「うちは小さいから狙われない」は、なぜ通用しなくなったのか 警察庁の数字から

「うちは小さいから狙われない」は、なぜ通用しなくなったのか 警察庁の数字から

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警察庁によると、2026年上半期に報告されたランサムウェア(データを使えなくして金銭を要求する不正プログラム)の被害は123件で、約6割が中小企業でした。小さな会社やお店にとって何が変わったのかと、費用をかけずに始められる4つのことを書きます。

数字の読み方
123件は、半期の件数としては統計を取り始めてから最も多い数です。

「約6割」は、報告された被害の内訳です。小さな会社ほど狙われやすい、という意味までは含んでいません。それでも、規模が小さければ対象から外れる、とは言えない数字だと思います。

攻撃する側に起きた変化
警察庁の報告には、生成AIを使った事件がいくつか載っています。

2025年1月には、17歳の生徒が生成AIを使い、インターネットカフェチェーンのアプリのサーバーへ約724万件の不正な指令を送って、会員情報が漏れました。同じ年の11月には、15歳の生徒が自作の攻撃プログラムを生成AIで手直しし、動画サービスの約4万6,800アカウントが本人の意思に反して退会させられています。2026年2月には、19歳の会社員がAIに作らせたソースコードを組み合わせてランサムウェアを作り、6月に逮捕されました。

被害を受けたのは、小さな会社とは言えないサービスです。見ていただきたいのは、攻撃した側の顔ぶれのほうです。警察庁は、生成AIによって、高度な技術を持たない人でもサイバー攻撃を実行しやすくなっている、という見方を示しています。

攻撃にかかる手間が下がると、これまで「手間に見合わない」と後回しにされていた規模の会社も、対象に入ってくると考えられます。言葉の面でも変化があります。IPA(情報処理推進機構)は、AIが攻撃者にとって言語の壁を越える助けになっていると説明しています。日本語の不自然さで見分ける方法は、以前ほど頼れません。

リスクを3つに分ける
IPAは「情報セキュリティ10大脅威 2026」で、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」を組織向けの3位に挙げました。その説明をもとに、私たちは次の3つに分けて考えています。

1つ目は、攻撃する側がAIを道具に使うものです。自然な日本語の偽メール、作り物の顔や声、不正プログラムづくりがここに入ります。警察庁の報告にも、ビデオ通話で警察官になりすますためにAIで顔を作っていた詐欺グループの事件があります。自分の会社でAIを使っていなくても、関係のある話です。

2つ目は、自社で使っているAIそのものが狙われるもの。問い合わせ対応のチャットボットなどに、外から細工した指示を読み込ませる手口です。

3つ目には、攻撃者が出てきません。会社が把握していないAIサービスに社内の資料を貼り付けてしまう、AIの答えを確かめずに使ってしまう、といった使い方の問題です。

IPAによると、一部の新しい手口を除けば、事案の多くは以前からある攻撃がAIで速く、半ば自動で行われるようになったものです。そのため、これまでの対策は引き続き有効とされています。

費用をかけずに始められる4つのこと
私たちはソフトウェアとAIシステムの開発会社で、セキュリティの専門会社ではありません。ここに書くのは、新しい道具を買う前にできる、確認と取り決めです。

まず、送金や振込先の変更を頼まれたら、別の手段で確かめること。メールで届いた依頼なら、以前から知っている番号に電話をかけます。警察庁は2026年1月から6月に、社長になりすまして送金させる「ニセ社長詐欺」を127件、被害額で約38億8,000万円認知しました。報告書は、これらにAIが使われたとは書いていません。ただ、文面が自然になるほど見抜きにくくなる手口です。

次に、止まると困るシステムと、その修正プログラム(パッチ)を誰が当てるのかを書き出します。保守を外部に頼んでいる場合は、その作業が契約に入っているかも見ておきたいところです。

3つ目は、仕事で使っているAIが、どのデータを読めて、何を自動で実行できるのかを確かめること。

最後に、仕事で使ってよいAIサービスと、入力してよい情報を決めておきます。一律に禁止すると、隠れて使われる方向に進みがちです。

すでに侵入されたかもしれないと感じたときは、記事を読んで判断せず、インシデント対応の専門事業者と警察に連絡してください。そうでなければ、4つのうち書き出すだけで済むものから、今週のうちに1つ手を付けてみてください。

出典:警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年)、警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年)、IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」および解説書(組織編)(2026年)

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