こんにちは、コツコツ自動化ラボです。
前回、「AI導入は、まず作業の書き出しから」という話を書きました。今日はその続きです。**書き出したあと、最初に手をつけるべき場所**をはっきり書きます。
## 先に結論を書きます
**同じ数字を、複数の場所に手で入力している。** ——もしこれに心当たりがあるなら、そこが最優先です。
そして直し方も、先に書いておきます。
**入力の回数を減らすのではありません。「最初に入力する場所」を1つに決めて、そこから先を流すことです。**
言い方を変えると、**入力を速くしようとしないでください。入力しなくて済むようにしてください。**
## まず、当てはまるか確かめてください
こんな流れになっていませんか。
```
受注メール → 受注管理表 → 納品書 → 請求書 → 入金確認表
(手入力) (手入力)(手入力) (手入力)
```
会社名・品名・数量・金額。**同じ内容を4回打っています。**
呼び方は会社によって違います。管理表が「案件シート」だったり、納品書が「作業報告書」だったりする。でも構造はほとんど同じです。
判定はこの1問で足ります。
**「取引先の名前を1件登録するのに、いくつのファイルを開きますか?」**
2つ以上なら、この記事はあなたの会社の話です。
## なぜ、これが「一番大きな詰まり」なのか
理由は2つあります。**2つめのほうが重いです。**
**1つめ。時間の合計が大きい。**
1回の転記は3分かもしれません。でも件数が多い。月100件なら、4回打つうちの3回ぶんが余分で、**月15時間**が消えています。1つひとつが短いので、誰も問題だと気づきません。
**2つめ。間違いが追えなくなる。**
4か所に同じ数字があるということは、**4か所が食い違う可能性がある**ということです。
そして食い違ったとき、どれが正しいのか誰にも分かりません。「請求書の金額が管理表と違う」と分かっても、**どっちが打ち間違いなのかを判断する材料がない**。結局、メールまでさかのぼって照合することになります。
「月に何件か、請求の訂正が出る」——そういう会社は、ほぼ例外なくここが原因です。削られているのは時間だけではありません。**訂正の手間と、取引先からの信用**も一緒に削れています。
## よくある「間違った直し方」を3つ
ここが本題です。多重入力に気づいた会社の多くが、この3つのどれかをやって失敗します。
**間違い①:全部を1つの巨大なExcelにまとめる**
シートを増やし、関数でつなぎ、1つのファイルに全部を入れる。最初はうまくいきます。
問題は半年後です。**ファイルが重くなり、複数人で同時に開けなくなり、誰も構造を変えられなくなる。** そして作った人が異動すると、誰も触れないまま残ります。
**間違い②:入力する人を1人に集約する**
「打ち間違いが起きるなら、詳しい人が全部やればいい」。気持ちは分かります。
でもこれは、**多重入力を解決していません。属人化を1つ足しただけ**です。その人が休んだ日に会社が止まります。
**間違い③:いきなり業務システムを導入する**
これが一番お金がかかる失敗です。
多重入力を解消できる製品は確かにあります。ただ、**いまの業務の形が決まっていないまま導入すると、システムに合わせて業務を作り直すことになります。** 現場が「前のやり方のほうが早い」と言い出し、**結局Excelが併存して、入力箇所がむしろ増える。**
導入自体が悪いのではありません。**順番が逆**なのです。
## 正しい順番は、たった3ステップです
**ステップ1:起点を1つ決める**
「この情報は、まずここに入力する」という場所を1つだけ決めます。受注データなら受注管理表。それ以外の場所には**手で打たない**、と決める。
決めるだけです。まだ何も作りません。
**ステップ2:起点から先へ、自動で流す**
決めた起点から、納品書・請求書・確認表へデータが流れる仕組みを作ります。
ここが実際の作業です。既存のExcelの様式はそのまま使えます。**様式を変える必要はありません。**(むしろ変えないほうがいい。現場が混乱するので)
**ステップ3:戻りを作らない**
一番見落とされるのがここです。
「請求書のほうを直した」が起きると、起点と食い違います。**下流で直すのを禁止し、必ず起点を直してから流し直す。** ルールはこれ1つで足ります。
## 費用の目安を、正直に書きます
気になるところだと思うので、はっきり書きます。
- **起点1つ・つなぎ先2〜3か所の小さな範囲**なら、数万円台から着手できます
- **部署をまたぐ、承認が絡む、既存システムから引き出す**——このあたりが入ると、金額の桁が変わります
大事なのは、**最初から全部やらないこと**です。
いちばん件数の多い1本だけを先につないでみてください。効果が数字で出るので、次に進むかどうかを事実で判断できます。**やってみて効果が薄ければ、そこで止めていい。** これが小さく始める最大の利点です。
## やらないほうがいい場合もあります
正直に書きます。次のような場合は、いま手をつけないほうがいいです。
- **その業務そのものが、半年以内に変わる予定がある**
→ 変わったあとの形で作らないと、作り直しになります
- **入力の回数は多いが、件数が月に数件しかない**
→ 削れる時間より、作る手間と費用のほうが大きくなります
- **どの数字が正なのか、社内で合意できていない**
→ 起点を決められません。これは仕組みの問題ではなく、決め事の問題です。**先に決めてください。**
**「今はやらない」も、立派な結論です。** それを言わずに全部提案してくる相手は、少し疑ったほうがいいと思います。
## 今日やってほしいこと
1つだけです。
**取引先を1件登録するときに開くファイルを、実際に数えてみてください。**
2つ以上なら、そこにあなたの会社の一番大きな詰まりがあります。
そして「うちの場合、どこを起点にすべきか」で迷ったら、ご相談ください。**どの作業から、どの順番で、いくらくらいで手をつけるべきか**を、数字にしてお出ししています。
やらないほうがいいものは、はっきりそうお伝えします。
コツコツ自動化ラボでした。