タロットの「THE LOVERS(恋人)」と聞いて、男女の上に大きな天使が描かれたカードを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
これは、ウェイト版の「恋人」の絵柄です。恋愛占いでこのカードが出ると、二人の関係が祝福されているようで、思わず嬉しくなりますよね。
ところが、マルセイユ版の「恋人」を見ると、少し様子が違います。
中央の人物を挟んで、左右に一人ずつ。地上に描かれているのは、二人ではなく三人です。さらに上には、弓を構えた翼のある存在もいます。
「恋人のカードなのに、どうして三人?」
この絵柄の違いは、「恋人」というカードの奥深さを知る入口でもあるのです。
マルセイユ版では、左右の人物が中央の人物に手を伸ばしています。視線や体の向き、手の位置を見ていると、それぞれが何を伝えようとしているのか、想像したくなります。
この場面には、中央の人物が二人の間で迷っている、何かを選ぼうとしている、といった読み方があります。タロットの解釈の歴史には、両側の人物を「美徳」と「悪徳」に見立てる説明もありました。
ただし、「三人だから三角関係」と決まっているわけではありません。誰と誰がどんな関係なのか、絵だけですべてが明かされているわけではないのです。
一方、ウェイト版では、地上の男女と、その上の翼ある存在が描かれています。制作を指揮したアーサー・エドワード・ウェイトは、この男女を楽園のアダムとイヴになぞらえて説明しました。
同じ「恋人」のカードでも、描かれる場面が変われば、そこから受け取る印象も変わります。人と人との結びつきに目が向くこともあれば、誰かに惹かれる気持ちや、選ぶときの迷いが気になることもあるでしょう。
カードを見比べるときは、名前や覚えた意味に加えて、絵そのものにも目を向けてみてください。
誰が誰を見ているのか。
何に手を伸ばしているのか。
人物は近づこうとしているのか、それとも立ち止まっているのか。
「恋人が出たから、恋愛のこと」と決める前に、少しだけ絵を眺めてみる。すると、見慣れたカードにも、今まで気づかなかった表情が見えてくるかもしれません。
出典:ウェイト『The Pictorial Key to the Tarot』「VI. The Lovers」。アダムとイヴの説明、および旧来の「美徳と悪徳」の図像への言及を参照しています。