ある詩人とそのファンのはぐくまなかった愛の物語-現実は厳しい
最近、詩人の金子みすずさんが再び脚光をあびているようです。 確か数年前にもその詩がCMで使用されて話題になっていました。 しかし、彼女の詩はいいですね。 詩心など皆無でHeart of stone(ザ・ローリング・ストーンズの大昔の歌にあります)と言われた私にも響くものがあります。 それで詩人つながりでもないですが、今日は少し前に読んだ呉智英氏の「健全なる精神」に出てきた、ある詩人とそのファンの「愛」の話を紹介したいと思います(元々は伊藤整氏の 「日本文壇史」からの引用とのこと)。 ただし、「愛」なんていうと、ロマンティックな方向を期待されるかも知れませんが、あにはからんや、心を打たない、非感動的な話です。 では始めます。 明治時代に横瀬夜雨(敬称略、以下同じ)という詩人がいました。 彼は幼少期の病気のために、下半身を動かすことができなかったのですが、自分のそうした不幸な境遇を嘆く甘美な詩を作り、発表していたんですね。 彼の詩に感銘を受けたファンも多く、特に少女たちが魅了され、愛を競い合っていたそうです。 中でも依田芳恵は両親の反対や、距離を乗り越えて、文通以外に会ったことがない横瀬への嫁入りを志願しました。 そして、彼女は横瀬のところに押しかけてきます。 何かドラマやマンガで似たようなストーリーを何度か見たことがあるような気がしますね。 大抵の場合、主人公は身体障害者であっても、イケメンで格好がいい。 しかし、現実はそんなに甘くなかった。 彼女が目にしたものは、古いなりにも堂々とした豪農の邸ではなく、「暗く古びて、そそけて、汚らしい大きな田舎屋にすぎない」詩人 横瀬夜雨の実
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