2026年度版
西洋占星術というと、「太陽が牡羊座だから行動的」「月が蟹座だから感情が豊か」といった、星座による性格判断を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、西洋占星術には長い歴史があり、現在一般的に知られている占星術とは異なる考え方や技法が数多く残されています。
私が鑑定に用いているのは、古代から中世、ルネサンスから近世初期へと受け継がれてきた伝統的な西洋占星術を基礎とする「古典占星術」です。
古典占星術では、単に「どの星座にどの惑星があるか」だけで判断するのではありません。
惑星が本来の力をどの程度発揮できる状態にあるのか、どのハウスに位置しているのか、どのハウスを支配しているのか、他の惑星とどのような関係を結んでいるのかなど、一つひとつを確認しながら出生図全体を読み解いていきます。
古典占星術と現代の西洋占星術
現在広く使われている西洋占星術は、19世紀末から20世紀以降、心理学や人間の内面的な成長などの考え方を取り入れながら発展してきました。
一方、古典占星術では、惑星にはそれぞれ固有の性質があり、置かれている星座やハウスなどによって、その力を発揮しやすい場合と、発揮しにくい場合があると考えます。
「牡羊座だからこういう人」「金星が7ハウスだから結婚運がよい」といった一つの配置だけで判断するのではなく、複数の条件を組み合わせて考えていきます。
同じ星座に同じ惑星を持っている人であっても、その惑星の状態や支配するハウス、他の惑星との関係が違えば、その現れ方も変わってきます。
私は、この違いを丁寧に見ていくことが古典占星術の大きな特徴の一つだと考えています。
惑星の「強さ」と「弱さ」を見る
古典占星術の大きな特徴に、「ディグニティ」と「デビリティ」という考え方があります。
惑星が、その惑星らしい力を発揮しやすい状態をディグニティ、反対に力を発揮することに難しさを伴いやすい状態をデビリティとして考えます。
その判断には、ドミサイル、エグザルテーション、トリプリシティ、ターム、フェイスなどの「エッセンシャル・ディグニティ」を用います。
さらに、惑星がどのハウスにあるのか、太陽との位置関係、順行・逆行、動きの速さなどから「アクシデンタル・ディグニティ/デビリティ」も確認します。
ここでいう「強い星」「弱い星」は、単純に「良い星」「悪い星」という意味ではありません。
強い惑星は、その惑星が象徴する事柄をはっきり表しやすく、弱さを持つ惑星は、その力を表現するために工夫や経験を必要とすることがあります。
私の鑑定では、強さだけでなく弱さについても、その人を形作っている大切な一部分として考えています。
ハウスと支配星
古典占星術では、ハウスも非常に重要です。
第1ハウスは本人、第2ハウスは財産、第3ハウスは兄弟姉妹や身近な環境、第4ハウスは家庭や父母、第7ハウスは結婚や対人関係、第10ハウスは仕事や社会的な立場など、それぞれのハウスには人生の具体的な領域が割り当てられています。
さらに重要なのが「そのハウスをどの惑星が支配しているか」です。
たとえば仕事について考える場合も、第10ハウスだけを見るのではなく、その支配星がどこにあり、どの程度の力を持ち、どの惑星と関係しているのかを確認します。
こうして人生のさまざまな領域が、出生図の中でどのようにつながっているのかを見ていきます。
アスペクトとレシーブ
惑星同士が作る角度を「アスペクト」といいます。
コンジャンクション、セクスタイル、スクエア、トライン、オポジションなどがありますが、古典占星術では、単に「トラインだから良い」「スクエアだから悪い」とは判断しません。
どの惑星とどの惑星が関係しているのか、それぞれの惑星にどの程度の力があるのかなどを合わせて考えます。
さらに私の鑑定では「レシーブ」も確認します。
これは、一方の惑星がもう一方の惑星をどのように受け入れているのかを見る古典占星術特有の考え方です。
同じアスペクトであっても、レシーブの有無によって惑星同士の関係の現れ方が異なることがあります。
このように、角度だけではなく「惑星同士がどのような関係を結んでいるのか」まで考えていきます。
トリプリシティ・ターム・フェイス
古典占星術では、一つの星座をさらに細かく考えるために、トリプリシティ、ターム、フェイスなどの区分を使用します。
トリプリシティでは、火・地・風・水という四元素に属する星座に、それぞれ昼と夜の支配星が定められています。
出生が昼なのか夜なのかによって支配星が変わり、その支配星の状態を調べることで、出生図をさらに詳しく考察します。
タームは一つの星座を複数の区間に分け、それぞれを特定の惑星が支配するという考え方です。
フェイス(デカン)は、一つの星座を10度ずつ三つに分けて支配星を割り当てます。
こうした細かな区分まで確認することで、「同じ星座に生まれた人」であっても、それぞれの違いをより細かく見ていくことができます。
惑星のJOY
古典占星術には「JOY」と呼ばれる考え方もあります。
これは、特定の惑星が特定のハウスに位置すると、その惑星が持つ性質を比較的表現しやすいと考える伝統的な配置です。
たとえば太陽は第9ハウス、月は第3ハウス、水星は第1ハウス、金星は第5ハウス、火星は第6ハウス、木星は第11ハウス、土星は第12ハウスにJOYを持ちます。
私の鑑定でも、このような古典占星術独特の配置を、他の条件と組み合わせながら判断しています。
パート・オブ・フォーチュン
パート・オブ・フォーチュン(PoF)は、太陽・月・ASCの位置から算出される感受点です。
「幸運のポイント」とだけ説明されることがありますが、古典占星術では、単純に「ここに幸運がある」という意味だけで判断するものではありません。
身体的・物質的な状況、財や生活上の境遇などとも関係する重要な感受点として、その位置する星座やハウス、支配星の状態などを確認します。
私の鑑定でも、PoFだけを単独で判断するのではなく、出生図全体との関係から読み解いています。
恒星について
古典占星術では、惑星だけでなく、古くから知られてきた恒星を判断に用いることがあります。
占星術では「固定星(Fixed Stars)」とも呼ばれ、スピカ、レグルス、アルゴル、アンタレスなどが代表的な恒星です。
ただし、恒星が近くにあるというだけで、その意味を強く採用するわけではありません。
私の鑑定では、特に惑星やASC、MCなどとの非常に近いコンジャンクションを重視し、出生図のほかの状態と合わせて考えます。
恒星についても、一つの配置だけで吉凶を決めるのではなく、出生図全体の中でどのような意味を持つのかを見ることが大切だと考えています。
ドラゴン・ヘッド/ドラゴン・テイル
ドラゴン・ヘッド(ノース・ノード)とドラゴン・テイル(サウス・ノード)についても、私の鑑定では確認しています。
古典占星術では、基本的にドラゴン・ヘッドには増大・拡大、ドラゴン・テイルには減少・縮小という性質があると考え、その近くにある惑星や関係するハウスなどから判断していきます。
現代占星術では、ドラゴン・ヘッドとドラゴン・テイルを「今世の課題」「過去世」などと結びつける解釈も見られますが、これは古典占星術本来の考え方とは分けて考える必要があります。
私の鑑定では、まず古典占星術としての意味を基本に判断します。
そのうえで、ドラゴン・ヘッド/ドラゴン・テイルが出生図の中で重要な意味を持っている場合には、私自身が長く学んできた『バガヴァッド・ギーター』の教えも参考にしながら、人生についての考察を加えることがあります。
『バガヴァッド・ギーター』では、行為とその結果への執着、自分に与えられた役割をどのように生きるのか、といった人間の生き方について深い問いが語られています。
こうした考え方を、「執着と手放し」「何を求め、何を手放していくのか」「自分に与えられた人生をどのように生きるのか」という視点から、ノードが示す象意と重ねて考察することがあります。
これは古典占星術の伝統的な技法そのものではありません。
あくまでも古典占星術による判断を土台として、その人が自分自身や人生について考えるために、私自身が鑑定の中に取り入れている考察です。
一つの配置だけではなく、出生図全体を見る
ここまでいくつかの技法をご紹介しましたが、私が古典占星術で最も大切にしているのは、一つの配置だけで人を判断しないことです。
人には強いところもあれば、弱いところもあります。
積極的な部分と慎重な部分、他人との関係を求める部分と一人で考えたい部分など、一見すると矛盾する性質を同時に持っていることも珍しくありません。
出生図にも、そのようなさまざまな性質が表れています。
そのため私は、惑星のディグニティ/デビリティ、ハウス、支配関係、アスペクト、レシーブ、トリプリシティ、ターム、フェイス、JOY、PoF、固定星、ドラゴン・ヘッド/テイルなどを必要に応じて組み合わせ、一人の人間として出生図全体を読み解いています。
古典占星術は、「あなたはこういう人です」と一言で人を分類するためのものではないと私は考えています。
むしろ出生図を詳しく見ていくことで、「自分には、こういう強さがあったのか」「自分が苦手としてきたことには、こういう背景があったのか」「一見矛盾していると思っていた自分の性質にも意味があったのか」と、自分自身を違った角度から見つめるきっかけになることがあります。
私は占星術によって、未来や人生を決めつけることはしたくありません。
まず自分自身を知ること。
自分の強さも弱さも知ったうえで、これからの人生を自分自身で考え、選んでいくこと。
古典占星術による出生図の鑑定が、そのための一つの材料になればと考えています。