居酒屋夜話|返しとらん鍵

居酒屋夜話|返しとらん鍵

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占い

カウンターの上の鍵


その人が鞄から出したとは、
銀色の鍵が一本やった。

キーホルダーも付いとらん。
裸のまんまの鍵たい。

ビールのグラスの横に置いて、
しばらく黙って見とった。

鍵の先が店の灯りで少し光っとった。

その晩は客が少のうて、
焼き台の音ばっかりしよった。

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まだ返してないんです


四十手前の女の人やった。

二杯目の途中で、
鍵ば指でつついて言うた。

元彼の部屋の鍵、
まだ返してないんです。

別れて二年になるらしか。

鍵ももう替わっとるかもしれん。

それでも返しとらん。

鍵は毎日、鞄の内ポケットに
入っとるそうな。

財布より先に、
それがあるか確かめて
家ば出るらしか。

おいは、そうね、とだけ言うて
焼き鳥ば返した。

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返す方法


聞いてもおらんとに、
その人は返し方ば並べはじめた。

郵便受けに入れる。
共通の友達に預ける。
封筒で送る。

送る時の宛名の書き方まで、
スマホで調べてあった。

どれも、やろうと思えば
今夜でもできることばかりたい。

その人も、それは分かっとった。
分かっとって、二年たっとる。

ばってん、どの方法にも
同じもんが一つ付いてくる。

返したら、向こうに分かる。

それで終わりやと、
向こうにも自分にも分かる。

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最後の用事


鍵ば返さん理由は、
その人が自分で言うた。

好きだからじゃないと思うんです。
返したら、もう連絡する理由が
なくなるから。

おいは黙ってうなずいた。

あの鍵は部屋の鍵やなか。

二人の間に一個だけ残っとる、
済んどらん用事たい。

用事が残っとる間は、
終わったことにはならん。

だけん、返せんとたい。

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日ば決めてください


その人は、おいが暦ば読むとば
どこかで聞いとったらしか。

返すのに、いい日を
決めてもらえませんか。

おいは少し考えてから断った。

鍵ば返すとに、
暦はいらん。

返すと決めた晩がその日たい。

決めとらんうちに日だけ渡しても、
その日が来たら、
また次の日ば探すことになる。

その人は笑って、
ずるいですね、と言うた。

ずるかとは、おいも分かっとる。

ばってん、日ば渡したら、
その人はその日まで
鍵ば持っとってよか理由ば
もう一個もらうことになる。

それはしとうなかった。

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一回だけ


その晩、鍵は鞄に戻った。

それから一回だけ店に来た。

ハイボールば一杯だけ飲んで、
仕事の愚痴ば言うて帰った。

鍵の話はせんかった。
おいも聞かんかった。

あの用事は、
おいの店で済ますもんやなかけん。

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いつ連絡すればよかですか


鑑定でも、よう似た相談が来る。

別れた相手に、
いつ連絡すればよかですか。

話ば聞いとると、
連絡したか用事があるとやのうて、
用事ば残しときたかだけのことがある。

連絡する理由ば、
日取りに探してもらいたかとたい。

そういう時、おいは日ば出す前に
一つだけ聞く。

それは、始める用事か。
済ませる用事か。

済ませるだけなら、
鍵一本ば封筒に入れて出すとと同じたい。
暦はいらん。

暦が要るとは、
何かば始める時と、
段取りが何日にも分かれる時たい。

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今夜の一杯


あんたの引き出しにも、
返しとらんもんがあるかもしれん。

鍵やのうてもよか。
借りたままの本でも、
止まったままの返事でもよか。

それが残しとる用事なら、
返す日ば占いで探さんでよか。

段取りの要る用事なら、
そん時は暦ば開けばよか🌙

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この店の鑑定について


おいは九星気学と暦で、
動く日と方角ば読む暦師たい。

恋の相談ひとつば、日取りまで考えたか人へ。
相手の気持ちば当てる鑑定やなか。


恋も仕事も、ひと月全体の日取りば見たか人へ。


半年先まで、暮らしの流れば考えたか人へ。


済ませる用事か、始める用事か、そこから聞くけん。

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