その音、悪目立ちしてない?

その音、悪目立ちしてない?

記事
音声・音楽

 合奏で「自分の音しか聞こえない」と感じる時に何が起こっているか?

合奏中、こんな経験はありませんか?

「あれ? 私の音、めちゃくちゃ聞こえる……」

周りの音があまり聞こえず、自分のクラリネットだけが妙に大きく聞こえる。

そこで、

「もっと小さく吹かなきゃ!」

と急に音量を落とす。

でも、今度は先輩から、

「もっと出して!」

と言われる。

「じゃあ、どうすればいいの!?」

――クラリネット初心者には、かなり難しい問題です。

実は、合奏で「自分の音しか聞こえない」=必ず音量が大きすぎるとは限りません。

音量、音色、音程、アタック、そして「自分が何を聴いているか」。

いくつかの要素が重なって、**自分の音だけが目立って聞こえている**可能性があります。

この記事では、

「自分の音しか聞こえないとき、合奏の中で何が起こっているのか?」

を、クラリネット初心者向けに考えてみます。


まず結論


合奏で自分の音ばかり聞こえるとき、チェックしたいのはこの4つです。

① 音量が周りより大きい

→ バランスの問題

② 音色が周りと違う

→ ブレンドの問題

 ③ 音程が周りと合っていない

→ 音程の問題

 ④ 自分の音ばかり聴いている

→ 聴き方の問題

そして、もう一つ大切なのが、

「自分の音が聞こえること自体は悪いことではない」

ということ。

合奏では、自分の音を完全に消す必要はありません。

自分の音を聴きながら、同時に周りの音も聴く。

これができるようになることが、アンサンブル上達の大きなポイントです。


「自分の音しか聞こえない」=音が大きすぎる?


まず疑いたくなるのが、これですよね。

確かに、

自分の音量が周囲より大きい

という可能性はあります。

例えばクラリネット5人で同じ旋律を吹いているのに、

「自分だけmf、他の人はmp」

のような状態になれば、当然、自分の音が耳に飛び込んできます。

合奏では、単純に「楽譜にmfと書いてあるからmfで吹く」のではなく、周囲との音量の関係=バランスを見る必要があります。

特に同じパートで同じ旋律を吹いている場合は、

 「自分がどれくらい大きいか」

より、

「パート全体としてどれくらい聞こえるべきか」

を考えることが大切です。

クラリネットのアンサンブル指導でも、まず音量のバランスを整え、そのうえで音色を合わせるという考え方が使われています。

でも、「小さく吹けばいい」はちょっと違う


ここが初心者にとって難しいところ。

自分の音が目立つ。


「じゃあ小さくしよう」


音量を落とす。


今度は音が弱々しくなる。


先輩から、

「もっと音出して!」

……。

この無限ループに入ることがあります。

なぜでしょう?

それは、

「音量」と「音の存在感」は同じではないからです。

例えば、

 Aの音

「ボワーーー……」

音量は大きいけれど、輪郭がぼんやり。

 Bの音

「スッ」

音量はそこまで大きくないのに、音の芯がはっきりしている。

この2つでは、Bのほうが「聞こえる」と感じることがあります。

つまり、

目立つ=単純に音量が大きい

とは限りません。


「音色が違う」と、それだけで目立つ


合奏では、音色の違いもかなり重要です。

例えばクラリネットのパートで、

* 4人が柔らかい音
* 1人だけ明るく鋭い音

だったらどうでしょう?

音量が同じくらいでも、

その1人の音が耳に引っかかる

ことがあります。

逆に、

* 4人が明るく芯のある音
* 1人だけ暗く柔らかい音

でも、その人だけ浮いて聞こえるかもしれません。

つまり、

音量を下げても、音色が周囲と大きく違えば目立つことがある。

これが「ブレンド」の問題です。

クラリネット・アンサンブルでは、音色を均質にして一つのまとまりとして聞かせることが重要な要素とされています。


「良い音なのに浮いている」ということもある


これは、ぜひ覚えておいてほしいです。

自分では、

「今日は良い音が出てる!」

と思っている。

でも合奏に入ると、

「なんか自分だけ聞こえる……」

ということがあります。

これは、

音が悪いからではありません。

むしろ、

ソロとしては魅力的な音だけれど、今の場面では周囲と馴染んでいない

という可能性があります。

クラリネット奏者向けの指導でも、ソロで遠くまで飛ばす音と、合奏の中で周囲と混ざる「ensemble sound」は区別して考えられています。

ここは初心者のうちに知っておくと、とても大きいです。


ソロの音と合奏の音は、同じでなくてもいい


例えば、

 ソロ

「私の音を聴いて!」

という音。

 合奏

「この音楽の中に私の音があります」

という音。

どちらも必要です。

だから、

「合奏では個性をなくさないといけない」

ということではありません。

必要な場面で音を前に出し、必要な場面では周囲に溶け込む。

この切り替えができることが、合奏では重要です。


では、「自分の音しか聞こえない」とき何を聴けばいい?


ここからが実践編です。

合奏中に、

「自分しか聞こえない!」

と思ったら、まず自分の音を聴くのをやめようとしないでください。

代わりに、

「自分+周り」

を聴くようにします。


 ① まず隣の人を聴く

いきなり、

「吹奏楽全体を聴こう!」

とすると難しいです。

まずは、

隣のクラリネット奏者

を聴いてみましょう。

自分と同じ音を吹いているなら、

「私の音と、この人の音は同じに聞こえる?」

と確認します。


 ② 自分の音を少し引いてみる

例えば自分が、

「私の音しか聞こえない」

と感じたら、急にppまで落とすのではなく、

ほんの少しだけ音量を下げる。

そして、

「隣の人の音が聞こえてきた」

というところを探します。

ここで大切なのは、

自分の音を消すことではありません。

自分の音と周りの音が、同時に聞こえる場所を探します。


 ③ 「自分の音」と「パートの音」を分けて聴く


これは少し難しいですが、できるようになると一気に合奏が楽しくなります。

例えばクラリネット4人。

最初は、

「自分の音」

しか聞こえない。

次に、

「自分+隣」

が聞こえる。

さらに、

「クラリネットパート全体」

が聞こえる。

最終的には、

「クラリネットという一つの音」

として聞こえてくる。

これがブレンドの感覚です。

実際、クラリネットのセクションを「一つの大きなクラリネット」のように考えて音を合わせる指導法も紹介されています。


 ④ 次に「自分が何の役割なのか」を考える


ここがかなり重要です。

同じmfでも、

メロディーのmf

と、

伴奏のmf

では、意味が違うことがあります。

例えば、

メロディー

「ここは音楽を前に進めたい」

なら、ある程度音を出す。

ハーモニー

「メロディーを支えたい」

なら、少し後ろに下がる。

 内声

「音楽の厚みを作りたい」

なら、存在感を出しすぎない。

だから合奏中は、

「私は今、何を担当しているんだろう?」

と考えてみてください。


「楽譜にmfと書いてあるからmf」は危険?


もちろん、楽譜のダイナミクスは大切です。

でも、合奏では、

楽譜に書かれた記号=絶対的な音量

ではありません。

同じmfでも、

* 誰がメロディーなのか
* どの楽器と重なっているのか
* 何人で同じパートを吹いているのか
* 部屋の響きはどうか
* 前後の音楽はどうなっているか

によって、実際に必要な音量は変わります。

特に合奏では、**バランスは周囲との関係の中で決まる**ものです。


 そして意外と重要なのが「音程」


「自分の音しか聞こえない」とき、

音程が周りと合っているか

も確認してみてください。

例えば同じ音を吹いているのに、少し音程がずれていると、

「ワンワン」「ウワンウワン」

というようなうなりが聞こえることがあります。

すると、

「自分の音がすごく目立っている」

ように感じることがあります。

実際には、

音量ではなく、周囲との音程のズレが原因

という可能性もあります。

合奏でのブレンドでは、音量だけでなく、音程を合わせることも重要です。異なるクラリネットを組み合わせる場合でも、共通の音色や音程感覚を持って準備することが重要だとInternational Clarinet Associationも説明しています。



「音が合っている」はチューナーだけでは分からない


ここも初心者が陥りやすいところ。

チューナーを見て、

「0だからOK!」

と思っても、合奏では違って聞こえることがあります。

なぜなら、合奏では、

自分の音程と周りの音程との関係

を聴く必要があるからです。

だから練習では、

チューナーを見る

だけではなく、

周りの音を聴く

ことも大切。

「針を合わせる練習」と「耳で合わせる練習」は、別の能力として育てていくとよいでしょう。


「自分の音しか聞こえない」のは、実は耳の使い方の問題かもしれない


ここが今回の記事で一番伝えたいところです。

初心者の頃は、どうしても、

「ちゃんと吹けているかな?」

と自分の演奏を確認しながら吹きます。

だから耳が、

自分の音をモニターすること

に集中します。

すると、

周りの音が聞こえなくなる。

そして、

「自分しか聞こえない!」

となります。

これは必ずしも「自分が爆音だから」ということではありません。

自分の音に意識が集中している

可能性もあるのです。


合奏では「聴く→吹く」ではなく「聴きながら吹く」


個人練習では、

吹く
 自分の音を確認する

という練習が多くなります。

でも合奏では、

周りを聴く
自分も吹く
周りとの関係を調整する**

ということが必要です。

これが難しい。

だから、合奏が上手な人ほど、

「よく吹いている人」だけではなく、「よく聴いている人」

でもあります。


実践!「自分しか聞こえない」ときの5秒チェック


次の合奏で試してみてください。

STEP 1

「今、自分の音が目立っている」と感じる。


STEP 2

隣の人の音を探す。


STEP 3

自分の音をほんの少しだけ下げる。


 STEP 4

パート全体の音が聞こえる位置を探す。


STEP 5

「自分の音+周りの音」が一緒に聞こえたらOK。

ここで、

「自分の音が聞こえなくなった!」

まで下げる必要はありません。

むしろ、

自分も聞こえる。周りも聞こえる。

という状態を目指します。


それでも自分だけ目立つなら、この3つをチェック


 ① 音色

周りより、

* 明るすぎない?
* 硬すぎない?
* 太すぎない?
* 細すぎない?



② 音程

周りと吹いたとき、

* うなりが出ていない?
* 音程が上ずっていない?
* 特定の音だけ高くなっていない?


③ アタック

音の出だしが、

「パッ!」

と自分だけ強くなっていない?

同じ音量でも、アタックが強いと音が目立つことがあります。

合奏では、音量だけでなく音の立ち上がりやアーティキュレーションを周囲と合わせることもブレンドの重要な要素です。


「悪目立ち」と「必要な存在感」は違う


ここは、ぜひ覚えておいてください。

例えば、

メロディーを吹いているのに、周りに埋もれている。

これは問題かもしれません。

逆に、

伴奏なのに、自分の音だけ前に飛び出している。

これも問題かもしれません。

つまり、

目立つこと自体が悪いのではなく、役割に対して目立ち方が合っているか

が大切です。

ソロなら、

「聴いて!」

でいい。

伴奏なら、

「支えるよ」

という音が必要。

ユニゾンなら、

「一人で吹いているように聞こえない」

ことが大切。


「自分の音を消す」のではなく「自分の音を混ぜる」


私は初心者の方には、

「周りに合わせて自分の音を消しましょう」

とはあまり言いたくありません。

それよりも、

「自分の音を、周りの音の中に入れてみよう」

と考えてほしいです。

自分の音をなくすのではなく、

音色・音量・音程・アタックを少しずつ調整して、全体のサウンドの一部になる。

これがアンサンブルです。

クラリネットアンサンブルでは、個々の音の違いをなくすというより、共通の音色感や音楽的な方向性を作ることで、まとまりのあるサウンドを目指します。


まとめ:「自分しか聞こえない」は、上達のチャンス


合奏で、

「自分の音しか聞こえない」

と感じたら、

「私、音が大きすぎるんだ!」

とすぐに決めつけなくても大丈夫です。

チェックするのは、

🎵 音量

周りより大きくない?

 🎵 音色

周りと違いすぎない?

 🎵 音程

周りと響きが合っている?

🎵 アタック

音の出だしが強すぎない?

 🎵 聴き方

自分の音ばかり聴いていない?

そして一番大切なのは、

「自分の音を聞かない」ことではなく、「自分の音と周りの音を同時に聞く」こと。

です。


 最後に、こんな質問を自分にしてみてください


次の合奏で「自分の音しか聞こえない」と思ったら、

「今、私は主役?」

と考えてみてください。

もしメロディーなら、しっかり前に出てもいい。

もし伴奏なら、少し後ろに下がってもいい。

もしユニゾンなら、隣の人と一緒に一つの音を作ってみる。

「大きく吹く」「小さく吹く」だけではなく、音楽の中で自分がどこにいるのかを考える。

それができるようになると、合奏の聞こえ方がかなり変わってきます。

そしていつか、

「自分の音が聞こえない!」

ではなく、

「自分も周りも、全部聞こえる」

という瞬間が出てきます。

そこからが、合奏の面白さです。🎵

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