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ホラー小説『遊漁奇譚』

「ああ。辞める予定なんですよね。欲しいアクセサリーの代金が貯まったら」    私の眼の前に座っているのは、四十路の中年男性だった。  大学二年生の夏休み。手っ取り早く、稼げるバイトは無いかと、私は夜職の求人情報誌を手にして、余り人がこなそうなキャバクラの面接を受けて採用された。キャバ嬢デビューだ。店から私に見合った服を借りた。 「今時の若い子は奨学金とか、大変なんだろう?」 「いえ。私は本当に欲しいアクセサリーのお金が欲しくて。昼のアルバイトだと余り稼げないじゃないですか。だから、手っ取り早く、夏休みの期間だけ稼げるバイト無いかな、って。基本、怠け者ですし」 「そうかなあぁ」 「私、同性に嫌われるんですよねぇー。ファッションなのかなー? 性格もかも。だから、年上男性の人が好きなんです」 「ふうん。本当は格好いいホストとか好きなんじゃないのかい?」 「いや、全然? 私、恋愛とか怖いんですよねー。実は処女なんですよ。……本当ですってば、私、性格悪いから男出来ないんですよねぇー」 「性格悪い子は好きだなあ。君みたいに可愛い子なら」  その中年男性は高い酒。それもアルコール度数の高い酒を注文してくれた。  私はまだ実は未成年だと、こっそり言ったら、私の分のジュースを注文してくれた。 「ありがとう。それで、私、この仕事は辞めるんですけど。実はユーチューバーやっているんですよね、怖いお話を語る系の。チャンネルは言えないんですけど…………」 「まあ、そうだよね」 「で。お兄さんの体験した怖いお話、聞かせてくれませんか? ぶっちゃけ、此処のお仕事よりも重要なんで。あ、これ、他の子や黒服とかに内
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怖い話『真夜中の水族館』

 私の通っている大学の近くには、深夜二時まで営業しているBARのような雰囲気の喫茶店がある。学校帰りに何度か寄ってみたが、どうもお酒は出さないらしい。  BARの中は水槽が並んでおり、熱帯魚やらなにやらが飼育されている。亀やエビなど、も飼育している。さながら小さなアクアリウムといった感じだ。  そこで出されるカレーライスやパスタ、ハンバーグ定食などはとにかく絶品だった。飲み物やケーキ類もボリュームがあってお得感がある。店内には本棚が多く、漫画なども置かれている為に居心地の良い空間として私はその喫茶店でレポートやレジュメなどを書いていた。 「貴方、そこの大学に通っている子?」  五十は過ぎている、優しげな表情の女性が私に訊ねる。 「はい。そうですけど」 「そうなのね。大学生なら話してもいいわね。このお店、深夜0時を過ぎたら、特別なメニューが出されるの。もし、終電を逃したりしたら、よければいらしてね」 「そうなんですね。覚えておきます!」  私はボリュームのあるカルボナーラのパスタを口にしながら、アイスティーを口にした。パスタとドリンクがセットで800円。パスタにはサラダとデザートも付いてくる。中々に安い。 「じゃあ、もし、夜中に立ち寄ったら、特別メニューを注文しますね!」 「あいよ。若い女の子がレジをしていると思うけど、よろしくねっ!」  おばちゃんは、とても元気な笑顔をしていた。    それから、一か月くらいした頃だった。  私はサークルの仲間達と飲んでいた。 「サキ、終電逃しちゃったね……」  マリサはぐでん、ぐでんに酔っぱらっていた。  例の小さな水族館をモチーフにした喫茶
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『怖い話』アプリ『怪談』

 私は今年、二十一歳になる女子大生だ。  とある、出会いの場があるアプリに友人に誘われて登録する事になった。  そのアプリ内では恋愛や結婚などの出会い目的の場所だ。登録してみると、男からのメッセージが本当に多い。私はそのメッセージがうざくなったら、性別の欄を男にしてみたら、ぴったりとメッセージが止んだりした。アプリ内では年齢や顔を偽っている者もいたり、性別を偽っている者も多い。「遊果(ゆか)に付き合うのは、今回だけだからね」  私が元々、このアプリを使い始めたのは、高校からの友人である遊果に半ば強引に誘われてからだった。遊果は高校時代から彼氏が二人いたり、大学に入ってからも、関係を持っている男が複数名いた。そして彼女は夜の仕事を始めてから、恋愛依存、性依存が加速していった。遊果は元々、精神的に不安定な人間で、誘われたら誰とでも関係性を持つような傾向があった為に、よくおかしい男と関わっていた。  ……そして、大抵の場合、その愚痴を聞かされるのは私だったのだが……。 「砂織(さおり)ちゃん。今度の男はね。四十代で、ホストをやっている人なんだよ! 来週までに二十万は貸して欲しいって言われているんだけど、どうしよう……?」 「そんなの無視しなよ。っていうか、何なのよ、四十代のホストって…………」  この前は、39歳の元アイドル事務所に所属していた男と交際していた。その男とはアプリで知り合ったのだが、アイコンにしている顔写真は昔のイケメン男性芸能人に似ていたらしい。だが実際に会ってみると、かなり加工した顔で、貧相な親父だったのだと聞く。 「ホント、遊果は地雷男ばっかり引き当てるんだから、
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