「システムの見積もりが届いたけれど、この金額が高いのか安いのか分からない」。中小企業の経営者の方から、いちばんよく聞く悩みのひとつです。
社内にITが分かる人がいないと、届いた金額をそのまま信じるか、なんとなく値切るかの二択になりがちです。でも、見積書には「ここを見れば判断の材料がそろう」というポイントがあります。現役のシステムエンジニアとして、業務改善やシステム導入に8年携わってきた立場から、3つに絞ってお伝えします。
■ポイント1:「一式」だけの見積もりは、まず内訳を出してもらう
いちばん注意したいのが、「要件定義 一式」「開発 一式」「テスト 一式」のように、項目が数行しかない見積書です。
一式の見積もりがすべて悪いわけではありません。ただ、これでは「何にいくらかかっているのか」が分からないので、高いのか安いのかを比べようがありません。
こういう見積書が届いたら、次の3つをベンダーに確認してみてください。
1つ目は、画面の数と、それぞれの画面でできること。2つ目は、何人で何か月かけて作る想定か。3つ目は、保守やデータ移行が含まれているかどうか。
この3つが分かるだけで、見積もりの中身がぐっと具体的になります。誠実なベンダーであれば、嫌がらずに答えてくれるはずです。
■ポイント2:保守費用は「何をしてくれるのか」で判断する
開発費と同じくらい見落とされがちなのが、毎月の保守費用です。
たとえば「保守費 月5万円」と書かれていても、その中身は会社によってまったく違います。月に1回きちんと動作を確認して報告してくれる会社もあれば、「何かあったときに連絡すれば対応する」だけの会社もあります。
保守の契約書や見積書では、点検の頻度(毎月か、年に数回か)、対応してくれる作業の範囲(不具合の修正だけか、ちょっとした変更も含むか)、作業時間や件数の上限、毎月の報告があるかどうか、が書かれているかを見てみてください。
すでに保守契約を結んでいる場合は、「直近3か月に行った作業の記録」を出してもらうのも有効です。作業がほとんどない月が続いているなら、内容を絞って金額を見直す相談の材料になります。
■ポイント3:2社の金額差は「含まれている作業の違い」から見る
相見積もりを取ったら、A社は120万円、B社は60万円。倍も違うと、つい安い方に決めたくなります。
でも、金額の差の多くは「どこまでやってくれるか」の違いから生まれます。よくあるのは、データ移行、操作説明やマニュアル作成、納品後しばらくの不具合対応、のどれかが片方にだけ含まれているケースです。
2社の見積書を並べて、作業の項目を一つずつ照らし合わせてみてください。安い方に足りない作業を追加すると、差が思ったより小さくなることも珍しくありません。
逆に、どちらにも含まれていない作業があれば、それは自社でやる前提になっている、ということです。社内でできるかどうかも、判断材料のひとつになります。
■「適正価格」より「判断できる材料」をそろえることが大事
見積もりは、作るものの前提や会社の事情によって変わるので、「この金額が正解」と言い切れるものではありません。大切なのは、金額の根拠を理解したうえで、自分たちで納得して決められる状態をつくることです。
今回の3つのポイントを押さえておくだけでも、ベンダーとの打ち合わせで聞くべきことがはっきりして、話がかなり進めやすくなるはずです。
■見積書を一緒に確認してほしい方へ
「ポイントは分かったけれど、自分では判断が難しい」という方向けに、届いた見積書や保守契約の内容を拝見して、項目ごとの目安と、ベンダーに確認するとよい質問リストをお渡しするサービス「システム開発・保守の見積もりを診断します」を出しています。会社名などは伏せたままで大丈夫です。
なお、私自身もシステム開発を行っていますが、このサービスで自社への依頼をおすすめすることはありません。「こんなことを聞いてもいいのかな」という段階でも、お気軽にご相談ください。