居酒屋夜話|数字は覚えとらん

居酒屋夜話|数字は覚えとらん

記事
占い

帳簿の端


うちの帳簿は、今どき手書きたい。

大学ノートに、
日付と、売上と、仕入れば書く。

それだけなら
どこの店もやっとることばってん、

おいは数字の横の余白に、
短う書き足す癖がある。

木曜、二杯。
生一杯、傘忘れ。
折箱、追加一つ。

名前は書かん。

書いたら、
それはもう別の物になるけん。

所作だけ書く。

───────

昔の帳簿


こういう書き方ば
最初からしよったわけやなか。

前の店ば潰した話は、前に書いた。

離婚して、店も回らんごとなって、
最後は自己破産した。

その頃の帳簿が、まだ手元にある。

開くと、きれいなもんたい。

日付。
売上。
仕入れ。
差引。

一行の乱れもなか。

余白には何も書いとらん。

毎晩、閉店後にきちんとつけとった。

おいはあの頃、
自分は真面目にやっとると思うとった。

───────

あの人、最近来んですね


潰れる一年ぐらい前の話たい。

ある晩、客の一人に言われた。

大将、あの人、最近来んですね。

誰のことか、
すぐには分からんかった。

聞き返して、やっと顔が浮かんだ。

ほとんど毎晩来よった男やった。

いつから来とらんとか、
おいは答えられんかった。

一週間か。
一ヶ月か。

あとで帳簿ばめくって、
なんとか見当ばつけた。

三ヶ月来とらんかった。

三ヶ月、気づいとらんかった。

───────

めくっても、おらん


その晩、閉めたあとに
帳簿ば最初からめくった。

あの男が何ば頼みよったか、
思い出そうとしたけんたい。

めくっても、おらんかった。

そこにあるとは、
日付と、金額と、差引だけ。

三ヶ月前のどこかで
あの男の分が消えとるはずやばってん、

数字は毎日きれいに並んどって、
どこで欠けたか分からん。

売上は少しずつ落ちとった。

おいはそれば
景気のせいやと思うとった。

景気のせいにしとる間に、
一人ずつ、
静かに来んごとなっとった。

味が落ちたわけでもなか。
場所も変わっとらん。

ただ、
誰が来とったか分からん店やった。

───────

数字は覚えとらん


潰れる店には共通点がある、
と言う人がおる。

味やとか、立地やとか、値段やとか。

おいは全部違うと思うとる。

うまいのに潰れる店ば何軒も見た。

たいして美味うもなかとに
四十年続いとる店も知っとる。

分かれ目は、たぶん一つだけたい。

帳簿の余白に何か書いてあるか、
無いか。

数字は正直ばってん、
人のことは何も覚えとらん。

毎日つけとっても、
何も残らん。

おいはあの店で、
一年ぶんの数字ば全部持っとって、
客ば一人も持っとらんかった。

───────

生年月日も数字たい


今の仕事に引きつけて言うと、
これは他人事やなか。

鑑定で使う生年月日も、数字たい。

九星も、そこから出す。

数字ば入れたら
それらしい答えは出る。

出るばってん、
数字だけ見て動く日ば言うても、
たいてい外れる。

同じ星の人が
同じ月に同じことばやって、
片方は進んで片方は詰まる。

何が違うかというと、
だいたい、その人の事情の方たい。

親が入院しとるとか、
今の仕事があと二ヶ月で終わるとか、
本人が本当は行きたくなかとか。

そこば聞かんで日取りだけ出すとは、
昔のおいが
売上だけつけよったとと同じことばい。

当てにいく鑑定は、売上表と一緒たい。

きれいに埋まるばってん、
人がおらん。

───────

今夜の一杯


あんたの手元にも、
数字で埋まっとるもんがあるやろ。

売上でも、体重でも、
フォロワーの数でもよか。

それは嘘はつかんばってん、
誰のことも覚えとらん。

余白に一行だけ、
数字やなかことば書いてみんね。

書けん日が続いたら、
その時は
ちょっと危なかかもしれん🌙

───────

この店の鑑定について


おいは九星気学と暦で、
あんたの動く日と方角ば読んどる。
品書きは三つだけたい。

まずは行き先と日取りだけ知りたか人へ。

ひと月まるごと、動く日と避ける日ば並べたとがこっち。

半年先まで、流れごと一枚の地図にしたとが本命たい。

どれにするか迷うたら、
いちばん上のからでよか。

日取りだけ聞かれても、
おいは事情の方ば先に聞くけんな。

───────
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す