「こんなこと言わなければよかった」
そう思った経験はありませんか。
大切な人と気まずくなったとき。
仕事が思うように進まなかったとき。
先のことを考えすぎてつい弱気な言葉を口にしてしまったとき。
その瞬間には何も決まっていないのに
一度口にした言葉だけが妙に心に残ることがあります。
「あの言葉を言ったことで流れが変わってしまったらどうしよう」
そんなふうに気になってしまう人もいるでしょう。
もちろん言葉ひとつで未来が決まるわけではありません。
けれど人は
自分が何度も口にする言葉から少なからず影響を受けます。
まだ何も決まっていないのに
「きっとうまくいかない」
「もう難しいかもしれない」
と繰り返していると
気持ちまでその方向へ引っぱられてしまうことがあります。
昔から人は言葉と
心の関係をとても大切にしてきました。
その一つとして語られるのが
「避讖(ひしん)」という考え方です。
避讖(ひしん)とは?
「讖(しん)」という字には
これから起こることの兆しや未来についての予言という意味があります。
そこから「避讖」は
好ましくない未来を連想させる言葉を
むやみに口にしないようにする考え方として説明できます。
ただし「避讖」という言葉は
現代の日本語で広く使われている一般的な表現ではありません。
そのため
「昔から日本で広く行われてきた正式な習慣」
と断定するより
気持ちを重くする言葉を必要以上に繰り返さないための考え方
として受け止めるほうが自然でしょう。
避讖で大切なのは
「言ったことがそのまま現実になる」
と考えることではありません。
むしろ
まだ決まっていない未来を自分の言葉で先に決めつけないこと
に意味があります。
人は言葉によってまだ起きていない未来を先に生きてしまう
たとえば大切な人からしばらく連絡が来なかったとします。
起きていることは
「まだ連絡が来ていない」
という事実だけです。
けれど心が揺れているときは
「気持ちが離れたのかな」
「何かあったのかな」
「このまま関係が変わってしまうのかな」
といくつもの想像が浮かびます。
その想像を何度も言葉にしているうちに
まだ何もわからないのにまるで
結果が決まったような気持ちになってしまうことがあります。
人は出来事そのものだけでなく
自分の中で作った物語にも心を動かされます。
だからこそ
「こうなるに違いない」
と決めつける前に
「今はまだわからない」
と一度言葉を置き直す。
それだけでも心に少し余白が生まれます。
避讖を現代的に捉えるなら
これは未来を操作するためのものではなく
自分の心を必要以上に一方向へ追い込まないための知恵
と考えることができます。
日本にもある「言葉を選ぶ」文化
日本には昔から「言霊」という考え方があります。
言葉には特別な力がある
と考え場面に応じて言葉を選ぶ文化です。
たとえば
お祝いの席では縁起を考えて
特定の表現を避けることがあります。
また
「するめ」を「あたりめ」と呼ぶ。
「梨」を「ありの実」と呼ぶ。
「鏡割り」を「鏡開き」と表現する。
こうした言い換えも知られています。
「言葉を変えたから現実が完全に変わる」
という話ではありません。
それでも場に合った言葉を選ぶことで
空気がやわらいだり自分の気持ちが整ったりすることはあります。
人は理屈だけで生きているわけではありません。
たった一言がいつまでも心に残ることがあります。
反対に
「大丈夫」
「よくやった」
「今日はここまででいい」
そんな短い言葉に救われることもあります。
言葉は未来を決めるものではなくても
今の自分の気持ちには深く影響するものなのだと思います。
気をつけたいのは自分に向けている言葉
避讖というと特別な言葉だけを
意識すればよいように感じるかもしれません。
でも日常ではもっと身近な
言葉のほうが自分に影響していることがあります。
「どうせ無理」
「自分には向いていない」
「またうまくいかない」
「きっと相手もそう思っている」
こうした言葉です。
誰かから言われたら気になる言葉でも
自分自身には何度も使ってしまうことがあります。
一度うまくいかなかっただけなのに
「自分はいつもこうだ」
と決めつける。
少し迷っただけなのに
「やっぱり自分には無理だった」
と結論を出す。
でも
「今回は思うように進まなかった」
と
「自分はいつもうまくいかない」
では意味が違います。
前者は出来事。
後者は自分自身について作った物語です。
言葉で人生を大きく変えようとしなくてもいいと思います。
まずは
自分を必要以上に小さくする言葉を減らす。
それだけでも十分です。
今日からできるやさしい言い換え
無理に明るく考える必要はありません。
「全部うまくいく」
と自分に言い聞かせても気持ちがついてこない日はあります。
大切なのは何でも前向きにすることではありません。
事実以上に自分を追い込まない表現へ変えること。
そこから始めてみましょう。
1. 「きっとうまくいかない」を「できる準備をしよう」に変える
大切な予定を前にすると気持ちが落ち着かなくなることがあります。
そんなとき
「きっとうまくいかない」
と先に結論を出す代わりに
「できる準備をしておこう」
「確認できるところだけ見直そう」
と置き換えてみます。
心配を無理に消す必要はありません。
気になる気持ちをそのまま行動へ変えていけばいいのです。
2. 「嫌われたかも」を「今はまだわからない」に変える
返信が遅い。
いつもより反応が薄い。
そんな小さな変化から相手の気持ちをすべて決めたくなることがあります。
でも本当のところはまだわかりません。
そんなときは
「今はまだわからない」
と一度保留にしてみましょう。
これは逃げではなく現時点でわかっていることをそのまま認める言葉です。
何でもすぐに答えを出さなくてもいい。
そう思えるだけで心に少し余裕が生まれます。
3. 「どうせ無理」を「今日できることは何だろう」に変える
先のことを考えすぎるとどんどん話が大きくなります。
一つ気になることがあるだけなのにその先そのまた先まで考えてしまう。
そんなときは
「今日できることは何だろう」
「今確認できることは何だろう」
と時間を小さく区切ってみてください。
先の全部を一度に考えなくてもいいのです。
今日扱えることだけを考える。
それくらいがちょうどいい日もあります。
4. 「こうなる」を「今そう感じている」に変える
これはとても使いやすい言い換えです。
「このまま関係が変わってしまう」
ではなく
「私は今関係が変わってしまいそうで気になっている」
「もう無理だ」
ではなく
「私は今余裕がなくなっている」
というように言い直します。
前者は未来についての決めつけです。
後者は今の自分の状態を見つめる言葉です。
未来はまだわかりません。
けれど
「今自分はこう感じている」
ということなら落ち着いて向き合うことができます。
弱音まで封じる必要はありません
避讖という考え方を知ると
「気になる言葉は口にしないほうがいいのかな」
と思う人もいるかもしれません。
でも弱音まで我慢する必要はありません。
つらいときに
「つらい」
と言うこと。
迷っているときに
「迷っている」
と話すこと。
疲れているときに
「少し休みたい」
と伝えること。
どれも大切な言葉です。
自分の本当の気持ちまで隠してしまったら
かえって苦しくなります。
大切なのは
今の気持ちを話すことと未来を決めつけることを分けること。
「私は今、心細い」
と
「きっと全部うまくいかない」
は違います。
「この関係について迷っている」
と
「もう答えは決まっている」
も違います。
今の気持ちはきちんと言葉にしていい。
ただしその気持ちだけで先のことまで決めなくてもいい。
そんな距離感が自分を守ってくれます。
一人で考え続けるより誰かに話したほうが見えてくることもある
考えごとは一人で抱えていると
同じところを何度も回ってしまうことがあります。
「どうしたらいいんだろう」
「相手はどう思っているんだろう」
「この選択でいいのかな」
答えを探しているはずなのに考えるほどわからなくなる。
そんな経験は珍しくありません。
だから言葉を飲み込むことだけが正解ではありません。
安心して話せる相手に今の気持ちを言葉として渡してみる。
それも大切です。
友人。
家族。
信頼できる相手。
誰かに話している途中で
「私は本当はこれが気になっていたんだ」
と自分でも気づくことがあります。
誰かに答えを決めてもらわなくても
話すだけで自分の考えが整理されることがあります。
答えが見えにくいときは相談先の一つとして占いを使う方法もある
恋愛。
人間関係。
仕事。
これからの選択。
自分だけで考えているとなかなか整理しにくいこともあります。
そんなとき、占いで話を聞いてもらうのも一つの方法です。
占いを
「未来を決めてもらうもの」
と考える必要はありません。
自分は何を気にしているのか。
本当はどうしたいのか。
どこで迷っているのか。
そうした気持ちを言葉にしながら
整理する時間として使うこともできます。
人に話してみることで
「私は答えがほしかったのではなく気持ちを整理したかったんだ」
と気づくこともあります。
先のことを一人で決めつけるよりも今の気持ちを落ち着いて見つめる。
そのためのきっかけとして占いを取り入れるのもよいでしょう。
言葉は未来を決めない。でも今日の心には残る
避讖という言葉を知ったからといって
「これからは気になる言葉を一切使わない」
と考える必要はありません。
人間ですから弱気になる日もあります。
先のことが気になる日もあります。
思うようにいかずため息をつく日もあります。
それでいいのです。
ただ覚えておきたいことがあります。
自分が口にした言葉を
いちばん近くで聞いているのは自分自身です。
「どうせ無理」
と聞かされるのも自分。
「今はまだわからない」
と余白をもらうのも自分。
「今日はここまででいい」
と声をかけてもらうのも自分です。
言葉ですべてを変えることはできません。
けれど
自分を必要以上に追い込まないこと。
まだ決まっていないことを先に決めつけないこと。
今の気持ちに合った言葉へ少しずつ整えていくこと。
それはできます。
避讖とは
未来を怖がって言葉を閉じ込めるためではなく
まだ決まっていないことに心を持っていかれすぎないための知恵。
そんなふうに受け取ってみると
毎日の中で取り入れやすくなるのではないでしょうか。
もし今、恋愛や仕事、人間関係などについて
考えがまとまりにくいと感じているなら
誰かに話してみるのも一つの方法です。
あなたが普段使う言葉が自分を狭めるものではなく
少しだけ心に余白を作る言葉になりますように。