街の片隅に事務所を構える行政書士、高橋(仮名)。開業して5年目、ようやく仕事も軌道に乗ってきた…と言いたいところだが、現実は甘くない。
午前中のデスクワークは、鳴らない電話との戦いだ。新規の依頼だろうか、それとも問い合わせだろうか。いや、そもそも事務所の存在を知ってもらえているのだろうか。そんな不安が、じわりと胃のあたりを重くする。
やっと昼食にありつき、コンビニのサンドイッチを頬張っていると、今度はけたたましく電話が鳴った。
「先生!例の件、どうなってるんですか!?期限、明日ですよね!?」
建設業許可の更新を依頼されている、少し気の短い社長からだった。もちろん、期限は把握しているし、書類も準備万端だ。しかし、電話口の焦りように、こちらも胃がキリッと痛む。
「はい、社長。ご安心ください。書類は全て整っておりますので、本日午後に提出いたします。」
丁寧に対応し、電話を切る。安堵のため息をつく間もなく、別のクライアントからの着信。今度は相続手続きの件だ。
「あの…やっぱり遺産分割協議書の内容、変更できませんかね…兄が納得しないみたいで…」
一度は合意したはずの内容。振り出しに戻るのか…? 高橋は、こめかみを抑えながら、再び胃に手を当てた。鳴らない電話も、鳴りすぎる電話も、どちらも行政書士の胃には優しくない。今日も一日、この痛みと付き合っていくしかないのだろうか。
(第2話へ続く)