こんにちは!鴨川宗平です。
映像を編集しているとき、私は自分が一本の細い糸を使って、温かいセーターを編み上げているような感覚になることがあります。撮影されたたくさんの映像素材や音、そして言葉のひとつひとつは、まだ何のかたちも成していない色とりどりの毛糸のようなものです。それをどのように組み合わせ、どのような手順で編み込んでいくかによって、出来上がるものの着心地や温かさはまったく異なるものになります。
編み物をするとき、最初のひと針をどこに入れるかがもっとも重要です。映像制作でいえば、これは動画の最初の数秒間にあたります。ここで編み目を掛け違えてしまうと、その後にどれほど美しい模様をていねいに編み続けても、全体が途中でほつれていってしまいます。だからこそ、最初の数秒という大切な網目には特に神経を集中させ、見る人の心を引き留めるような、強くて美しい折り目をしっかりと作ることが何よりも大切なのです。
また、全体のテンポやリズムを一定に保つことも欠かせません。きつく編みすぎれば全体が硬くなってしまいますし、逆にゆるすぎれば全体が歪んでだらしなくなってしまいます。映像 of カットを繋ぐときもこれと同じで、速すぎず遅すぎず、見ている人の呼吸のテンポに自然と寄り添うような、心地よい網目を意識しています。この網目の一つひとつが、映像の「見やすさ」を支える目に見えない土台となっているのです。
そして、ただきれいに編むだけでなく、そこにどのような色調を混ぜ合わせていくかで、その作品独自の個性や温もりが生まれます。少し温かみのあるオレンジ色の光を混ぜるのか、それとも澄み渡るような青い糸を重ねるのか。使う色の調和によって、言葉で説明しなくても、作り手の想いやその場所の空気感がじんわりと相手に伝わっていきます。
派手な飾りをつけることだけが、映像の良さではありません。むしろ、一見すると誰も気づかないような、隅々まで丁寧に行き届いた編み目の積み重ねこそが、長く愛される作品の美しさを決定づけます。
画面の向こう側の人が、出来上がった作品に触れたときに、心にふわっと温かいものが広がるように。そんな優しくて心地よい流れを作りたい。
誰もが動画を作り、発信できる現代だからこそ、手仕事の温かさを大切にしたいと考えています。誰かの体温がそっと宿っているような、どこか愛着のわく表現。それを作り出すためなら、地味で細かな編み込みの作業も、少しも苦になりません。今日もまた、新しい糸を手に取りながら、まだ見ぬ誰かのために静かに指先を動かしています。