最近、AIで作成したジュエリーのデザイン画像や仕様書をもとに、CAD制作をご相談いただくことが増えてきました。
AIを使うと、簡単なラフスケッチからでも、かなりきれいなジュエリー画像を作ることができます。
そこで今回は、自分で簡単なデザインを描き、AIを使ってデザイン画を作成し、実際にジュエリーとして製作してみました。
【手描き → 完成品画像】
最初に用意したのは、「こんな風に作ろうかな…」ぐらいの、簡単なメモ書き程度のスケッチです。
葉の部分にはマーキスカットのペリドット、花の中央にはルビーを入れることにしました。
AIとのやり取りでは、石の大きさ、花びらの形、葉と花の角度、石枠の見え方などを何度も修正しています。
最終的に希望に近いデザイン画になったのは、8回ほど修正を繰り返した後でした。
このようなシンプルなデザインでも、花弁の形状や葉っぱのつき方など、思ったようにAIに作成してもらうのには時間がかかってしまいました。
それでもこんなにきれいに描けるのですから、ここまでは、AIはとても便利です。
問題は、この先です。
AIに「仕様書」も作ってもらいました。
【AI作成仕様書】よく見ると仕様書の中身は矛盾だらけです。どこがおかしいかわかるでしょうか?
完成したデザイン画像をもとに、今度はAIに製作用の仕様書を作成してもらいました。
一見すると、とてもよくできています。
正面図、上面図、側面図があり、寸法まで入っています。これだけを見ると、このままCAD制作や製造に使えそうに見えます。
ところが、この仕様書には実際にはかなり多くの問題があります。
たとえば、指定していない寸法をAIが推測して記載していたり、正面図と側面図で構造が一致していなかったり、実際には成立しない石枠の構造になっていたりします。
さらに厄介なのは、間違っていても「仕様書らしい見た目」で非常にきれいに描かれていることです。
ここはAI画像を扱ううえで、かなり注意が必要だと思っています。
AIは「製造可能なジュエリーを設計した」のではなく、製造用仕様書らしく見える画像を作ったにすぎない場合があります。
実際のCADでは、構造をもう一度考え直す必要がありました。
【実際のCAD画像4方向】
そこで実際のCAD制作では、AI仕様書をそのまま写すことはしていません。
使用する石の実寸を確認し、石留めの方法、地金の厚み、爪の位置、裏側の構造、チェーンとの接続などを一つずつ考え直して設計しています。
そして今回は、実際にシルバーで鋳造し、石留め・仕上げまで行いました。
完成したものがこちらです。
(実際には2パターン作っていますので、上のCAD画像と下の実物画像には若干相違があります。)
【トルソー着用写真】
最初のスケッチと比べると、かなり雰囲気を残したままジュエリーになりました。
また今回は、石の大きさや構造を変えて2種類制作しています。
AIのデザイン画像は、アイデアを目に見える形にする道具として、とても便利だと思います。
ただし、「きれいなデザイン画像ができた」ことと「その通りに製作できる」ことは別です。
特にAIが作成した仕様書については、書かれている寸法や構造が正しいとは限りません。
AI画像を参考にCAD制作をご依頼いただく場合は、画像を完成した設計図と考えず、「こういうものを作りたい」というイメージ資料としてお持ちいただくのが一番安全です。
実際に作れる構造については、こちらで確認しながらCADにしていきます。