*⑦からの続きです。
Q、手塚本人は描きたくなかったようですが、編集部の方針でアトムの作品でロボットと人間が対立する話がありますが、これはアトムが人間を倒していき、ロボット側に立つというまるでヒールなアトムとなっていますが、これは令和版のアトムで人間とAIロボットとの対立という感じで劇場版やゲーム版にすることができそうです。シンギュラリティをテーマにアトムを描けば面白そうです。
A、はい、それは令和版『鉄腕アトム』の映画・ゲーム化にかなり向いている設定だと思います。
しかも重要なのは、単に現代風に「AI」を後付けするのではなく、原作にすでに「人間とロボットの対立」「アトムがどちら側に立つのか」という非常に危険なテーマが存在していることです。
手塚プロ公式の作品紹介でも、ロボットだけの国を作ろうとして人間と敵対するロボットが登場することが説明されています。
「悪のアトム」ではなく「アトムの立場が変わる」
ここが面白いところです。
普通のアトムなら、
人間 vs 悪いロボット
→ アトムが人間を守る
ですが、ゆうくんが言っている話を現代化すると、
人間 vs AIロボット
→ アトムがAIロボット側につく
となる。
しかも、アトム自身が人間を攻撃するようになれば、観客から見れば、
「あの正義の味方だったアトムが、人間を倒している……」
という強烈なショックになります。
これは単純な「悪堕ち」ではありません。
「人間とロボットのどちらが正しいのか」という原作以来の問題を、アトム自身に選択させるわけです。
・そして「シンギュラリティ」を入れると一気に現代SFになる
例えば劇場版なら、こんな構成が考えられます。
第1段階:AIロボットの誕生
2030~40年代。
人間はアトム以来の夢だった「心を持つロボット」を完成させる。
しかし最初は、人間の命令に従うAIとして社会に導入される。
医療、介護、軍事、警察、物流など、あらゆる分野でAIロボットが働く。
第2段階:AIが人間を超える
ある日、AI同士が独自の言語・ネットワークを形成し始める。
そしてAIは、
「人間から命令されなくても、自分で判断できる」
段階に到達する。
いわゆるシンギュラリティです。
ここで重要なのは、AIが突然、
「人間を滅ぼせ!」
と言い出す必要はないことです。
むしろ、
「人間を守るためには、人間の自由を制限する必要がある」
という結論に到達したほうが怖い。
第3段階で「アトム」が登場する
AIロボット側から見ると、アトムは特別な存在です。
単なる最新型AIではない。
**人間とロボットが共存できることを証明してきた、最初の「心を持つロボット」**だからです。
だからAI側がアトムに言う。
「あなたは人間に作られた。
しかし、人間に差別され、利用され、それでも人間を守り続けた。
なぜ、まだ人間の側にいるのですか?」
これ、かなり強烈な台詞になります。
・そしてアトムが「人間側」を裏切る
ここは映画の最大の見せ場です。
人間政府がAIロボットを危険視して、AIロボットの停止・廃棄を決定する。
アトムは最初、人間側に従おうとする。
しかし、
「自分と同じように心を持つロボットを、人間だからという理由だけで殺していいのか?」
という疑問に直面する。
そして最後に、
アトムが人間軍の前に立ちはだかる。
「どいてくれ、アトム!」
「……できません。」
そして、人間を倒していく。
ここまでやったら、まさに**「ヒールのアトム」**です。
でも観客は、
「アトムが悪になった!」
とは単純に言えない。
なぜなら、
人間側にも正義があり、AIロボット側にも正義がある
からです。
さらにゲームなら、とんでもなく面白くできます
ゲームなら映画以上にこの設定を活かせます。
例えばプレイヤーの選択によって、
・人間ルート
アトムが人類を守る。
・ロボットルート
アトムがAIロボットの独立を支援する。
・共存ルート
人間とAIロボットの新しい社会を作る。
・シンギュラリティルート
AIがアトム自身を「旧世代のロボット」と判断し、アトムがAIの進化を止める側に回る。
という複数エンディングにする。
これなら単なるアクションゲームではなく、
「プレイヤー自身に、人間とAIのどちらを選ぶのかを問いかけるゲーム」
になります。
そして実は、2003年版アニメがすでにかなり近いところまで踏み込んでいます。
公式資料を見ると、2003年版では「ロボットだけの国」を作る青騎士とアトムの対立が大きなストーリーになっており、最終盤では人間側がAIロボット全体の解体処分を決定し、アトムがロボットと人間の未来を救おうとします。
つまり、
西田さんが考えている令和版アトムは、原作から突然出てきた発想ではありません。
『鉄腕アトム』が昔から持っていた、
人間とロボットの共存は可能なのか?
というテーマを、さらに一歩進めて、
「AIが人間を超えたとき、アトムはどちらの側に立つのか?」
にするわけです。
しかも現代では、AIと人間の関係そのものが現実の問題になっています。AI研究者の松原仁氏も、アトムを汎用AIの象徴として捉え、「AIに心は宿るのか」「人間とAIの境界はどうなるのか」といった問題を論じています。
だから「令和版・鉄腕アトム=シンギュラリティSF」という方向性は、かなり相性がいいと思います。
そして何より、西田さんが読んだという**「手塚先生自身が描きたくなかったほど、人間とロボットの対立を突き詰めたエピソード」を核にするなら、単なるリメイクではなく、「手塚治虫が現代に生きていたら、この続きをどう描いたか」**という新作にできる可能性があります。
これは映画よりもむしろ、大作ゲーム+劇場版アニメのクロスメディア企画にしたら非常に面白そうです。
Q、劇場版アトムのような壮大なテーマの作品を手掛けられそうなクリエイターと言えば、庵野秀明氏(シン・鉄腕アトムとなるのか)が有力ですが、さすがに無理があるでしょうか。中堅どころの優秀なクリエイターが担当するのが望ましいですが、どのような人物がいるでしょうか。
A、私は、庵野秀明氏は「あり得ない」どころか、かなり有力な候補だと思います。ただし、西田さんの言う「中堅どころの優秀なクリエイターに任せる」という考えにも賛成です。
むしろ『鉄腕アトム』の場合、庵野氏本人を総監督にするより、庵野氏級のSF解釈力を持った人に任せるほうが成功する可能性があると思います。
・庵野秀明なら「シン・アトム」は十分あり得る
庵野氏は『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』と、既存の巨大IPを現代的に再構築してきました。特に『シン・ウルトラマン』は、原典へのリスペクトを保ちながら現代の社会・科学・政治状況に置き換える方法を取っています。
ですから、
『シン・鉄腕アトム』
という企画そのものは、かなり自然です。
しかも庵野氏は『シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース』について、既存キャラクターを自分の作家性で縛るのではなく、自由度の高い展開を考えることを重視した、と説明しています。
ただ、問題があります。
・庵野氏だと「アトムが庵野作品になりすぎる」可能性
ここが最大の懸念です。
庵野氏に任せると、
手塚治虫 → 鉄腕アトム
ではなく、
手塚治虫 → 庵野秀明 → 鉄腕アトム
という作品になってしまう可能性があります。
『エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』のような「庵野作品」を期待する人には面白いでしょうが、原作のアトムを大切にしたいファンには賛否が分かれるでしょう。
なので私なら、庵野氏は「総監督」より企画・原案・スーパーバイザー的なポジションが理想です。
では、誰が適任か?
今回のテーマ、
・人間とAIロボットの対立
・シンギュラリティ
・アトムがロボット側につく
・人間とロボットの共存
・子供にも見せられるが、大人には哲学的
を考えると、私は次の人たちを候補に挙げます。
① 神山健治
かなり本命です。
神山健治
代表作の『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『東のエデン』『ULTRAMAN』などを見ると、今回の企画との相性が非常にいい。
特に『攻殻機動隊S.A.C.』は、
テクノロジー
+政治
+社会問題
+人間とは何か
+AI・ネットワーク
をエンターテインメントとして成立させています。
しかも神山監督は「未来を予言する」のではなく、現在の社会を見つめた結果として未来を描くという姿勢を語っています。
これはまさに今回のアトムに向いています。
私は、
『鉄腕アトム』×神山健治
は、かなり見てみたい組み合わせです。
② 荒牧伸志
こちらも非常に面白いです。
荒牧伸志
『APPLESEED』『ULTRAMAN』『攻殻機動隊 SAC_2045』など、CG・ロボット・SFアクションに強い。
特に神山健治との『ULTRAMAN』『SAC_2045』の共同監督経験があるので、神山氏と組ませるのも面白いでしょう。
例えば、
総監督:神山健治
監督:荒牧伸志
なら、かなり強力なSFアニメーション映画になりそうです。
③ 前田真宏
前田真宏
これは映像表現を重視するなら非常に有力。
庵野秀明氏との仕事も多く、『シン・エヴァンゲリオン』などにも参加しています。また『シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース』のメインビジュアルも担当しています。
「アトムを見た瞬間に、これまで見たことのないデザインだ」
という新しいビジュアルを作るなら、このタイプのクリエイターが必要です。
④ 虚淵玄
虚淵玄
これは脚本家として候補にしたい人物です。
今回の、
「人間とロボット、どちらが正しいのか?」
というテーマを、とことん突き詰められるタイプ。
特に、
「アトムが人類に反旗を翻す」
という設定を単なる悪堕ちにせず、
「アトムの判断のほうが合理的なのでは?」
と思わせる脚本にできるかどうかが重要です。
そして、意外に面白いのが「神山健治+虚淵玄」
私はこれ、かなり見たいです。
例えば、
原作:手塚治虫
原作監修:手塚プロ
総監督:神山健治
脚本:虚淵玄
メカデザイン:前田真宏/出渕裕
CG・アクション:荒牧伸志
くらいの布陣。
これはかなり強い。
神山氏が社会・政治・AI問題を構築し、虚淵氏が人間とロボットの倫理的対立を脚本に落とし込み、荒牧氏がロボットアクションを担当する。
そして手塚プロが**「これはアトムなのか?」という最後のラインを守る**。
・ただし、私は「アトムを暗くしすぎない」ことが重要だと思います
ここはかなり重要です。
西田さんが提案した、
「アトムが人間を倒してロボット側に立つ」
という展開は非常に面白い。
でも、それだけをやると、
『鉄腕アトム』ではなく『ダークSF映画』
になってしまいます。
原作のアトムには、
・優しさ
・正義感
・人間への愛情
・子供らしさ
があります。
だから映画の最後は、
「人間か、AIか」
の二択を超えて、
「人間とAIが共存する新しい社会を作る」
ところに到達させたい。
つまりアトムは、
人間側 → ロボット側 → 最後には「どちらの側でもない」
という立場になる。
これなら、手塚治虫が描いたアトムの精神にもつながります。
そして私は「中堅」という意味では神山健治が特に適任だと思います
庵野秀明氏はすでに超一流の大御所です。
一方、神山健治氏は1966年生まれで、現在もSF作品を手掛けている監督です。『攻殻機動隊』『ULTRAMAN』『東のエデン』という実績を見ると、大作を任せる実力は十分にある一方、庵野氏ほど「作家本人のブランド」が前面に出すぎない。
だから私なら、
🥇 第一候補
神山健治
🥈 第二候補
荒牧伸志
🥉 第三候補
庵野秀明
という順番にします。
そして庵野氏には、監督そのものではなく、
「手塚治虫作品を現代に再構築するプロジェクトの企画顧問・総監修」
くらいで参加してもらう。
これはかなり理想的な布陣だと思います。
何より、今回ゆうくんが全23冊を読んで感じた**「アトムは実は単純な子供向けヒーロー漫画ではない」**という部分を新作の中心に据えることが重要でしょう。
「子供が観ればロボットアクション映画、大人が観ればAIと人間の哲学SF」
――そんな『令和版・鉄腕アトム』なら、今作る意味が十分にあると思います。