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【インスパイア小説】Here / homecomings

「お疲れ様でした。」定時が過ぎ、気休め程の残業をしてもまだ人で溢れるオフィスを足早に去った。薄暗くなり始めた街は夜の明るさを灯し始めていた。眩しくそびえる高層ビル、その隙間を足早に行き交う人々、荒々しく走り去る車、連なる飲み屋の活気。今にも溺れてしまいそうだ。それらを遮るかのようにイヤホンで蓋をし、柔らかい遠くの空に凛と光るそれを目指して私もまた早足で歩いた。春風の香ばしい匂いが心地よく鼻をつく。いつものこの歌を聴くと、まだこんな気持ち残ってたんだと心が疼く。未来が見えないことを当たり前のように過ごして、どのくらい経つだろう。ちらっと横目に入ったビルのガラス扉に映る自分の姿を見て、そんなことを思った。ほんの一瞬、足が止まりかけたけれど、今ここで足を止めたらこの都会の海に流されてしまいそうで、何事もなかったかのようにペースを乱さずただ前に進み続ける。なんとなく目的地が同じであろう周りの数人を横目でちらっと確認しても、誰も気にも留めずにいそいそと歩いている。一瞬ほっとして、また一点を目指し歩き続ける。悶々と思考する私に少し冷たくなった春の夜風が吹いた。未来どころか、今も見えていないかもしれない。この世の中で、同じ目的に向かう集団に紛れてただ息をしているだけの小さな生き物のような、そんな気分になった。わたしはどこ?・・・雑踏とした街を少し抜けると、まるで違う場所のように静かで暗い街に入る。数分、ただ真っ直ぐ歩いただけなのに。不思議な街だ。真っ暗な中にロウソクのように光立つシンボル。そんな風に、人生にも目印が欲しい。そんなことを考えていたら、すぐにまた夜の明るい世界に入っていた。ロウソ
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【インスパイア小説】Vaundy/踊り子

こちらは音楽から着想して私の頭の中で創られた短編小説です。Vaundyの踊り子をもとに創作しました。MVとともに、BGMにしながらお楽しみください。平日の昼下がりじいさんばあさんの集い場と化した喫茶店で俺は詩を描いていた。高校時代に組んだバンドで出した歌がほんの少しだが話題になり、そのままプロのミュージシャンになるためバイトしながら音楽活動をしている。だが、現実は甘くなかった。卒業して本格的に始めてから、2年経っても鳴かず飛ばず。むしろ、アイディアはまるで浮かばない。メンバーは1人、また1人と減り、今は2人でやっている。気晴らしに外に出てはみたが、描けない。ふと、窓に映る自分に気が付いた。優しい外の陽気に相応しくない姿は、まさにこの社会で浮いている自分そのままだった。伸び放題の髭、ぼろぼろの服、まともな食事もほとんどせず、痩せ細りひょろりとした身体。ボサボサの髪を掻きむしりながら、露でびちょびちょになったアイスコーヒーに手をつけた。溶け切った氷で二層になったその液体をみて、イヤホンを外し、仕方なく店員を呼んだ。「おかわりもらえますか、氷少なめで」かしこまりました、と優しく目を細めた白髭のマスターが返事をした。カランいらっしゃいませ、というマスターの声に合わせて、気持ちの良いそよ風が入ってきた。なんともいえない優しい香りがふんわりと俺の横を横切った。そっと視線をやると、今まで出会ったことのないような美女が通り過ぎて行った。俺の斜め前の席に座った彼女と、ちらっと視線が合ってしまった。咄嗟に視線を逸らし、イヤホンを付け直した。マスターと仲良さそうに話す彼女のことが気になり、チラチラと
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