タロットを始めたばかりの頃、78枚のカードの中でも、なかなか意味が自分の中に入ってこないカードがあります。
〈STRENGTH/力〉のカードもそのうちの一枚でした。
「力(ちから)」だったら「POWER」じゃないの? たくましい腕や勇敢に戦う姿なら思い浮かべやすいけれど…。
実際のウェイト版の大アルカナ8番、〈STRENGTH/力〉に描かれているのは、そんな勇猛果敢さとは真逆の絵柄。武器を何も持たない女性が、ライオンの口元に手を当てている、という不思議な絵です。
とても格闘しているようには見えない、この場面。いったい、どんな「力」を表しているのでしょうか?
「STRENGTH」も「POWER」も、日本語では「力」と訳せる言葉です。
ただし「STRENGTH」には、筋力や体力に加え、心の強さや困難に耐える強さも含まれます。
ウェイトの解説書では、このカードは「Strength, or Fortitude」――「Fortitude」は、逆境に勇気をもって耐える精神的な強さを表します。
■ ライオンを導く「花の鎖」
ウェイト版タロットの作家、ウェイトは、この女性はライオンの口を「閉じている」のだと説明しています。
女性の慈愛に満ちた「強さ」がライオンを制し、花の鎖で導いているのです。
そして、ライオンは「情念」の象徴でもあります。強く沸き上がる感情や欲求がこのライオンだと考えると、この場面は「戦いのシーン」ではなく、心の内側の出来事や葛藤を描いていることが見えてきます。
■ トートタロットでの「Lust」
この〈STRENGTH/力〉のカードは、20世紀の大魔術師=アレスター・クロウリーの生み出した“トート・タロット”では、11番〈Lust/欲望〉のカードへと進化していきます。
クロウリーは〈Lust/欲望〉に、強さだけでなく「力を発揮する喜び」も含めています。絵柄も、獣にまたがって杯を掲げる女性へ。ウェイト版とは異なる熱気が伝わってきます。
情念を制し、導く強さ。
情熱を感じ、力を発揮する喜び。
見比べると、「力」という言葉の幅が広がります。
人物の手や姿勢、頭上の印。そして、獣との関係。あなたは、どこに強さを感じるでしょうか。
名前だけでは気づかなかった「力」が、絵の中に見えてくるかもしれません。