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【インスパイア小説】Laura day romance / Sad number

インスパイア小説Laura day romance / Sad numberこちらは音楽から着想して創作した短編小説です。この景色を見るのはもう最後か…沈みかけた夕日が眩しく、丸く縮まった背中をぎゅっと抱きしめ、顔を埋めた。外国風の柔軟剤のこの匂いも、この感触も、最後か…。心地いい風とともに、落ち切ったカラーで黄色くなった髪が顔にかかる。少し大きめのヘルメットがかたかたとズレるのがもどかしい。もっと、今を感じていたいのに。海に着いた頃には、ほとんど太陽は沈みかけていた。ヘルメットをカシャっと取られ、ボサボサになった長い髪の毛をいつものように整えてもらった。まるで撫でられる猫のようになるこの数秒が大好きだった。わたしたちはたまにこの海に来た。なんとなく、いつもの街に飽きたとき。なんとなく、ゆっくり2人の時間を過ごしたいとき。ただ、なんとなく。静かな波の音が心地良い。ふんわり舞うギンガムチェックのワンピースが足に絡まっているのが何とももどかしい。今、この瞬間を味わいたいのに。綺麗な星を堪能して、元来た道を走り、駅を目指した。ほんとに、これが最後だ。頬を撫でる冷たい風が、さらに心をきゅっと縮ませた。彼はまた猫を撫でるようにわたしの髪を整え、コインロッカーに向かった。バス乗り場までのわずかな道中もすぐ隣にいたかったのに、大きな荷物が邪魔をした。22時40分。薄暗い駅の片隅は、夜行バスを待っているであろう人で賑わいはじめた。このソワソワする時間がわたしはいつも苦手だった。話の途中でバスが来てしまうかもしれないと、いつも往復だけで終わる会話しかできなかった。手を繋いで、たまに指を絡ませて遊
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