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三つの小包

 学生時代、郵便局でアルバイトをしていた時のことです。  私の担当は、小包の仕分けでした。全国から届いた小包を、配達区域に分けて、配達員に引き継ぐ仕事です。さまざまな荷物を、差出人から受取人へと取り次ぐという作業の中で、毎月ある荷物が届いていました。  その荷物は大きな段ボール箱で、重量制限いっぱいの30キロの荷物でした。しかも、その荷物が同時に三つも届くのです。配達準備作業もひと苦労です。ところが不思議なことに、その荷物は配達されても、毎回受け取られることなく郵便局に戻ってくるのです。  戻ってくるたびに、翌日の再配達の手続きをしなければなりません。30キロにも及ぶ大きな荷物を持って、保管室と配達員の間を何度も往復するうちに、だんだんとその荷物が煩わしく思えてきます。「どうせまた返ってくる荷物なのに・・・」と思うと、自分のしている作業もむなしく感じてきます。そして保管期限が切れると、決まって差出人に還付されてしまうのです。どうして受け取りのされない大きな荷物が何度も送られてくるのか、長らく疑問でした。  ある時、その荷物を引き受けてきた局員さんに聞いてみました。すると、その三つの小包は年配の母親が息子さんに送ったものでした。ただ、その方は認知症で、息子さんが引っ越したことも忘れてしまい、元の勤め先の住所に荷物を送り続けているのだそうです。  局員さんは事情を知りつつも、その母親の気持ちを思うと言うに言い出せず、結局、荷物を引き受けていたのだそうです。そして、荷物が息子に受け取ってもらえずに戻ってくるときの母親の気落ちした顔を見るたびに「息子さん、次は受け取ってくれるといいです
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