「既読はすぐつくのに、返事だけが来ないんです。あの人が今どんな気持ちでいるのか、知りたいような、知るのが怖いような」。そんなお声を、鑑定のご相談でうかがうことがあります。
こんばんは、月詠ソラです。今夜開くのは、聖杯の宮廷札「聖杯のクイーン」です。
聖杯のスートは、35弾「聖杯の2」、39弾「聖杯の9」、40弾「聖杯の10」、45弾「聖杯の4」と、これまで4枚とも数札でした。宮廷札は62弾「剣のペイジ」、63弾「杖のナイト」に続いて3枚目になりますが、聖杯としては初めての宮廷札です。数札が場面そのものを描くのに対し、宮廷札は人の在り方や態度を映すことが多いカードでした。今夜開く聖杯のクイーンは、その中でも珍しく、外へ向けてではなく自分の内側だけをじっと見つめている一枚です。
もしあなたが、
・既読はついているのに返事だけが来なくて、その沈黙の意味をあれこれ考えてしまう
・自分の気持ちが大きくなりすぎて、うまく抑えられずにあの人へぶつけてしまいそうで、それが怖い
・「情が深すぎる」「尽くしすぎ」と周りから言われて、自分の優しさに自信が持てずにいる
・あの人が本当は何を感じているのか分からないまま、ただ静かに待つことしかできずにいる
このどれかに心当たりがあれば、今夜はこの一枚を、ゆっくりたどっていこうと思います。
■「聖杯のクイーン」は恋愛占いで「情に流されやすく、尽くしすぎてしまう人」と誤解されやすいカードです
タロットの「聖杯のクイーン」は、水辺の岩場に据えられた玉座に座る人物が描かれた絵柄です。ゆったりとした白い衣をまとい、頭には小さな冠をのせ、両手で蓋の閉じた黄金の杯を大切そうに支え、じっとその杯へ視線を落としています。玉座の背もたれには天使を象った彫刻が施され、足元の岩場には波が静かに打ち寄せています。この、感情のスートである聖杯を両手でしっかりと抱える姿から、恋愛占いでは「情が深すぎて相手に流される人」「尽くしすぎて自分を見失ってしまうタイプ」と、境界のない献身として読まれることが少なくないようです。
■「聖杯のクイーン」が伝えているのは、流されるままの献身ではありません
もう一度絵柄を見てみると、クイーンは杯の中身を飲んでも、こぼしてもいません。しかも杯には蓋が閉じられていて、中身がどんなものかは外からうかがい知れないようになっています。両手でしっかりと支え、視線を落として見つめているだけの、静かな姿勢です。玉座は波打つ水のすぐそばに置かれていますが、水没してはおらず、岩の上にきちんと据えられています。深い感情のそばに座りながらも、そこに呑まれてはいない。蓋を閉じたまま抱えているその心なのだと思います。それは凪いだ海のように静かで、けれど確かに深いものです。感じる力が豊かなことと、その感情に押し流されてしまうことは、別のことなのかもしれません。この静けさの奥にあるものを、ご自身でも感じ取ってみたい方には、コンテンツマーケットに置いている色の読み方の入門記事もよろしければどうぞ。
■ 聖杯のクイーンが示す、二つの色
聖杯のクイーンを視るとき、浮かんでくることが多いのは、次の2色です(どちらか一方だけのこともあります)。
青磁色(せいじいろ)が、閉じられた杯の奥、揺れない水面そのものに視えるとき
落ち着いた、青みを帯びた緑色です。表しているのは、涸れることも、慌てて満たそうとすることもない、もとから静かに凪いでいるその深さそのもの。水浅葱が「すり減っていたもの、涸れていたものが、ゆっくり満たされ直していく水の色」だったのに対し、青磁色にあるのは、満たし直している途中ではない、もとから凪いでいる静けさのほうです。
黄金色(こがねいろ)が、両手で支えられた杯そのものに視えるとき
温かみのある、深い金色です。表しているのは、すでに確かな形を持った気持ちが、蓋を閉じたまま外へは注がれずにいる、その状態そのもの。山吹が「軽やかで明るい好意の兆し、まだ確信には至らない淡い期待」、琥珀色が「これから材料を集めている途中、育ちつつある確かさ」だったのに対し、黄金色にあるのは、まだ育つ途中ではない、すでに満ちた気持ちを抱えたまま止まっている状態のほうです。
■ 実際の鑑定で視てきたパターン
聖杯のクイーンのご相談で重なりやすいのは、既読はつくのに返事だけが来ない、という場面です。「既読がついた直後、何か考えているらしいことは伝わってくるのに、その中身だけがまったく分からない」というお声を、これまでにも何度か伺ったことがあります。聖杯の2が示していたのは双方向で釣り合っている今この瞬間の交換、聖杯の4はまだ手元のものから視線が動いていない状態、聖杯の9は内側だけで完結した心地よさ、聖杯の10は複数人でまだ地上に降りていない理想を見上げている場面でした。聖杯のクイーンは、そのどれとも違って、感情そのものはすでに定まっているのに、外へ差し出すかどうかをまだ決めていない、という姿に近いようです。62弾「剣のペイジ」がまだ確かめている最中の慎重さ、63弾「杖のナイト」が判断を終えて動き出す直前の姿勢だったのに対し、聖杯のクイーンは動くか動かないかというより、感じたものをどう扱うか、その持ち方そのものを表すカードのようです。あの人の沈黙も、心が空っぽだからではなく、閉じた杯の中にまだ何かを抱えたままでいる、ということが多いのかもしれません。
■ 今夜のあなたへ
「聖杯のクイーン」は、情に流されるだけの弱さを言い渡すカードではありません。深く感じる力と、その感情に呑まれてしまうことは、別のことなのだと思います。沈黙の意味をいますぐ知ろうと急がなくても、蓋の閉じた杯は、そのままそこにあり続けるのだと思います。ご自身の心が大きくなりすぎて怖いと感じるときも、それを恥じる必要はないのかなと思います。ただ、抱えているものを今すぐ誰かに証明しようとせず、自分の中でそっと支えていてもいいのではと思います。
これで聖杯のスートも、数札4枚に宮廷札が1枚加わり、5枚になりました。宮廷札は剣・杖に続いて聖杯でも1枚開いたことになります。63弾の末尾で「次こそ杖の10に戻る」とお伝えしていたのですが、今回もまた寄り道をしてしまいました。次こそ、本当に杖の10を開こうと思います。
杯の中に何が満ちているのか。それはあの人自身にしか分からないことかもしれませんが、その色の濃さや向きなら、こちらから視ていくことができます。既読の止まった時間の中で、あの人の心がどこにあるのか気になったら。鑑定メニュー「既読が止まる理由と、彼の心が動く時期を視ます」で、1,500字ほどの鑑定書として24時間以内にお届けしています。
閉じたままのその杯が、いつかあなたの前で静かに満たされていきますように。1週間ほど経って、色がどう変わったか、また教えてくださいね。
月詠ソラ