ニットクリエイターとして、編み物や手芸の「制作代行」を本業にしています。
「作りたいけれど時間や技術の都合で作れない」という方の代わりに、手を動かして形にするお仕事です。
最初から順調なスタートだったわけではありません。
シングルマザーとして子育てをしながら、手仕事で少しずつ収入を得ていく日々。
「ちゃんとした仕事(会社に所属すること)をしなさい」と口にしていた母も、当時は子ども3人を抱えてフリーランスとして生きようとする私の行く末を、心から心配してくれていたのだと思います。
そんな母が東日本大震災の年に病に倒れた際、入院先で同室の患者さんたちに私の作った作品を自慢げに見せ、「これ、娘が作ったのよ」と満面の笑顔で手渡してくれたことがありました。
「ちゃんとした仕事をしなさい」という言葉の裏にあった不安が、誇らしさに変わった瞬間でした。
あの日、母が背中を押してくれたからこそ、私は今日まで針を動かし続けることができています。
「ただ預かって仕上げるだけではない」仕事との出会い
ハンドメイド作家として活動して5年ほど経った頃、一通のメールが届きました。
「好きで集めたキットがたくさんあります。どうしても作ってほしいんです」
届いたダンボールを開けた瞬間、封を留める黄色く色褪せたテープと、ほんのりとしたお線香の香りが漂ってきました。
お仏壇の側に長く大切に置かれていた情景が浮かび、「早く届けなければ」という強い使命感に突き動かされるように無我夢中で針を動かしました。
すべての納品を終えた後、お客様からいただいた「この仕事、絶対に需要があるからぜひ続けてね。約束よ」という言葉。
この出会いがきっかけとなり、私は「制作代行」という道を本格的に歩み始めました。
単に「預かった材料を加工する」のではない。
目の前にある布や糸が出番を待っていた歳月や、持ち主の想い。
言葉にならないそれらを五感で受け止め、対話すること。
それが私の仕事の原点であり、直感力がある私の使命にも近い仕事だと思っています。
止まってしまった時間を、新しい温もりへ
現在ご依頼いただく仕事のなかには、亡くなられたご家族が遺された「編みかけの作品」を引き継ぐご依頼も少なくありません。
亡くなったお母様が遺された糸から、波の模様のインスピレーションを受け、編み上げたバッグ。
亡き奥様が途中まで編んでいたセーターから感じられる想いを編み目に込めて、着られる形にしてご主人の元へお返ししたこと。
編み図がなくても、残された編み目をじっくり観察し、故人が頭の中で描いていた完成図を探っていきます。
完成したセーターを身にまとった「着画」をご依頼主様からいただいたとき、「私の動かした針が、新しい温もりを届けることができた」と心の底から熱いものが込み上げました。
自分らしい働き方と、これからの想い
もちろん特別なエピソードだけでなく、「挑戦してみたけれど難しくて諦めてしまった」「プレゼント用に作ってほしい」といった日常の「編んでほしい」という声にも日々寄り添っています。
「好き」だけでは続かない厳しさもありますが、
できることと、できないことを明確にする
価格を「時間」ではなく「価値」で考える
無理をしない範囲で誠実に続ける
この積み重ねによって、自宅を拠点としながら、全国のお客様と温かいご縁でつながる自分らしい働き方を実現することができました。
止まってしまった針をもう一度動かすこと。
残された糸を、新しい温もりに変えること。
私が編んでいるのは、単なる作品ではありません。
大切な想いを、未来へと一緒に連れていくための架け架け橋です。
これからも手仕事を通じて、一人ひとりの心に寄り添う作品づくりを届けていきたいと思っています。