愛犬ミミが旅立って、もうすぐ4週間になります。
16歳8か月。私にとって、人生で初めて一緒に暮らした犬であり、15年以上そばにいてくれた大切な家族でした。
獣医師として、これまで多くの動物たちとの別れに立ち会ってきました。飼い主さんの涙を見て、一緒に悲しみ、最期の時間を支えてきたこともあります。
それでも、自分自身が大切な子を失うと、知識も経験も役に立たないほど、心が追いつかないのです。
ミミがいつも過ごしていた場所を見るだけで涙があふれる。何気ない日常のなかで、「もういない」という現実に何度も直面する。
頭では分かっていても、寂しさは簡単には消えません。
それでも、泣いてばかりの時間に少しずつ、落ち着いて過ごせる時間が増えてきました。
今回は、私が実際にやってみて「少し心が楽になった」と感じた10のことをご紹介します。
専門書の理論ではなく、今まさにペットロスの悲しみの中にいる、一人の飼い主としての実践記録です。同じように大切な家族を亡くした方の、少しでも支えになればうれしいです。
まず大切なこと。悲しい自分を否定しない
ペットロスを抱えたとき、最初に大切にしてほしいのは、悲しい自分を責めないことです。
16年8か月も一緒に暮らした家族を亡くしたのです。すぐに受け入れられなくても、悲しくて仕方なくても、当然のことです。
朝起きた瞬間に寂しくなる。楽しい思い出を思い出して笑った直後に涙が出る。気持ちが行ったり来たりするのは、自然なことです。
私自身、ミミの看取りについて大きな後悔はありません。それでも、悲しくないわけではありません。
「できることを精一杯やった」と思っていても、もう一度抱っこしたい。もう一度、あの顔を見たい。
だから私は、悲しみを無理に消そうとするのではなく、悲しい気持ちと一緒に、少しずつ毎日を過ごすことを選びました。
私が実践していること【前半5つ】
1. 思いっきり泣く
泣きたいときは、我慢せずに泣いています。
声を出して泣いてもいいし、何もできずにぼんやり過ごす日があってもいい。それだけ、ミミが大切な存在だったということです。
泣くことは弱さではありません。無理に気持ちを切り替える必要もありません。
泣いたあとは、ゆっくり深呼吸をして、「今日もよく頑張ったね」と自分に声をかけています。
2. 泣き疲れたら、おいしいものを食べる
悲しいときは、食欲がわかないこともあります。
そんなときは、完璧な食事を目指さず、好きなお菓子、コンビニのスイーツ、温かいスープなど、少しでも口にできるものからで大丈夫です。
「おいしいな」と少し感じられたら、それで十分です。食べることは、自分の体をいたわり、今日を生きるための小さな一歩になります。
3. 自分から、愛犬のことを話してみる
私は、ミミが旅立ったことを、生前お世話になった方に自分から伝えました。
話す途中で涙が出ることもありましたが、「そうだったんだね」「寂しくなったね」と言葉をもらうたびに、一人で抱えていた気持ちが軽くなりました。
話したくない日は話さなくていい。でも、誰かに聞いてほしいと思ったら、信頼できる人に話してみてください。
ミミがどんな子だったか、どんな思い出があるか。悲しいことだけでなく、楽しかったことも話していいのです。
愛犬を語る時間はその子との日々をもう一度抱きしめる時間にもなります。
4. 「きっと見守ってくれている」と考えてみる
寂しさが押し寄せるとき、私はこう考えます。
「私がいつまでも泣いていたら、ミミが心配しちゃうかな」
本当のところは分かりません。でも、そう考えると、少しだけ顔を上げられる気がします。
ミミは、私にたくさんの幸せをくれました。そのミミが、今も心の中にいてくれる。そう思うことが、今の私の小さな支えです。
泣きたいときは泣いていい。そのうえで、「少し元気になっていこう」と思える日が、少しずつ増えていけばいいのだと思います。
5. 帰宅したら「ただいま」と声をかける
帰宅したら、いつも通り「ただいま」と声をかけ、好きだったごはんやおやつをお供えしています。
大切な子がいなくなったあと、「ただいま」を誰に言えばいいのだろうと感じる方もいるかもしれません。
それでも、いつもの言葉をかけることで、心が少しだけ落ち着きます。
大切なのは形を守ることではなく、自分が少し安心できる習慣を見つけることです。
私が実践していること【後半5つ】
6. 写真を見返して、思い出をたどる
スマートフォンには、ミミとの日々がたくさん残っています。
小さかった頃の姿、初めて出かけた日のこと、いつもの場所でくつろぐ姿。何気ない一枚に、思い出が詰まっています。
私は少しずつ写真を見返しています。涙が出る日もあれば、まだ見られない写真もあります。そんな日は、無理に開かなくて大丈夫です。
思い出を一度に整理しようとしなくてもいい。自分のペースで、少しずつ振り返ればいいのです。
私はミミの写真をリビングの壁に飾り、写真を使ったTシャツも作りました。そのTシャツを着て、同居しているマルちゃんと散歩に出かけると、ミミとマルと私が、いつもの3人になれる気がします。
写真を飾ることや身につけることが、すべての人に合うとは限りません。つらくなるなら、無理に続けなくて大丈夫です。
7. 思い出をSNSに投稿する
誰かに聞いてほしい思い出が出てきたときは、SNSに短い言葉を添えて投稿することがあります。
「この頃のミミもかわいかったな」「一緒に過ごした時間は、私の宝物」
長い文章にする必要はありません。写真と一緒に、今の気持ちを少しだけ外に出す。それだけで、心の中にあるものが少し整理されることがあります。
ただし、SNSを見ることでかえってつらくなる日もあります。そのときは、距離を置いて大丈夫です。
8. 長く語りたくなったら、ブログに書く
短い言葉では伝えきれない気持ちがあるときはひたすら文章を書いています。
書き始めると、思い出が次々に浮かんできます。文章にすることで、「本当はこんなに寂しかったんだな」「こんなにも支えられていたんだな」と、自分でも気づかなかった気持ちに出会うこともあります。
上手な文章である必要はありません。最初は誰にも見せないメモでもいいのです。
「今日は寂しかった」「こんなことを思い出した」。それだけでも、大切な記録になります。
9. ミミへの手紙を書く
伝えたいことがたくさんあるなら、手紙を書いてみるのもおすすめです。
「今までありがとう」「一緒に暮らせて幸せだったよ」「寂しいよ。もう一度会いたいよ」
感謝の気持ちも、伝えそびれたことも、後悔も、そのまま書いていいのです。
誰にも見せなくていい。途中で泣いても、最後まで書けなくても大丈夫です。
書き終えた手紙は、しまってもいいし、写真や思い出の品と一緒に置いてもいい。自分が安心できる形で大切にしてください。
10. 思い出の箱をつくる
首輪、おもちゃ、写真、お気に入りだったもの。思い出の品を、一か所にまとめておく方法もあります。
特別な箱でなくても大丈夫です。小さな引き出しでも、お気に入りの布を敷いた場所でも構いません。
寂しいときにそっと手に取れる場所があると、心が少し安定することがあります。
ただし、見るだけで涙が止まらなくなるときは、無理に飾らず、箱にしまっておくのもいいでしょう。
思い出の品をどうするかに正解はありません。手放せないから前に進めていないわけでも、整理したから愛情が薄いわけでもありません。
獣医師だから伝えたいこと
後悔は、それだけ大切に思っていた証
「もっと早く病院に連れていけばよかった」「別の治療を選べばよかった」
大切な子を亡くしたあと、自分を責めてしまう飼い主さんは少なくありません。
私自身も、獣医師である前に、ミミの飼い主です。知識があっても、経験があっても、悲しみは消えません。
でも、あの時のあなたは、その時に分かっていたこと、できることの中で、精一杯考えていたはずです。
今だからこそ見える選択肢もあります。けれど、過去の自分に、今と同じ情報があったわけではありません。
後悔がすべて消えるとは限りません。それでも、あの子のために頑張ってきた自分にも、少しずつ優しくなれたらいいと思います。
看取りの形に、正解はない
腕の中で見送れた方もいれば、仕事中や外出中に旅立たれた方もいます。病院で最期を迎えた子もいれば、おうちで家族に見守られて旅立った子もいます。
最期の瞬間に立ち会えたかどうかだけで、一緒に過ごした年月の価値が決まるわけではありません。
一緒にごはんを食べた日、散歩した日、何気なく声をかけた日、病気のときにできることを探した日。その毎日の積み重ねこそが、かけがえのない家族の時間です。
残された動物たちにも目を向けて
ほかにも犬や猫と暮らしているなら、その子たちの様子にも気をかけてください。
仲間がいなくなったあと、食欲が落ちたり、いつもより甘えたり、家の中を探すような行動をしたりする子もいます。
いつもと違う様子が続く場合は、体調不良が隠れていることもあるため、必要に応じて動物病院に相談してください。
あなた自身も、無理をしすぎないでくださいね。
新しい子を迎える時期に、正解はない
「また犬と暮らしたいけれど、あの子に申し訳ない」「新しい子を迎えたら、忘れてしまうのではないか」
そんな気持ちも、自然なものです。
反対に、寂しさから早く新しい子を迎えたいと感じる方もいるでしょう。どちらの気持ちも否定する必要はありません。
いつか新しい子との暮らしを始めたとしても、それは、これまで一緒に暮らした子を忘れることではありません。
それぞれの命には、その子だけの個性と大切な時間があります。今は考えられなくても大丈夫です。
無理にやらなくていいこと
ここで紹介した10のことは、全部やる必要はありません。
ペットロスの向き合い方は、人それぞれです。誰かにとって楽になることが、別の人にはつらく感じられることもあります。
• 「早く立ち直らなきゃ」と自分を急かさなくていい
• 「たかがペットでしょ」という言葉を真に受けなくていい
• 悲しくない日があっても、自分を責めなくていい
• 無理に笑顔を作らなくていい
• ほかの人と悲しみの深さや回復の速さを比べなくていい
周りから「そろそろ元気を出して」と言われても、心が追いついていなければ、無理に元気になる必要はありません。
つらさが長く続くときは、ひとりで抱えないで
次のような状態が続くときは、医療機関、カウンセラー、信頼できる人、ペットロスの相談を受けられる支援者に相談してみてください。
• 眠れない、または食べられない状態が続く
• 仕事や家事など、日常生活が難しくなっている
• 不安や自己責任の気持ちが強く、休まる時間がない
助けを求めることは、弱いことではありません。
大切な子を愛していたからこそ、つらいのです。あなた自身の心と体も、大切にしていいのです。
おわりに
ミミが旅立って、もうすぐ4週間。今でも寂しいです。
いつもの場所にいないことに、ふと涙があふれる日もあります。
それでも、思い出を書いたり、誰かにミミのことを話したり、日々の暮らしを少しずつ続けたりしています。
ペットロスを乗り越えるとは、悲しみを忘れることではないのかもしれません。
寂しさが残っていても、思い出に笑顔になれる瞬間が増えていく。悲しい気持ちを抱えながらも、少しずつ自分の暮らしを取り戻していく。
そんなふうに、ゆっくり歩いていけたらいいなと思っています。
今、この記事を読んでいるあなたも、まだ涙が止まらない毎日かもしれません。何もする気になれない日もあるかもしれません。
それでも、今日できることがひとつだけあれば十分です。
好きなものを少し食べる。思い出の写真を一枚眺める。ゆっくり休む。
あなたの大切な子と過ごした時間は、これからもあなたの中に残り続けます。
今日まで、よく頑張ってきたね。
どうか、自分自身にもそう声をかけてあげてくださいね。