読書ノート015 アナタはなぜチェックリストを使わないのか

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コラム

1 本書を手にとった動機

 「今さらチェックリスト?」と思ってしまうくらい、シンプルでよく知られたツールです。しかし考えてみれば、あまり積極的には使ってこなかったなと思います。そんなチェックリストの有効性や作るコツについて書かれているのが「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?~重大な局面で"正しい決断"をする方法」(アトゥール・ガワンデ)です。私もいろんな決断をもう少しシステマティックにできないかなと思い、本書を読んでみることにしました。

2 得られた気付き

 本書では、様々な分野でのチェックリストの有効性を示す事例が示されています。医療、爆撃機のパイロット、高層ビル建築、災害対応、投資・・・

 なぜチェックリストが必要なのかというと、「複雑すぎる」ことがポイントとなります。そもそも失敗の原因は2つだけだ、といいます。「無知」と「無能」です。近年、科学の発達により、「無知」と「無能」のバランスが変わってきており、「無能」が重要な問題となってきています。「無能」とは、知識はあるのにそれを正しく活用できていないということです。確かに現代は情報にあふれており、インターネットを使えばかなりの知識にアクセスすることは可能です。その分、複雑となった知識を、必要なときに正しく使うということが難しくなってきています。

 例えば医療現場のように、病気、症状、処置の種類も膨大で、患者の個人差まである複雑な現場では、その複雑な問題に対処するのに脳のリソースをフル活用するので、単純な手順を間違いなく行うということにまでリソースを割くのが難しいのです。だから単純な行為を間違えないことはチェックリストに任せて、複雑な問題への対処に頭をフル活用するのです。

 チェックリストってシンプルですが、本当に有効なものを作るのは結構難しいものです。シンプルで明確なものでなければ使えません。(この辺は、前記事の「Simple Rules」にも通ずるところがあります。)マニュアルではないので、細かい手順を網羅するのではなく、重要なポイントに絞る必要があります。あまりに詳細なチェックリストは、読むだけでも時間がかかって日常使いに向きません。何を書いて何を書かないか、この選別が非常に重要で、試行錯誤がいるところなのです。ですが、そうやってできたチェックリストを使うことで、病院での研究では、深刻な合併症の発生率が36%も下がったという結果も出ています。

3 TO DO

 医療などのような複雑な現場でのチェックリスト活用事例が紹介されていましたが、個人レベルではそこまで複雑な問題を扱うことは、まずないかなと思います。

 とはいえ、日常でもチェックリスト化すると良さそうな場面は十分あると思います。例えば私は、毎日To Doリストのようなものを作っていますし、家を出る時のチェックリスト(照明OFF、エアコンOFF、窓の戸締まり等)を部屋の壁に貼っています。

 些細なうっかりミスした経験は誰だってありますよね。「忘れないようにしよう」と思ってもたいてい対策にはならないものです。それに、脳のエネルギーだって有限なので、そういうことを覚えておくのに使ってしまうよりも、チェックリストにでもしてしまって、もっと生産的なことに脳を使うほうが得だと思います。「ミスを無くすため」だけではなくて「脳のリソースをもっと重要なことに使うため」にチェックリストを使うというわけです。

 日常でよくあるのは、「やろうと思っていたけど忘れた」「買おうと思っていたのに忘れた」ということなので、思いついたらすぐメモ、という癖をつけていこうかなと思いました。

 あとは投資判断ですかね。一般的に投資判断は感情に左右されて間違ってしまうことも多いので、どうなったら買う、売るというのを自分なりのルールにしてしまうのも有効かと思います。冷静なうちに、そういうチェックリストを作っておくのです。
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