居酒屋夜話|暖簾の前で三分

居酒屋夜話|暖簾の前で三分

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占い

暖簾の前の影


うちの暖簾は、
外から中が見えんごとしてある。

丈ば長うして、
下に隙間ば作っとらん。

だけん入るかどうかは、
暖簾の前で決めるしかなか。

中からは、
入口のガラス越しに影だけ見える。

立ち止まる影もある。
通り過ぎる影もある。

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暖簾の丈


今の店ば開ける時、
暖簾の丈でだいぶ迷うた。

短か暖簾なら、
外から中の様子が半分見える。

客が入っとるか、
空いとるか、
どんな大将が立っとるか。

見えた方が、人は入りやすか。

商売だけ考えたら、
短かほうがよかに決まっとる。

ばってん、中が見えると、
人は空き具合で店ば選ぶ。

混んどるけんやめとこう。
空いとるけん入ろう。

それは席の都合で決めとるだけで、
自分で決めたことにはならん。

おいは、長か方にした。

入るかどうかは、
中の様子やのうて、
自分の足で決めてほしかったけん。

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三分


先週の終わりやった。

スーツの影が、
暖簾の前で止まった。

一歩寄って、また半歩下がる。

鞄ば持ち替える。

時計ば見る。

おいは串ば返す手ば止めて、
その影ば見とった。

三分ぐらいやったと思う。

外に出て、
どうぞ、と言うこともできた。

言わんかった。

暖簾は、
中から上げるもんやなかけん。

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一人でも大丈夫ですか


入ってきたとは、
二十代の終わりくらいの男やった。

目が少し赤かった。

カウンターの端に座って、
最初に出てきた言葉が、これたい。

ここ、一人でも大丈夫ですか。

おいは、
一人しかおらんばい、と返した。

ほんとは奥に常連が二人おった。

ばってん、
あの聞き方は席の数の話やなか。

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聞かれとること


席が空いとるかどうかなら、
見れば分かる。

分かっとって聞くとは、
別のことば聞いとるとたい。

一人で来て、
ここに居てよかですか。

たぶん、そういう聞き方やった。

だけん、席の数では答えんかった。

一人しかおらん、というとは、
あんた一人で来てよか、
という返事のつもりやった。

男はビールば一杯飲んで、
つまみば半分残して帰った。

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また来ていいですか


会計の時に、
男がもう一つ聞いてきた。

また来ていいですか。

暖簾は毎日出しとる、と答えた。

それから二回来とる。

二回とも、
暖簾の前で三分立っとった。

一回目と同じ場所で止まって、
同じように鞄ば持ち替えて、
同じように時計ば見る。

三分が縮まったわけでもなか。

ばってん、
三回目も立って、入ってきた。

おいはそれで十分やと思うとる。

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いつ動けばよかですか


鑑定でも、同じことがある。

よう聞かれるとは、
いつ動けばよかですか、たい。

文字だけ読めば、日取りの質問たい。

ばってん、話ば聞いとると、
たいていはこういう聞き方になっとる。

動いても、よかですか。

そういう人に日付だけ渡しても、
たいてい動かん。

紙ばもろうて、
そのまま引き出しにしまうだけたい。

日ば出す前に、
おいはまずそこに答える。

暦で日ば出すとは、
よか日ば当てるためだけやなか。

ここからならよか、
という返事の形ばしとるとたい。

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今夜の一杯


あんたが最近、
誰かに聞いたことば思い出してみんね。

聞いた文字の奥に、
ほんとは別の質問が
隠れとらんかったか。

もしあったら、
そっちに答えてくれる人の前で
三分立ってみるのもよか。

暖簾の前で迷うとは、
恥ずかしかことやなか🌙

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この店の鑑定について


おいは九星気学と暦で、
動く日と方角ば読む暦師たい。

恋の相談ひとつば、日取りまで考えたか人へ。
相手の気持ちば当てる鑑定やなか。


恋も仕事も、ひと月全体の日取りば見たか人へ。


半年先まで、暮らしの流れば考えたか人へ。


暖簾は、毎日出しとるけんな。

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