マイクとの距離、なんとなく決めていませんか?

マイクとの距離、なんとなく決めていませんか?

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音声・音楽

前回は、オーディオインターフェースのゲイン設定について書きました。今回はその続きとして、マイクとの「距離」の話をしてみようと思います。

歌う位置、なんとなく決めていませんか?

マイクの前に立って、なんとなくいつもの距離で歌う。多くの方はそうしていると思います。でも実は、この距離を少し変えるだけで、録れる音はかなり変わります。


マイクには「指向性」がある

まず前提として、マイクには「指向性」というものがあります。音をどの方向からどれくらい拾うか、という特性のことです。正面からの音をメインに拾うもの、周囲の音も広く拾うものなど、マイクによって性格が違います(
切り替えられる機種もあります)。ボーカル収録で使われることの多いマイクは、基本的に正面(コンデンサーマイクの形状によってどちらが正面か間違いやすいものもありますので、ご自身のものはよく確認して!)からの音を中心に拾うタイプが多いですが、その上で「距離」によっても音の印象は大きく変わってきます。

近づくと起こること

マイクに近づくと、低音域が持ち上がる現象が起こります。これを「近接効果」と呼びます。

近接効果自体は悪いものではありません。声に厚みや温かみを加える効果として、むしろ意図的に使われることもあります。

ただ、近づきすぎると、この低音が過剰になって、こもった印象になってしまいます。息の音や口の中の雑音(リップノイズなど)も、距離が近いほど目立ちやすくなります。

離すと起こること

逆にマイクから離れると、まず単純に音量が下がります。録れた音が小さくなるので、インターフェース側のゲインを上げて補うことになります。

ここで起きるのが、部屋の鳴りや反射音が一緒に拾われやすくなる、ということです。マイクが声から離れるほど、声そのものの音量に対して、部屋の中で反射して返ってくる音の割合が相対的に大きくなっていきます。

これは必ずしも悪いことではありません。プロの現場でも、あえて部屋の響きごと収録する手法はよく使われます。ドラムなどは、部屋の鳴りそのものが音作りの重要な要素になることも多いです。少し離した「オフマイク」的な録り方は、そうした狙いがある場合の選択肢になります。

ただ、今回お話ししているような歌ってみたや個人の楽曲制作で一般的に求められるのは、声がクリアに録れていて、後からミックスで響きを自由にコントロールできる状態です。その場合は、基本的には近めで録っておく方が、扱いやすい素材になります。

この響き、一度入ると後から取れない

歌ってみたのような一般的な制作では、リバーブ(残響感)は録った後のミックス作業で別途付け足す方向で作ります。つまり収録の時点では、できるだけ響きの少ない、ドライな状態で録っておくのが基本です。

理由は単純で、一度マイクに入ってしまった部屋の響きは、後から取り除くことができないからです。

ここが特にやっかいになるのが、複数人で歌って一つの曲にまとめるような企画です。歌い手それぞれの収録環境(部屋の響き方)が違うと、送られてきた音源を並べた瞬間に、残響感の違いがはっきり分かってしまいます。

さらに厄介なのは、録っている本人は自分の部屋の響きに気づきにくい、ということです。(前回書いた「カクテルパーティー効果」が、ここでも起きています。)本人は「ちゃんと録れた」と思って送ってくれるのですが、他の人の音源と並べてみると、明らかに響き方が違う。

こうなってしまうと、ミックスで一つにまとめるのは本当に難しくなります。響きそのものを後から消すことができない以上、一度入ってしまった差は、ある程度残ってしまうからです。(第1回で書いた「複数人企画のMIXは要注意」というのも、この話が大きな原因の一つです。)

一般的な距離の目安

では、どれくらいの距離がいいのか。感覚的な話になりますが、目安としては握りこぶし1〜2個分くらいの距離、というのがよく言われる範囲です。

もちろんマイクの種類や歌い方、声の大きさによっても最適な距離は変わってくるので、これが絶対の正解というわけではありません。ただ、まず試してみる基準としては、このくらいの距離感を覚えておくと扱いやすいと思います。

ポップガードも一緒に

距離の話とあわせて、ポップガードについても触れておきます。

ポップガードは、マイクの前に取り付ける丸いフィルターのようなもので、「パ」行や「バ」行など、息が強く当たる発音をしたときに出る「ボッ」というノイズ(ポップノイズ)を防ぐためのものです。

近めで録ると、どうしてもこの息の影響を受けやすくなります。特別な機材ではないので、ストッキングを輪に張ったもので簡易的に作ることもできますが、一つ用意しておくと録音のクオリティが安定しやすくなります。



次回は、部屋の反射音・吸音の話を

今回は、マイクと声の距離について書きました。

ここで少し出てきた「部屋の反射音」について、もう少し深く掘ってみようと思います。同じ部屋、同じマイクでも、部屋の環境次第で録れる音はかなり変わってきます。次回はその辺りを書いてみようと思います。

このあたりの具体的な数値設定や、実際の環境に合わせた調整は、普段レッスンでも扱っています。作編曲から録音、ミックスまで一貫してお受けしている案件では、必要に応じてディレクションもしていますので、気になることがあれば遠慮なく聞いてください。


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