祖母の夢を見ました。
亡くなった人が夢に出てくると、もっと感動的な再会になると思っていたのですが、祖母は私を見るなり、こう言いました。
「上の缶、取って」
昔と同じでした。
私は祖母の家へ行くと、よく棚の上のものを取らされました。取ったあとに「そっちじゃない」と言われ、もう一度背伸びをすることもありました😂
夢の中でも、どの缶か聞き返しました。
「丸い方。あれ、捨てないでよ」
そこで目が覚めました。
久しぶりに会えたのに、用事だけ頼まれて終わってしまった。
もう少し何か話してくれてもよかったのに、と思いながら、枕元の手帖に書きました。
「祖母。丸い缶。捨てないで」
*
その日の昼、母から電話がありました。
祖母の家に残っていた荷物を、少しずつ整理しているという話でした。
「裁縫道具が、あちこちから出てくるの。箱にまとめておけばいいのにね」
母は少し呆れていました。
祖母は、取っておく人でした。
服についてきた予備のボタン。何かを包んでいたリボン。短くなった鉛筆。紙袋も、しわを伸ばして棚にしまっていました。
「丸い缶、ある?」
私が聞くと、母は電話を持ったまま探し始めました。
しばらく物を動かす音がして、「あるよ」と言いました。
「青い、お菓子の缶。中、ボタンばっかり」
母は、中身を裁縫箱へ移して、缶は処分しようと思っていたそうです。
私は、今朝の夢の話をしました。
母は少し黙ったあと、「おばあちゃん、捨てられると思ったのかな」と笑いました。
その声を聞いて、私も笑いました。
祖母なら、言いそうでした。
*
後日、母が缶を持ってきてくれました。
蓋が少し固く、開けると、思っていた以上にたくさんのボタンが入っていました。
同じ形が三つそろったものもあれば、一つだけのものもある。糸がついたままのボタンまでありました。
母が「これ、覚えてる?」と、小さな白いボタンを取り出しました。
私が子どもの頃に着ていた、カーディガンのボタンでした。
そう言われるまで、私は服そのものを忘れていました。けれど、ボタンを見ると、袖が長くて、よく手を引っ込めていたことを思い出しました。
祖母は、私の服のボタンが取れると、すぐに付け直してくれました。
私が「もういい」と言っても、「そこが開くと寒い」と聞き入れませんでした。縫い終わるまで待てずに動くと、「針があるから、じっとして」と注意されました。
母と二人で缶をのぞきながら、そんな話をしました。
「この黒いのは、おじいちゃんの上着じゃない?」
「それは違うと思う」
「じゃあ、誰の?」
持ち主の分からないボタンの方が、ずっと多かったです。
結局、母も私も、どれも捨てられませんでした。
*
霊視のとき、ふと届く言葉が、とても日常的なことがあります。
もう少し立派な言葉を期待していたのに、出てくるのは、いつもの口癖だったり、家で繰り返し言われていたことだったりする。
今回の祖母も、そうでした。
私は、あの夢から大きな意味を探そうとは思いませんでした。
祖母に頼まれたように感じたので、缶をもらうことにした。それで母と、祖母の話をする時間ができた。
母は、片づけながら一人で思い出していたことを、いくつか話してくれました。私も、祖母のことを母に聞くのは久しぶりでした。
電話では荷物の量に呆れていた母が、帰るときには「残しておいてよかったね」と言いました。
*
缶は今、私の机の引き出しにあります。
先日、上着のボタンが取れたので、久しぶりに開けました。似た色のものが見つかり、自分で付け直しました。
途中で糸が絡まり、ほどくのに手間取りました。
祖母なら、ここで貸してみなさいと言うだろうな、と思いました。
あの人が隣にいたら、きっと最後まで自分で縫わせてもらえなかったでしょう。
仕上がりは少し斜めですが、今のところ、取れていません。
母に写真を送ったら、「おばあちゃんに見せたら、やり直しって言われるね」と返ってきました。
たぶん、言われます😂