が大変」と話していましたが、話を続けるうちに、当時の自分は、心の底では「子どもに申し訳ない」という気持ちだったと気づく。ロールプレイでは、こうしたことが起こり得ます。
最初から本音が明確になっているとは限りません。人に話すことで、初めて自分の感情に気づくことがある。相談者役として語ることも、自己理解を深める貴重な経験でした。
人に話を聴いてもらうことで、自分の気持ちを発見できる
相談は、具体的な解決策を得るためだけのものではありません。話しているうちに、自分でも整理できていなかった感情や価値観に気づくことがあります。キャリアコンサルタントの学びは、聴く技術を学ぶと同時に、「聴いてもらう」ことの価値を身をもって知ることでもあります。
第3章 資格は「肩書」ではなく「大切な人との関わり方」を変える武器になる
キャリアコンサルティングのスキルは、相談業務以外でも活かせる
資格を取った後にキャリアコンサルタントとして活動するかどうかにかかわらず、学んだ姿勢や技術は、日常のさまざまな場面で活きます。
部下や後輩、同僚との関わり方が変わる
人事や管理職に限らず、職場で人と関わるすべての人にとって、相手の話を聴き、考えを尊重する姿勢は役に立ちます。すぐにアドバイスをしたり、自分の経験を当てはめたりする前に、相手が何を考え、何に悩んでいるのかを理解しようとする。この小さな違いが、関係性を変えていきます。
相手を変えようとするのではなく、相手が自分で考える時間、空間を与える
「相手の問題を自分が解決しなければ」という考えから、「相手自身が考え、選ぶプロセスを支える」という姿勢へ。この変化は、家族や友人との関わりにも応用できます。もちろん、資格を取れば誰でも他者の問題を解決できるわけではありません。ただ、相手を信じて待つ姿勢は、身近な人との関係を穏やかにしてくれると感じています。
自分自身との向き合い方も変わっていく
他者の話を聴くことを学ぶと、自分の感情や考え方にも目が向くようになります。他人の価値観と自分の価値観を区別し、自分の人生を自分で考える。その大切さに、あらためて気づかされます。
第4章 大変だからこそ面白い。共に学ぶ「受験生仲間」という一生の財産
資格取得の勉強は、決して楽な道のりではない。だからこそ。
正直にお伝えすると、キャリアコンサルタントの学習は楽ではありません。理論の理解、試験対策、実技演習、ロールプレイ、フィードバック。どれも時間と労力が必要です。簡単に取れる資格だと言うつもりはありません。
自分とは異なる人生や価値観に触れられる
だからこそ、同じ目標に向かう仲間の存在は大きな支えになります。年齢も職業も、これまでの経験も、資格を目指す理由も、人それぞれ。異なる人生を歩んできた人たちと出会い、話を聴き合える環境は、日常ではなかなか得られません。私が受講したときには、年齢は20代から60代までいましたし、例えば私と同じ子育て中の母親や、なんと5人育て切ったお母さんもいました。さらに、役職定年を控えた男性など、本当に様々な経歴を持った人たちの集まりでした。
ロールプレイや対話を通じて、お互いの人生を語り合う
実技演習では、相談者役やキャリアコンサルタント役を交代しながら、お互いの経験や考え方に触れます。試験対策という枠を超えて、人の人生や価値観を考え、自分自身も語る。その時間は、とても貴重でした。
資格取得の結果だけでは測れない、仲間と学ぶ時間の価値
合格はもちろん大切です。(専門実践教育訓練給付金を受給したい場合は1発合格しないと帰ってこない分もありますからね!)
けれど、同じ目標に向かって学び、励まし合い、互いの成長を支えた経験もまた、大きな財産になります。資格を取った後も、つながりは続いていきますし、さらにある程度の規模の資格取得の学校であれば、授業や試験が終わった後にも様々なコミュニティ、イベントの案内が受けられる場合が多いです。
まとめ キャリアコンサルタントの学びは、あなた自身の人生を豊かにする
資格を取ることだけが、学びのゴールではない
この記事でお伝えしたかったのは、次の3つです。
1. 理論を学ぶことで、自分の過去や経験を新しい視点から捉え直せる
2. ロールプレイを通じて、他者の本音に触れることと、自分の気持ちに気づくことの両方を経験できる
3. 学んだ姿勢は周囲の人との関わりに活き、共に学んだ仲間との出会いも財産になる
資格の先にある仕事や活動だけでなく、学びの過程そのものに価値があります。
これまでの辛い経験も、これからの学びにつながるかもしれない
辛い経験があることは、資格取得の条件ではありません。ただ、自分の経験や悩みを振り返り、人の話を聴き、さまざまな理論に触れることは、これまでの人生を捉え直すきっかけになるかもしれません。これまでの経験を、無理に肯定する必要はありません。少し違う視点から、自分の人生を眺めてみる。そんな学びです。
まずは、自分の人生を見つめ直す学びを始めてみませんか?
興味を持っていただいたら、まずは、キャリアコンサルタントという資格や、その背景にある理論・考え方に少し触れてみてください。「資格を取るかどうか」を考えること自体が、自分のこれからを考える時間になるはずです。
現在キャリコン面接対策を実施しています。ご興味をお持ちいただいた方は、ご検討ください。
最後までお読みいただきありがとうございました!