SNSを運用していると、どうしても投稿直後の数字が気になります。
「いいねが少ない」
「クリックされない」
「今日も売れなかった」
そんな数字を見て、
「この投稿、意味なかったのかな」
と思ったことはありませんか?
僕もSNSを仕事で見るとき、数字そのものはかなり重要だと思っています。
ただ、2026年9月に公開されたSNSマーケティング関連の調査やプラットフォームの動きを追っていると、少し違う見方も必要になってきたと感じます。
投稿を見た日に買わなくても、後日必要になったときに思い出して買う。
AIで商品を知ったあと、SNSで口コミを探してから判断する。
SNSで商品を検索し、そのままSNS内で購入する。
つまり今のSNSは、
「投稿 → 即購入」だけで評価する媒体ではなくなっている
ということです。
今回は最新ニュースや調査をもとに、これからSNSマーケティングをどう考えればいいのか整理してみます。
◆69.6%が「今はいらない」と思った商品を後日購入
まず面白かったのが、SNSマーケティング支援を行うTaTapの調査です。
全国20〜49歳の男女435人を対象にした調査では、SNSで商品情報を見かける人のうち69.6%が、見た時点では「今すぐ必要ではない」と感じた商品を、後日必要な場面になったときに思い出して購入した経験があると回答しています。
内訳を見ると、
「何度もある」12.5%
「数回ある」36.3%
「1回はある」20.8%。
かなりの人が、
SNSで知る
↓
その場では買わない
↓
しばらく経つ
↓
必要になる
↓
思い出して買う
という行動を経験しているわけです。
これはSNS運用を考えるうえで、かなり重要だと思います。
たとえば旅行用のスーツケース。
SNSで見かけた日は旅行の予定がない。
だから買わない。
3か月後に旅行が決まった。
そのとき、
「あ、前にInstagramで見たやつ良さそうだったな」
と思い出す。
SNSマーケティングでは、こうした時間差のある購買が起きます。
だから投稿直後の売上だけを見て、
「売れなかった=投稿失敗」
と判断するのは少し早いんです。
※これはTaTapによる独自調査なので、SNS利用者全体に69.6%をそのまま当てはめることはできません。それでも「後日思い出して買う」という行動を見る材料としては興味深い結果です。
◆SNSの役割は「売る」より先に「思い出してもらう」
ここでSNSの見方を少し変えてみます。
企業側からすると、
投稿
↓
リンク
↓
購入
という流れを作りたくなります。
もちろん、それも重要です。
ただ、お客様が商品を必要とするタイミングと、企業が投稿したタイミングが毎回一致するわけではありません。
たとえば、
美容クリニック
不動産
転職
Web制作
コンサル
引っ越し
プレゼント
こうしたサービスは、
SNSで見た瞬間に必ず必要になるものではないですよね。
だからこそSNSでは、
必要になった瞬間に思い出してもらえるか
が大切になります。
「この悩みなら、あの人」
「この商品なら、あのブランド」
と頭の中に残っている。
ここまで作れれば、投稿した日の売上が0でも、その投稿が将来の購入につながる可能性があります。
◆AIにおすすめされても「口コミがない」と57%が迷う
もう一つ、かなり面白い調査がありました。
メンバーズが全国16歳〜60歳以上の男女10,180人を対象に実施した「SNS利用実態調査2026」です。
生成AIから商品をおすすめされたあと、
49%が検索エンジンで詳しく調べる
29%がSNSで一般ユーザーの口コミや使用感を確認する
と回答しています。
反対に、
「AIの情報だけで十分なので、そのまま購入する」は16%
でした。
さらに驚いたのがこちらです。
AIからおすすめされた商品でも、SNS上に一般ユーザーの口コミが見当たらなかった場合、**57%が「購入をためらう・見送る可能性が高い」**と回答しています。
AI時代になったらSNSの重要性が下がるどころか、
AIで知った商品の“裏取り”をする場所としてSNSが使われる
可能性があるわけです。
これはSNSマーケティングにかなり大きな変化だと思います。
◆企業が「うちの商品は良いです」と言うだけでは足りない
昔から広告では、
「この商品はおすすめです」
と企業自身が伝えてきました。
ただ今は、
企業公式サイト
AI
広告
インフルエンサー
一般ユーザー
いろいろなところから情報が入ります。
その中でお客様は、
「実際に使った人はどう言ってる?」
をかなり気にしています。
先ほどのメンバーズ調査でも、SNSで新商品やブランドを認知するきっかけ、購入を後押しする情報の双方で、一般ユーザーの投稿・口コミが4割超で最多だったと報告されています。
ここから考えると、
公式アカウントを毎日更新することだけがSNSマーケティングではありません。
購入者が
「使ってみた」
「ここが良かった」
「こんな人に合いそう」
と投稿したくなる商品や体験を作ること。
口コミが発生したら見つけやすい状態にすること。
必要に応じて紹介すること。
UGCまで含めてSNSマーケティングを考える必要がある
ということです。
◆Z世代は「買い物を調べる入口」がSNSになり始めている
若い世代では、さらに分かりやすい変化があります。
TaTapが15〜29歳の男女363人を対象に行った調査では、商品・サービスを調べるときに最初に使う媒体について、
検索エンジンが33.6%。
一方で、
Instagram
TikTok
X
YouTube
のSNS4媒体を合計すると**45.2%**でした。
もちろん、これは363人を対象にした企業調査です。
「Z世代全員がGoogleを使わなくなった」という意味ではありません。
それでも、
商品を調べる=Google検索
だけではなくなっていることは分かります。
Instagramで店名を調べる。
TikTokで商品レビューを見る。
Xで評判を検索する。
YouTubeで詳しいレビューを見る。
こうした使い方は、かなり身近になっていますよね。
◆買うきっかけの1位は「一般ユーザーの口コミ」
同じZ世代調査では、SNSをきっかけに商品を購入した経験がある人へ、何が購入のきっかけになったかも聞いています。
最も多かったのは、
一般ユーザーの口コミ・レビュー投稿 42.9%。
その次が、
インフルエンサーの通常投稿39.6%
インフルエンサーのPR投稿37.3%
でした。
ブランド公式アカウントの投稿は24.4%、SNS広告は14.3%です。
ここも興味深いですよね。
企業が自分で
「この商品おすすめです」
と言うより、
実際に使った人が
「これ良かった」
と言っている方が、購入のきっかけになっているケースが多かったわけです。
◆「#PRだから見ない」とは限らない
インフルエンサーマーケティングについても面白い数字があります。
同調査では、
「#PRが付いている投稿は参考にしない」と答えた人は13.2%。
一方で、内容や投稿者によって判断する人や、PR投稿でも参考にする人などを合わせると、68.3%が#PR付き投稿でも参考にすると回答しています。
つまり問題は、
「PRだからダメ」
ではなく、
誰が、どんな内容で紹介しているか
になってきています。
フォロワー100万人だから依頼する。
ではなく、
その人が普段どんな発信をしているか。
その商品を紹介しても不自然ではないか。
実際に使った感想が具体的か。
こうした部分の方が重要になりそうです。
◆保存やいいねは「あとで買う」のサインかもしれない
Z世代調査でもう一つ注目したいのが、
56.9%が、SNSで保存・いいねした商品を後日購入した経験がある
という結果です。
SNS運用では、
保存数
をただのエンゲージメントとして見ることがあります。
ただ、この調査を見ると
「今は買わないけど気になる」
という待機状態を表している場合もありそうです。
特に
ファッション
コスメ
飲食店
旅行
家具
ガジェット
のように、比較したり、買うタイミングを待ったりする商品では
保存される投稿
を意識する意味があります。
たとえば、
価格
サイズ
使い方
購入場所
比較
おすすめの使用場面
など。
後で見返したくなる情報を入れる。
「いいねを取る投稿」と
「保存しておきたい投稿」
は、少し違います。
◆TikTokは「見つける場所」から「そのまま買う場所」へ
プラットフォーム側も変わっています。
TikTok Shopは、東京ガールズコレクションとのコラボ企画を発表。
2026年9月19日のTGC 2026 A/Wでは、ファッション・ビューティーの計36ブランドが参加し、ショート動画、LIVE、ハッシュタグ企画、リアルイベントなどとTikTok Shopをつなぐ施策が行われています。
TikTok公式は、この取り組みを
「発見」から「購入」までをつなぐ
ものとして説明しています。
これはSNSマーケティング的にかなり分かりやすい変化です。
以前は、
SNSで知る
↓
プロフィールへ行く
↓
ECサイトへ移動
↓
購入する
という形でした。
TikTok Shopなら
SNSで知る
↓
そのまま商品を見る
↓
購入する
までアプリ内で完結できます。
つまりSNSは、
集客媒体と販売場所の境界が薄くなっている
んです。
◆「リンクを踏ませる」以外の設計も必要になる
TikTok Shopのような仕組みが広がると、
SNSマーケティングも
「プロフィールのリンクをクリックさせよう」
だけではなくなります。
SNS内で
商品を発見する。
口コミを見る。
LIVEで質問する。
購入する。
場合によっては購入後のレビューまでSNS内で完結する。
今後は、
SNSからどこへ送るか
だけではなく、
SNS内でどこまで購買体験を完結させるか
も考える必要がありそうです。
◆Metaは投稿・分析・顧客対応までAI化を進めている
運用する側にも変化があります。
Metaは9月16日、日本で新しいサブスクリプション「Meta One」を発表しました。
ビジネス・クリエイター向けプランでは、
最大30日先までのストーリーズ予約投稿
オーガニック投稿やリールへのリンク追加
分析データのエクスポート
詳細なオーディエンスインサイト
などが提供されます。
さらに、24時間の顧客対応を支援するMeta Business Agentや、今後提供予定のEdits Plusでは、Instagramのインサイトを使ってコンテンツ分析やアイデア出しを行うAIアシスタントも予定されています。
ここまで来ると、
AIで投稿文を作る
だけではありません。
投稿する
分析する
次の企画を考える
問い合わせに対応する
ところまでAIが入ってきています。
SNS運用担当者の仕事も、
「毎日文章を書く」
から
AIを使いながら、何を発信するか判断する
方向へ変わっていきそうです。
◆Xでは「オリジナルコンテンツ」がより明確なテーマに
Xでも変化があります。
従来のCreator Revenue Sharingは9月7日で収益発生が終了し、9月8日から既存参加者向けにOriginal Content Rewards Programへの申請アクセスが順次展開されています。
X公式は新制度について、
投稿者自身の
声
専門知識
アイデア
視点
創造性
が反映されたオリジナルコンテンツを評価すると説明しています。
これはあくまで収益化制度の話なので、
「オリジナル投稿なら必ず伸びる」
という意味ではありません。
それでも、SNSマーケティングを考えるうえで参考になります。
他人の伸びた投稿を少し変える。
ネットの記事を要約する。
AIに大量に文章を書かせる。
それだけではなく、
自分だから出せる情報
が重要になっています。
お客様から実際に聞かれたこと。
自社のデータ。
失敗談。
商品の作り方。
現場で起きたこと。
この辺りは、今後さらに価値が上がりそうです。
◆結局、SNSは何のためにやるのか
ここまで最新ニュースを見てきました。
僕が一番感じたのは、
SNSマーケティングを
「フォロワーを増やす活動」
として見るだけでは足りないということです。
今のSNSには、
商品を知ってもらう役割があります。
口コミを探してもらう役割があります。
必要になったときに思い出してもらう役割があります。
購入前の不安を減らす役割もあります。
プラットフォームによっては、そのまま購入する場所にもなっています。
だから、
「いいねが何件だった?」
だけで評価するのは少しもったいない。
見る数字も、目的によって変える必要があります。
◆僕なら投稿を3つの役割に分けて考える
毎日すべてを売る必要はありません。
僕なら、
知ってもらう投稿
と
覚えてもらう投稿
と
買う前の不安を減らす投稿
を分けます。
たとえば美容クリニックなら、
施術名を知ってもらう投稿。
「こんな悩みのときに選択肢になる」と覚えてもらう投稿。
料金、ダウンタイム、施術の流れなど購入前の疑問に答える投稿。
役割が違います。
一つの投稿に全部詰め込まなくていいんです。
むしろ
「今日は何のための投稿?」
を決めた方が作りやすくなります。
◆投稿直後に売れなくても「失敗」と決めない
今回の調査で特に印象に残ったのは、やはり
69.6%が後日必要になったときにSNSで見た商品を思い出して購入した経験がある
という数字です。
SNS運用をしていると、
今日の投稿
今日のクリック
今日の売上
を見たくなります。
もちろん確認は必要です。
ただ、
SNSの効果が出るのは
今日とは限りません。
3日後かもしれない。
1か月後かもしれない。
半年後、必要になった瞬間かもしれない。
だから
「今売れない」
だけではなく
「必要になったときに思い出してもらえる発信になっているか」
という視点も持っておきたいです。
◆AI時代ほど「口コミ」と「人間らしい発信」が重要になる
AIが商品をおすすめする。
AIが投稿を作る。
AIが分析する。
SNSマーケティングにもAIがどんどん入ってきます。
その一方で、
AIにおすすめされてもSNSに口コミがなければ購入をためらう人が多い。
購入のきっかけでは一般ユーザーの口コミが強い。
Xではオリジナルな視点を持つコンテンツが収益化制度の軸になった。
こうして並べると、面白いですよね。
AIが進化するほど、
「実際の人はどう感じた?」
という情報の価値も上がっているように見えます。
SNSマーケティングでこれから重要になるのは、
AIを避けることではありません。
AIで効率化できるところは使う。
そのうえで、
企業・お客様・発信者にしか出せない情報を残す。
ここだと思います。
◆最後に
これからSNSマーケティングを始める人に
「毎日投稿しましょう」
だけを伝えるのは、少し違う気がします。
何のために投稿するのか。
誰に覚えてほしいのか。
何を確認してもらいたいのか。
購入するとき、どんな不安が残るのか。
そこまで考えた方が、SNSの役割はかなり分かりやすくなります。
最新ニュースを見ても、
SNSはもう
「投稿してフォロワーを増やす場所」
だけではありません。
発見される。
検索される。
信用を確認される。
思い出される。
そして買われる。
そのすべてに関わる場所になっています。
だから次の投稿を作るときは、
「これで今日売れるかな?」
だけではなく、
「必要になったとき、僕たちを思い出してもらえるかな?」
という視点でも、一度考えてみてください。